深堀健二の兜町法律放談 株主優待制度 2

兜町法律放談 連載


さて、本日は株主優待制度の第2回目ということで、「株主平等原則」「利益供与」に関連する裁判例をご紹介したいと思います。

1 土佐電気鉄道事件

最初にご紹介するのは、高知県の電鉄会社が発行した株主優待乗車券が違法であると裁判所で判断された事例です。

これは、電鉄会社が取締役会決議に基づき、持ち株数1,000株につき株主優待乗車券1冊(1,500円相当)を年1回交付していたところ、株主が、株主優待乗車券の交付は利益配当(現物配当)に該当するところ、会社には配当利益がなく、株主総会の決議を経ていないから違法であるとして、平成元年に株主代表訴訟を提起した事案です。

裁判所は、株主優待乗車券は、会社が株主たる地位にある者に対し、株主たる地位に対し、その持ち株数に応じて交付されるもので金銭的価値があるから、配当金の支払いに代えて現物を配当するものであると認め、その交付について株主総会の決議を経ていない点、および配当可能利益がないのに配当している点で違法である、と認定しました。

ここまでの認定で終わってしまい、取締役の責任が認められてしまうと、少々現実離れした感がありますが、裁判所は、これに続いて、株主自身が株主優待乗車券制度を望んでいること、長年の無配の状況で株主の恩典となっていること、制度を廃止した場合に株価下落などで会社、株主に損害が生じること、会社の公共的使命、さほど高額でないことを総合的に判断し、究極的には会社ないし株主の利益に合致するとして、取締役の責任を認めませんでした。

2 国際航業買収防衛事件

次にご紹介するのは、会社乗っ取りグループから株式を買い戻すための工作を依頼し、金員を交付した行為が利益供与に該当するとされた事例です。

これは、バブル期に仕手グループとして名をはせた小谷グループによる乗っ取りに対抗し、会社の経理部長らが小谷側から株式を買い取るための裏工作を行うために、工作実行者に対して簿外で金員を交付した行為が、株主の権利行使に関する利益供与に該当するとして、株主が会社に対してその返還を求め、提訴した事案です。

裁判所は、当時、社長を中心とする経営陣が、小谷側株主の株主総会による議決権行使により経営権を奪われることを恐れ、さまざまな会社乗っ取り防止策を講じ、その一環として、経理部長らが工作実行者に対して、小谷側からの株式買取工作を依頼し、その経費および報酬として、社長の承諾に基づき11億5000万円を交付したことが、「利益供与」に該当すると認定しました。

この事件では、反対派株主に株式を譲渡させる意図・目的で利益を供与した場合、「株主の権利の行使に関して」金員を供与したと言えるかが問題となりました。

確かに、株式の譲渡は、株主たる地位の移転にすぎず、それ自体が「株主の権利の行使」に関するものとは言いにくいです。

裁判所も、その点については苦しいことを前提に、「株式の譲渡それ自体は、『株主ノ権利ノ行使』とは言えないから、会社が株式譲渡の対価もしくは株式譲渡を断念する対価として利益を供与する行為または株式の譲渡などについて工作を行う者に利益を供与する行為は、直ちに株主の権利行使に関する利益の供与行為に当たるものではない。

しかし、右のような利益供与行為であっても、その意図・目的が、経営陣に敵対的な株主に対し株主総会において議決権の行使をさせないことにある場合には、権利行使を止めさせる究極的手段として行われたものであるから、『株主ノ権利ノ行使ニ関シ』利益供与を行ったものということができる」と、「究極」などという、当時流行していた言葉を用いて上手く説明しました。

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