本間宗究 相場の醍醐味 二種類の教え

本間裕 相場の醍醐味 連載


先日、ある所で、「二種類の母親」の話をうかがった。それは、「水道工事に従事する人々」を見たときの「母と子の対話」のことだった。具体的には、最初の母親は、「ほら見てごらん、あの人たちが、一生懸命に仕事をしてくれるから、私たちは、安心して水を飲めるのだよ。あなたも感謝しなさい」というものだったが、もう1人の母親は、「ほら見てごらん、一所懸命に勉強しないと、あなたも将来は、あんな姿になるのだよ」というものだった。

そして、私自身が、この話を聞いたときに感じたことは、「日本の失われた20年の原因は、この点にあるのではないか?」ということだった。つまり、現在では、多くの母親が、子供に対して、「良い学校を出て、大企業に就職すれば、一生は安泰だ」という「価値観」を植え付けているようだが、このことは、「子供の適性」を考えずに、「大企業に入って、高い給料をもらうこと」が、「人生において、最も素晴らしいことである」という「考え方」のようにも思われたからである。

また、一方で、「水道工事の人々に感謝する母親」は、「職業に貴賤はなく、自分に与えられた仕事は、一所懸命に責任を果たすことが大切だ」という「価値観」を教えてくれているようである。つまり、「仕事の目的」が、「高給」という「お金」なのか、それとも、「毎日の仕事に打ち込み、人々に喜んでもらうこと」なのかの「違い」が、この話から理解できるようだが、本来の「日本人」は、「一灯照隅(いっとうしょうぐう)」という言葉の通りに、「自分の与えられた境遇で、まわりの人々の役に立つ」という「価値観」が、「最も素晴らしいことである」と考えていたようである。

しかし、現在では、「仕事の内容や満足度」よりも、結果として得られる「報酬」だけに、目を奪われがちとなり、結果として、「詐欺事件」までもが横行するような社会が生まれてしまったのである。あるいは、「他人」のことを考えずに、「自分の利益」だけを考える人が増えた結果として、大変「住みにくい社会」に変化したようだが、実は、「1600年前のローマ時代」にも、似たような状況が発生していたのである。

具体的には、多くの人が、「大都市での座業」を望み、また、「パンとサーカス」という言葉のとおりに、「飽食と娯楽」に明け暮れていたのだが、その後に起きたことは、「財政破綻(はたん)」と「大インフレ」でもあったのである。そのために、今後の「日本」についても、たいへん危惧(きぐ)すべき状況だと考えているが、実際には、前述の「二種類の教え」を理解し、「人々の考え方」を変えることが、最も早い解決策とも言えるようである。

国債の入札に関して、いろいろな変化が起き始めているが、これからの注目点は、国債整理基金特別会計の資金繰りだと考えている。

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