【深層】を読む アベノミクスに生じた疑念 「選別重視」問われる局面に

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デフレ脱却は着実に進展

年初からの日本株市場は、調整含みの展開が続いている。最近、国内外の投資家と話をすると間違いなく感じるのが、アベノミクスへの期待感が減価していることだ。周知の通り、アベノミクスは「3本の矢」、つまり、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、そして民間投資を喚起する成長戦略によって構成されている。大胆な金融緩和については、日銀による「異次元緩和」が既に実行されているし、機動的な財政出動については、いろいろと議論がありながらも、補正予算や大胆な公共投資の予算執行で、それなりに実施されている。昨年の日本株市場があれだけの上昇を演じたのも、金融緩和と財政出動という2本の矢の成果だ。

問題は、第3の矢、つまり成長戦略についてだ。当初から、この部分は効果が出てくるのに時間が必要だと考えられていたし、市場も「時間を与えましょう」と余裕を持った態度で眺めていた印象がある。ところが、アベノミクスが始まって1年超が経過する中で、ここまで成長戦略の部分において、特に目立った成果が出てきていないことについて、市場は少しいら立ちを感じ始めているように思える。

特にその声が多く聞かれるようになったのが、外国人投資家からだ。運用担当者とメールなどで会話をしていてもそう感じるし、証券各社のストラテジスト・レポートや、さまざまなメディアで流れてくるニュース記事を見ていてもそう感じる。外国人投資家の大量の買い越しが需給面から昨年の日本株市場を持ち上げたのは、誰も異論がないだろう。その外国人が「アベノミクスって大丈夫か?」と買いの手を緩めるとなれば、需給面だけを考えても、日本株を押し上げる力が相当部分失われてしまうのは、想像に難くない。実際に年初からの相場下落局面では、外国人投資家の売りが目立つようになってきている。一方で、個人投資家がNISA(少額投資非課税制度)の買いを入れているためか、買い越しになっているが、それだけでは支え切れないでいるのが実情だ。

さらに、円安になったことを受けて、これまで円高に苦しんでいた日本経済、特に輸出企業はメリットを受けると考えられていた。Jカーブ効果で当初は貿易黒字が減少するかもしれないが、最終的には貿易黒字を増やすことができて、日本経済の復活、繁栄をもたらすと考えられていた。ところが、輸出は期待されたほど増加しない一方で、資源輸入コストの拡大で貿易赤字は拡大する一方。アベノミクス開始から1年超が経過した現在、「ちょっと話が違う」と市場参加者が感じ始めているのが、相場全体にも影を落としている印象だ。

昨年1年間の日本株市場の上昇パフォーマンスは非常に良かった。ヘッジファンドにしても、日本株のポジションをどれだけ保有していたかが、そのまま年間成績に反映されてしまうぐらいに影響力が大きかった。そのためもあって、多くの市場参加者は、それが繰り返されると考えるよりも、「今年は昨年ほどは上がらないだろう」との考え方が根底にあったと考えられる。そこへきて、アベノミクス第3の矢である成長戦略への疑念が生じ始めているのだから、買いの手が委縮してしまうのは、仕方がないのかもしれない。

しかし、日本経済が長いデフレから抜け出しつつあるのは事実だし、アベノミクスによって、日本経済全体の気持ちが少しずつ明るくなりつつあるのも事実だ。昨年ほどの全面高商状にはならなくても、追い風を上手く受けてスイスイと速度を上げるヨットを見つけるのは可能だ。足元でも電機セクターはいまひとつだけど、自動車は好調だ。投資家として、そういった銘柄やセクターを選ぶ努力が、今年が終わるころには報われていると考えている。

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