【深層】を読む 経済政策の“本気度”問われる ヘッジファンド運用者に疑念

【深層】を読む 連載


個別選別が報われる相場に

年初からの日本株市場は、昨年のアベノミクスに沸いた相場とは、かなり風景が異なる状態が続いている。昨年の日本株市場は、ここ数年間、誰も見たことが無いほどの好パフォーマンスだった。相場上昇のおかげで、塩漬けになっていた持ち株が一気に息を吹き返したのを経験した投資家も少なくなかっただろう。もっとも、そんな良い話が何度も繰り返されるなんて話がうま過ぎる、と予感した投資家も少なくないはずだ。つまり、当初から、今年の日本株市場は、昨年ほどのパフォーマンスはあげられない、と予想していた投資家は少なくなかったと考えている。年初からパッとしない相場が続いていても、それほど深刻な失望感は感じられずに、投資家は、妙な静けさと落ち着きを持って、日々の相場に立ち向かっている感すらある。

市場関係者の間の最近の議論では、アベノミクスは「3本目の矢」、つまり民間投資を喚起する成長戦略の部分に対する不満が多く聞かれるように思う。アベノミクスが始まって1年超が経過したものの、成長戦略で華々しい成果が見えないとの不満が増加しているように感じられる。さらに、あれだけ望んでいた円安にはなっているものの、想定したほどの輸出産業主導による景気回復効果が感じられず、円安による輸入コスト増を受けて貿易赤字が続くことなどについても、「話が違うのではないか」と不満を呼んでいるように感じられる。また、一時は黙り込むと決めていた感のある「アベノミクス否定派」が、ここにきて一気に息を吹き返し、そのネガティブな議論が一般の投資家に警戒感を呼び起こしている面もあるかもしれない。

市場では、昨年のアベノミクス相場を需給面から支えた外国人投資家が、今年になって売り越し基調にあることを気にする向きが多い。そして、それを実証するかのように、アベノミクスに対する疑問や懸念が多く聞こえてくるのも、外国人投資家からだ。今週になって、あるヘッジファンド運用者とメールで話をしたが、彼も最近、日本から聞こえてくるニュースについて、「昨年夏ごろまでの威勢の良い話がきれいに消えてしまった」と嘆いていた。日本人以上にリーダーシップを重視する外国人らしく、「安倍首相は、経済への興味がなくなってしまったのか?ナショナリズムの追及が、やるべきことと考えているのか?」と質問を受けてしまった。つまり、経済政策へ本気で注力していたように感じられた昨年の今ごろと比較すると、最近は靖国神社参拝や集団的自衛権など、外国人投資家にとっては、興味を持てないどころか、警戒感さえ抱かせるような言動が目立つとの指摘だ。外国人投資家にとって、経済政策に積極的に取り組む首相ならば、日本株に投資する意欲も沸いてくるが、話題が明後日の方向に行ってしまうのなら、資金は引かせてもらう、と。日本人投資家ですら、そう感じる面があるのだから、敏感な外国人投資家にとっては、何ら不思議ではないと感じてしまった。

ただ、全体としてパッとしない相場が続いているとしても、新高値を更新してくる銘柄は、必ず存在する。ゴールデンウイークのころには決算発表も始まるし、今回は最高益更新する企業もかなりの数が出てくると思う。経済全体がバブルを謳歌(おうか)するのはまだまだ先の話だとしても、成績が良い企業を個別に評価する動きは、株式市場の原点だし、その原則は変わらないと信じている。誰でも買えば簡単にもうかる相場ではないのは確かだが、それだけに、投資家にとっては、きちんと勉強して果実を得る努力が報われる相場だとも考えている。

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