特報 日東工業がサンテレホン買収 勝者無きMBO?

特報 連載


日東工業(6651) 日足1年

日東工業(6651) 日足1年

2007年5月にMBO(経営陣による買収)で上場廃止になったサンテレホンが、来年1月21日付で日東工業(6651)に買収されることになった。

会社法施行から間もない06年10月にサンテレホンは非公開化に向けたアクションを起こしているのだが、いきさつは優良キャッシュリッチ企業の非公開化とはかなり異なる。

06年当時、サンテレホンは05年12月末時点の株主数が1873名となり、東証1部から2部への指定替えの猶予期間銘柄に指定される中、発行済みの31%を保有していた大株主の海外ファンド・ダルトンから非公化を実施するようプレッシャーをかけられていた。株主数を増やす手だてが付かないなら上場を廃止せよという要求である。ただ、ダルトンが保有している株を、ダルトン自身が「プレミアムを乗せて買え」と言っているも同然なわけだから、グリーンメラーと紙一重と言えなくもない。

結局サンテレホンがたどり着いた手段は2段構えのMBOである。まず06年10月19日から11月8日にかけて、会社側合意の上でダルトンがTOB(株式公開買い付け)を実施。上限はTOB後でダルトンの保有が40・37%になる株数である。このときのTOB単価が1100円。応募は目標を若干下回り、TOB後のダルトンの保有割合は39・61%。

次に06年12月21日から翌07年2月14日までの期間で、今度は日本産業パートナーズとベインキャピタルの折半出資ファンド・JIP-1が上限を設けずにTOBを実施。ダルトンも応募して、JIP-1がTOB終了時点で96・92%を保有、キャッシュアウトを実施した。この2度目のTOB価格が1120円。ダルトンは一株あたり20円のサヤを抜ける形がとられたことになる。

日本産業パートナーズとベインは折半出資でJBP-1なるファンドを設立。実際にサンテレホンのTOB実施のためのSPCとしては、JBP-1とは別にJBP-1の100%子会社の形でJIP-1という会社を設立している。

サンテレホンの買収に要した総額338億円の資金は、JIP-1がみずほコーポレート銀行からのローンと親会社JBP-1からの出資で賄っている。公開買付届出書上の記載では、みずほコーポレート銀行からのローンが300億円、JBP-1からの出資が85億円となっているが、後年のサンテレホンのバランスシートを見る限り、出資は85億円のほぼ倍にあたる174億円になった可能性がある。

少数株主の追い出し後、サンテレホンとJIP―1を合併させ、みずほコーポレート銀行からの借入をサンテレホンにつけ回したことはほぼ間違いがなく、この点ではLBO型のキャッシュアウトの常道と言っていい。

今回日東工業が買うのは、サンテレホン株式を100%保有するJBP-1。買収金額は85億円。実際にJBP-1がJIP-1を通じてサンテレホンに入れた出資が85億円なのか、倍の174億円なのかは不明だが、いずれにしてもファンドにとっては利益が出ないディールだった可能性もある。

ちなみに現在のJBP-1の株主構成は日本産業パートナーズ系のファンドが39%、ベインキャピタル系のファンドが42・5%、MBO実施当時サンテレホンの代表を務めていた山西啓司氏が4・8%、残る10%がダルトン系のファンド。ダルトンは撤収していなかったらしい。今回日東工業がJBP―1株式を取得する相手は言うまでもなくこの面々である。

上場廃止後の公開情報は単体決算のみで、連結の数字は日東工業のリリース記載の数字に頼らざるを得ないため、連結、単体がごちゃまぜになってしまうが、とりあえず非公開化前後の業績推移をまとめてみた。

もともと巨額の現預金や有価証券などの金融資産がある会社ではなかったので、TOB資金をツケ回された揚げ句に巨額の資産を買収者に持ち去られている、という形跡はない。07年12月期に利益剰余金が突然大きなマイナスになっているのは、JIP-1との合併で262億円もの自己株償却を実施したからで、この会社の本業で赤字が出たからではない。09年12月期の営業赤字もリーマン・ショックの影響だろう。

年商が非公開化前に比べると半減しているのは、上場当時は手掛けていた自動車のリース事業を10年夏にオリックスに譲渡したための大幅な減収であることは間違いない。オリックスには282億円で事業譲渡を行った様だが、多額の譲渡益が出ている形跡はなく、むしろ4億円強の譲渡損が発生した可能性がある。

上場当時はリース事業も相応の利益貢献を果たしていたが、情報通信事業に専念特化するための譲渡だというのがサンテレホンの見解の様だ。

いずれにしても、買収者が巨額の資産を持ち去った形跡も、エグジットで多額の利益を得た形跡もとりあえずはない。簡単に収奪可能な資産がない会社のキャッシュアウトは、買収者にとっておいしくないディールということなのだろう。

サンテレホンの業績・財務推移
2005/12 07/12 08/12 09/12 10/12 11/12
売上高 50,949 45,415 41,371 33,881 30,119 21,569
営業利益 2,404 520 605 ▲ 1,236 878 756
営業利益率 4.72% 1.14% 1.46% -3.65% 2.92% 3.51%
純益 1,234 ▲ 253 732 ▲ 2,927 273 721
総資産 86,364 68,931 72,542 53,486 15,769 11,882
営業資産 59,041 43,992 41,574 未詳 未詳 未詳
金融資産 11,145 9,683 14,216 未詳 未詳 未詳
純資産 37,100 6,036 6,507 4,780 5,019 5,139
資本金等 19,435 17,433 17,433 17,433 4,069 3,369
利益剰余金 16,705 ▲ 11,214 ▲ 10,481 未詳 未詳 未詳
有利子負債 34,881 32,987 56,283 未詳 未詳 未詳
自己資本比率 42.96% 8.76% 8.97% 8.94% 31.83% 43.25%
ROE 3.33% -4.19% 11.25% -61.23% 5.44% 14.03%
ROA 1.43% -0.37% 1.01% -5.47% 1.73% 6.07%

※金額はすべて百万円単位、07年12月期、08年12月期のみ単体、それ以外は連結

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