深堀健二の兜町法律放談 株主優待制度

兜町法律放談 連載


最近、株主優待券で生活している男性のことがメディアで取り上げられているようですね。食事やスポーツクラブ、映画館、移動用の自転車など、生活に必要な資源をできるだけ株主優待券で賄おうと奔走する姿が面白おかしく取り上げられています。

今では株主優待制度は多くの企業が導入していますが、私が銀行を辞めて法律の勉強を始めた際、株主優待制度が(1)株主平等原則に反するのではないか、(2)利益供与にあたるのではないかという点で適法性に疑義があることを知り、とても驚いたことを覚えています。

そこで今回は、株主優待制度についての法律界の議論をご紹介し、次回では「株主平等原則」「利益供与」に関連する実際に起こった裁判例をご紹介したいと思います。

1 株主平等原則に反しないか

「株主平等原則」とは「株式会社の株主は、株主としての資格に基づく法律関係においては、その内容および持ち株数に応じて平等に扱われなければならないとする原則」と定義されています。

すなわち、同一種類の株式相互間においては、株主はその権利などに関し「持ち株数に応じて比例平等的」に取り扱われねばなりません。

例えば株主優待制度が、「持ち株数1株当たり○円キャッシュバック」といった、持ち株数に完全に比例した内容であればよいのですが、多くの株主優待制度は、「持ち株数○株以上は○枚、○株以上○株未満は○枚」と、持ち株数に完全には比例しない形で株主に対して経済的利益が提供される上、一定株式数を有しない株主に対しては、経済的利益が一切提供されません。

そのため「比例平等的」取り扱いを求める株主平等原則に反しないかが問題となるのです。

この問題について、古いものですが「株主優待制度無効説」という学説が存在しています。たしかに、株主平等原則における「比例平等」を純粋に突き詰めれば、持ち株数に応じて「完全な比例平等」でない限り、株主平等原則に抵触したと考えざるを得ませんが、現実的ではありません。

結局、学者も株主優待制度がなぜ「比例平等」に抵触しないのか、明確には説明できず、現在では「個人株主の増加あるいは自社事業への理解促進といった正当な目的のために実施され、交付基準の内容が合理的範囲内であれば株主平等原則には反しない」と、分かったような分からないような解釈がなされています。

ですから、現在では、支配株主だけを特別に優遇する制度、例えば要件を満たす株主が1人しかいない「○万株以上の株主」のみに対して巨額の経済的利益が提供されるような内容でない限り、株主優待制度が株主平等原則に反することはないと理解されています。

2 利益供与にあたらないか

次に問題となるのが、「何人に対しても、株主の権利行使に関し、会社または子会社の計算において財産上の利益を供与してはならない」という、会社法の利益供与禁止規定に抵触しないかどうかです。

この規定は、旧商法の昭和56年改正で総会屋の根絶を企図して設立されたものですが、株主優待制度を充実させることで、総会における会社提案への信任票を増やす効果があり得ることからすると、株主優待制度が「株主の権利行使」に関する「財産上の利益の供与」に該当する余地があることは明白です。

この点についても現在では「一般に社会通念から見て許容される範囲内のものであれば禁止されない」と、やはり分かったような分からないような解釈がなされており、取締役が自分の再任への賛同を依頼し、あるいは、取締役にとっては望ましくない第三者に株式を譲渡しないように依頼する趣旨で株主に何らかの経済的利益を提供するような場合でもない限り、株主優待制度が利益供与にあたることはないと理解されています。

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