取材の現場から ベア引き上げよりも家計見直し? 生保業界は戦国状態

取材の現場から 連載


安倍政権が企業にベア(賃上げ)を求めていることもあって、来年の春闘の動向が早くも注目されている。連合も10月24日、春闘の基本構想を発表し、ベア実施を求める方針を明らかにした。産別労組も連合の方針に応じ、ベア要求の検討に入った。

ところが、労組の今一番の課題はベアではなく、組合員の生活支援なのだという。

「定年延長で企業は総人件費の引き下げを検討している。そのため、年齢の高い社員の給与水準引き下げを検討している。そうなると、40歳代以上の組合員の生活が厳しくなる。今でも定年直前に『蓄えが1円もない』と労組に相談にくる組合員もいるが、今後、そういうのがさらに増える」(自動車労組幹部)。

そこで労組はファイナンシャルプランナー(FP)などを招いて、家計の見直し講座を行うなどしている。

「大手企業の従業員の家計見直しはやりやすい。というのも、日本生命など国内大手生保は、会社に入り込んで営業してきた。しがらみもあって、必要以上の保険を契約させているケースが多いので、保険を見直すだけで月数万円節約することができる」(FP)。

10年ほど前の話だが、トヨタ(7203)の労組が腕利きのFPを招いたら、保険の見直しを推奨し、多くの組合員が保険を解約した。すると第一生命(8750)の会長が財界ルートを通じて「そのFPを使うな」と要請してきたことがあったという。もし、労組が組織だって組合員の家計見直しに取り組むようになれば、国内大手生保の契約がどんどん削られることになりかねない。

ウェブクルー(8767) 週足

ウェブクルー(8767) 週足

労組に限らず今、保険の見直しに注目が集まっている。「ほけんの窓口」やウェブクルー(8767・東マ)の「保険見直し本舗」といった、複数の保険会社の商品を扱う「乗合代理店」が勢力を伸ばし、大手生保のシェアを侵食している。

「業を煮やした日生は金融庁に要請し、乗合代理店の規制強化を金融審議会で議論させ、法規制を進めようとしている」(担当記者)。

その一方、住友生命はほけんの窓口グループに出資。住友生命自身、乗合代理店の「ほけん百花」を展開しており、ほかの大手生保と一線を画している。生保業界は戦国状態となっているのだ。

この流れは、新興勢力のソニー損保(ソニーフィナンシャルHD・8729)やオリックス生命(オリックス・8591)といった保険会社のシェアアップには追い風だ。

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