取材の現場から 安倍首相の原発セールスとリスク メーカーの製造責任に注意

セクター 取材の現場から 連載


三菱重工業(7011) 週足

三菱重工業(7011) 週足

国会が始まった。野党は、福島原発の汚染水問題ぐらいしか攻撃のすべがないようだ。与党やマスコミは、五輪招致で安倍首相が「アンダーコントロール」(コントロールできている)と演説したことを繰り返し批判するのだろう。

そんな状況だから、国内で原発を新設することは当面はあり得ない。三菱重工(7011)東芝(6502)日立(6501)など原発メーカーは海外展開を進めるしかない。そこで力強いのが安倍首相の存在。首相就任直後の1月にベトナムに行き、東芝など日本企業が受注済みの原発輸出の継続を確認。4月にはトルコとアラブ首長国連邦との原子力協定を進め、トルコでは三菱重工・仏アレバ連合の受注を後押し。5月には来日したインドのシン首相と会談し、原子力協定の協議再開を確認。6月には北欧4カ国の首脳らに原発をセールス。ブラジルとも原子力協定の交渉を加速することで合意。参院選後の8月には、岸田外相をハンガリーに送り、原発営業を指示した。

関係業界は首相の動きを「ありがたい」とコメントしているが、本音はちょっと違う。原発メーカーは、次のような不安感を示している。

「安倍首相はセールスに力が入り過ぎ、賠償リスク負担の問題がおろそかになっている。原子力協定では、トラブルがあった場合の原発運営側とメーカーの負担割合を決める。安倍首相はそれに触れないので、どれだけメーカーが責任を負わされるか分からない。今の状態では、危なっかしくてビジネスは進められない」

日本の原子力賠償法は、電力会社が100%責任を負うが、通常はメーカーにも製造者責任が課せられる。インドでは賠償責任をメーカーに負わせる国内法を制定し、昨年にはインド南部で原発計画を進めているロシアと関係が悪化。ロシア側が「約束が違う」と主張している。

さらに原発メーカーが懸念を強めているのが、カリフォルニア州のサンオノフレ原発の問題。トラブルで廃炉が決まったが、原発を運営する南カリフォルニア・エジソン社(SCE)は、三菱重工の蒸気発生器がトラブルの原因だと主張。三菱重工に全額賠償を求めるという。三菱はSCEと、138億円という賠償上限を契約で定めているにもかかわらずである。

9月23日には、米原子力規制委員会が三菱の設計手法に問題があると指摘。米政府はSCEサイドに立った。原発受注ばかりに目を向け、リスクを軽視していると、相手国から手痛いしっぺ返しをいつ食らうか分からない。原発輸出もアンダーコントロールになっていない。

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