特報 ライツオファリングに新潮流 ADワークスが国内2例目のコミットメント型

特報 連載


新しい流れを形成するか

ADワークス(3250・JQ) 週足

ADワークス(3250・JQ) 週足

過去にライツオファリングを実施した実績があるADワークス(3250・JQ)フォンツホールディングス(3350・JQ)が相次いで2度目のライツオファリング実施を公表した。

まずは10月9日に実施を公表したフォンツ。今年4月に1回目を実施しているが、このときは最大調達目標6億9300万円に対し、権利行使率が98%と、調達目標額が少なかったこともあるかもしれないが、権利行使率は100%に近い水準だったので、上々の結果だったと言える。

今回は最大調達目標が22億円。前回の3倍の金額で、しかも純資産の10倍、総資産の2倍以上の資金調達になるので、この会社としてはかなり大規模なものになる。

この会社、もともとはインディーズの音楽CDの卸売り会社で、ゴールデンボンバーもこの会社が育てて世に送り出したようなものなのだが、音楽CDの卸売りだけで企業としての成長を維持することはもちろん、業績を安定させることも厳しい。そこでさまざまな事業への進出と撤退を繰り返しているのだが、今年6月にシンガポールの中堅ホテルグループに筆頭株主が交代。筆頭株主との提携事業の一環でホテル事業に進出している。

このため、調達予定の手取り金21億円のうち、11億5,000万円は浅草に開業予定のホテルへの投資で、残る9億5,000万円も政令指定都市に今後建設予定のホテルへの投資だという。

ライツオファリングにはコミットメント型とノンコミットメント型があり、日本ではノンコミットメント型が一般的で、コミットメント型はまだ1例しかない。

ライツオファリングの場合、新株予約権は基準日時点の株主に割り当てられるが、権利行使したい株主は権利行使をし、権利行使しない株主は、新株予約権が上場されるので、割り当てられた新株予約権を上場市場で売却することができる。

従って、基準日時点の株主ではなくても、市場で新株予約権を購入して権利行使をすることも可能なのだが、ノンコミットメント型の場合は、権利行使期間中に権利行使されなかった新株予約権はすべて失権してしまう。このため、調達できる金額が権利行使期間終了時点まで確定しないというデメリットがある。

これに対しコミットメント型は、権利行使期間中に権利行使されずに残った新株予約権を、あらかじめ引き受け契約を締結していた証券会社などがすべて引き取って権利行使をする。

このため、失権がなく、発行体企業にとっては最初から調達金額が確定できるメリットがあり、欧州で普及しているライツオファリングもこのコミットメント型なのだが、日本では野村証券の引き受けがついたIRジャパンの1例しかなかった。

証券会社としては抱え込む株式をさばききる自信がなければ引き受けはできないわけで、そもそもライツオファリングの実施例が少ないだけでなく、ライツオファリングを実施する企業が瀕死(ひんし)の状態であったり、経営状態に不安がある会社が少なくなかったという事情もあったのだろう。

フォンツの2回目もノンコミットメント型なのだが、10月16日に実施を公表したADワークスは、今回はノンコミットメント型ではなくコミットメント型。国内では2例目となる。引き受けは三菱UFJモルガンスタンレー証券。

権利行使価格は20円と、ライツオファリング公表日終値の約3割。71%ものディスカウントである。このくらいディスカウントしないと引き受けがつかなかったということなのだろうが、通常、権利行使価格に引きずられて公表後に下落する普通株の株価が、ADワークスの場合はほとんど変わっていない。

ちなみにこの会社、今年9月に100分割を実施しているので、実質的な株価水準は1回目の実施当時とほとんど変わっていない。

引き受け条件をIRジャパン(6051)のときと比較してみると、IRジャパンのときの引き受けは野村証券で、権利行使されずに残った新株予約権は、いったんすべて会社が買い取り、それを野村に売却する形になっているのだが、株主からの会社の買い取り価格は買い取り日前日の加重平均株価から権利行使価格を差し引いた金額の1割の7掛け。加重平均株価と権利行使価格の差額が新株予約権の理論価格になり、このときは普通株1株に対する新株予約権は10個だったので、10で割り、その7掛けという計算だった。会社はそれを9掛けの値段で野村に売却しているので、若干サヤが抜けている。

今回は普通株1株に対し新株予約権1個。株主からの会社の買い取り価格は新株予約権の理論価格を1で割り、その結果の5掛け。三菱UFJモルガンスタンレーへの転売価格も同額なので、会社側のサヤはゼロだ。

何となくこのところ“がけっぷち”企業の利用が続いていたので、引き受けがつく今回の案件で高い権利行使率が実現すると、悪い流れが多少なりとも変えられるかもしれない。

ちなみにフォンツの基準日は10月21日。新株予約権の上場期間は10月22日から12月13日で、権利行使期間は11月28日から12月20日まで。

ADワークスの新株予約権の基準日は10月25日で、上場期間は10月28日から12月6日。一般株主の権利行使期間は12月2日から13日まで。その後権利行使がされなかった未行使分の買い取りが12月18日にあり、引き受け証券会社により権利行使は12月20日までに終了する予定だ。

過去のライツアファリング結果
行使価格 株価 ディスカウント率 総資産 純資産 調達額 権利行使率
最大 結果
タカラレーベン 300 559 46.3% 58,068 8,236 4,967 4,753 95.7%
エーディーワークス 4,000 7,362 45.7% 7,111 2,224 539 500 92.8%
クレアホールディングス 45 80 43.8% 795 532 737 601 81.5%
IRジャパン 6,000 16,200 63.0% 2,087 1,505 1,012 994 98.3%
フォンツホールディングス 25 407 93.9% 948 240 693 681 98.3%
日本エスコン 100 425 76.5% 44,369 4,626 3,518 3,455 98.2%
Jトラスト 1,800 3,550 49.3% 218,706 70,895 113,069 97,682 86.0%
メガネスーパー 75 129 41.9% 11,769 -1,418 1,358 905 66.7%
シスウェーブホールディングス 2,500 6,702 62.7% 1,371 662 1,776 1,663 93.6%
ガイアックス 600 1,996 69.9% 1,674 379 1,490 1,259 82.1%
レカム 1,200 2,500 52.0% 1,244 -20 267
T&Cホールディングス 13,000 20,242 35.8% 607 -587 336
フォンツホールディングス 40 76 47.4% 987 215 2,200
エーディーワークス 20 69 71.0% 8,377 2,813 2,217

※金額は行使価格と株価が単位円、総資産、純資産、調達額が単位百万円。総資産、純資産はライツオファリング実施公表時点で公表済みの直近四半期末時点。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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