取材の現場 「リストラ助成金」大企業向けに拡充

取材の現場から 連載


雇用環境の変化起きるか パソナ、テンプHDなどに商機

「リストラ助成金」制度が3月から大幅拡充された。社員をリストラした会社に、政府がお金を出すという制度。中小企業向けの制度だったが、大企業にも対象を拡げた。予算も2億円から300億円に増額。安倍内閣が提唱する、「失業なき労働移動の実現」のための措置なのだという。

パソナ(2168) 週足

パソナ(2168) 週足

制度の正式名称は「労働移動支援助成金」、もしくは「再就職支援奨励金」という。企業が社員を解雇し、再就職支援会社に登録すると10万円の助成を受けられる。さらに、リストラした社員の再就職が決まれば、再度助成金が出る。最高で60万円を受け取ることができる。これだけ聞くと、クビ切りでお金をもらえる妙な制度に見えるが、つまりは、リストラ企業を通して再就職支援会社に流れる仕組みだ。

「助成金の上限額60万円は、制度拡充の事前調査を行った際、支援会社の料金がおおむね60万円程度だったことが根拠になっている」(厚生労働省)

再就職支援会社といえば、パソナ(2168)テンプHD(2181)キャリアバンク(4834)ヒューマンHD(2415・JQ)などだが、この政策を推し進めたのは、政府の産業競争力会議で、その議員である竹中平蔵慶大教授がパソナの会長を務めているのは意味深だ。

サラリーマンにとっては迷惑としか言いようがないが、これで企業のリストラが進めば、個別企業の業績にはプラスになる。また、「外国人投資家は、日本の雇用規制が経済成長のネックだとみている。その一角を崩すリストラ助成金は歓迎される」(ファンドマネージャー)ともみられている。

実際、ルネサスエレクトロニクス(6723)は早期退職募集にあたって、「再就職支援サービス利用申請書」を書かせているという。富士電機(6504)江崎グリコ(2206)らは既に、パソナ系の再就職支援会社を利用しているという。また、パナソニック(6752)シャープ(6753)ソニー(6758)では〝追い出し部屋”の存在が取りざたされたが、そうした企業は当然、この助成制度を使うはずだとみられている。

日本はデフレ不況が続いているが、クビ切りはなかなかできない。総務省の労働力調査を見ても整理解雇や勧奨退職の人数は、リーマン・ショック直後は年間80万人に達したが、その後は30万人程度の水準を維持している。リストラ助成金が、この流れを壊し、日本の雇用環境に変化を与えることになるのだろうか。

戻る