取材の現場から マスコミがベア圧力を企業に掛けている

取材の現場から 連載


実態はまだまだ慎重

来年の春闘で各企業は、果たしてベアに踏み切るのだろうか?

連合は12月3日に中央委員会を開き、春闘の「闘争方針」を決定する。方針案によれば、定期昇給2%程度を確保した上で、1-2%以上のベアを求めるという。ベア要求は5年ぶり。

対する経団連はどうか。来年1月に取りまとめる「経営労働政策委員会報告」を待つしかないが、「従業員の総報酬の引き上げ」を明記する方針だと報じられている。ベア実現に向けた流れが着々と構築されているように見える。

ベアを推進しているのは安倍政権だが、その最大の応援団はマスコミなのだ。象徴的だったのは、10月17日に官邸で行われた政労使会議の報道。トヨタ(7203)日立(6501)が「ベアに前向き」と報じた。が、実際にはトヨタの豊田社長のコメントは「労組から依頼がくると思うのでそのとき考えたい」と態度保留。日立の河村会長は「ベアも選択肢の1つ」と踏み込んだが、後に副社長が「現時点で確定的なことは言えない」とトーンダウン修正。

「各社とも、利益が出れば一時金(ボーナス)で従業員に還元するのが原則。安易にベアなどできないというのが本音。が、円安にしてくれた安倍政権の意向に反することは言えず、マスコミ取材での発言の切れ味が悪くなっている」(財界担当記者)。

ローソン(2651) 週足

ローソン(2651) 週足

ベアに前向きな会社もある。ローソン(2651)の新浪CEO(最高経営責任者)は「アベノミクスが成功するように、賃上げで消費意欲を喚起したい」と宣言。ベア分が預金に回らないよう、クーポンでの支払いも検討しているという。同様に威勢がいいのは日本電産(6594)。永守社長は「ボーナスだけでなく、基本給を上げないと従業員はもらった気がしない」と前向き発言。

そのほかはどうか。報道を見ると、京セラ(6971)の山口社長は「前向きに検討したい」、日清食品HD(2897)の中川副社長は「ボーナスではなく、月額の給与水準を上げることで、一般社員のモチベーション向上を図りたい」、オムロン(6645)の鈴木専務も「政府も頑張っているので企業としての責任も踏まえ、検討を深めたい」という。

だが、例えば京セラは「ベアか一時金か決まっていない」とも述べているように、ベアには各社まだまだ慎重。しかし多くの報道は、ベアに前向きな部分を引用し、いかにもベアが既定路線であるかのように報じているわけだ。官邸のベア要求に加え、マスコミ報道が企業にとって目に見えない圧力となっている。

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