深堀健二の兜町法律放談 モリテックス事件

兜町法律放談 連載


今回は、「モリテックス事件」を取り上げたいと思います。最近、ソニーの会社分割に関する株主提案をめぐって、久しぶりにモノ言う株主が話題になっておりますし、前回実は検討したかったと心残りになっておりましたので、2回に分けて、検討したいと思います。

1 事案の概要

東証1部上場企業Y社の大株主であるX社と、Y社経営陣が、それぞれ取締役8名および監査役3名の選任議案を提出し、委任状争奪戦となったところ、会社提案が可決されたため、X社が総会の決議取り消しを求めた事案です。

X社は、株主に対して委任状を送付したところ、委任状の用紙には、

・株主総会に出席し、下記の株主提案の議案につき私の指示(○印で表示)に従って議決権を行使すること。

・ただし、賛否の指示をしていない場合、X社提案に対し修正案が提出された場合(X社から同一議題について議案が提出された場合を含む)、総会運営に対する動議については白紙委任とします。

との趣旨の記載がありました。

これに対してY社は、委任状送付の5日後に会社提案の「取締役8名選任の件」「監査役3名選任の件」と共に、Y社株主提案の「取締役8名選任の件」「監査役3名選任の件」の双方をそれぞれ議題として掲げた議決権行使書面を全株主に送付しました。

また、Y社が議決権行使書面とともに株主に送付した「議決権行使のお願い」と題する書面には、有効に議決権行使をした株主1名につきQuoカード500円分を贈呈する旨が記載されていました。

さらにY社は、議決権行使書を送付した日の3日後、あらためて全株主に対して、「議決権行使書ご返送のお願い」と題するはがきを送付しました。同はがきには、

・今次株主総会は、当社の将来にかかわる重要な総会でございます。

・招集ご通知同封の議決権行使書に賛否をご表示いただき、お早めにご返送いただきたく重ねてお願い申し上げます。

・議決権を行使(委任状による行使を含む)していただいた株主さまには、Quoカードを進呈致します。

との記載がなされるとともに、その下部に「重要」とした上で、

・本年6月開催の株主総会は、当社の将来にかかわる重要な株主総会となります。ぜひとも会社提案にご賛同の上、議決権を行使していただきたくお願い申し上げます。

との記載がなされていました。

株主総会では、会社提案の取締役8名および監査役3名がいずれも過半数の得票を得た一方、株主提案の取締役および監査役はいずれも過半数の得票を得られなかったとして、会社提案が可決承認されました。

ところが、可決された会社提案の決議においては、X社に提出された委任状にかかわる議決権の個数が出席議決権数に含まれておらず、仮に当該議決権の個数を含めて会社提案の候補者8名の得票率を計算すると、2名は過半数の票を得ていない状況でした。

2 X社の主張とY社の反論

X社は、Y社が、(1)会社提案の決議において、委任状にかかわる議決権の個数を出席議決権数に含めなかったこと、(2)議決権行使をした株主に対しQuoカード500円分を贈呈するという違法な利益供与の申し出を手段として議決権行使の勧誘をしたこと、の2点を「違法または著しく不公正」だとして、総会決議の取り消しを求めました。

これに対してY社は、(1)に関して、(ⅰ)委任状には会社提案の賛否記入欄がなく会社提案の候補者に関する資料提供もないため議決権行使の代理権授与が無効である、(ⅱ)会社提案と株主提案は議題が別であり、委任状にいう「X社から同一議題について議案が提出された場合」にあたらず会社提案については議決権行使の委任がない、と主張した上、(2)に関して、総会にできるだけ広く株主の意思を反映させる目的でなされたもので、贈呈の価値も極めてわずかであるから社会通念上相当であり、利益供与にあたらない、と反論しました。

それでは、次回は裁判所の判断を検討したいと思いますが、読者の皆さまならどのようにお考えになるでしょうか。

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