【深層】を読む 日経平均入替が注目される背景

【深層】を読む 連載


日本経済新聞社に残るトラウマ 見なし額面でインパクトに差

日経平均 月足

日経平均 月足

市場関係者の間では、日経平均の定期銘柄入れ替えが話題になっている。例年、日経平均は構成銘柄の市場代表性を保つ目的で構成銘柄の入れ替えを実施している。これは会社統合などに伴う臨時入れ替えとは違って、9月初旬に発表され10月始めに入れ替えが実施される。なぜ今年の銘柄入れ替えが市場関係者の注目を集めているかといえば、東証と大証の現物市場が今年7月16日に統合されたことが原因だ。日経平均の算出ルールによると、日経平均に採用されるには、そもそも「東京証券取引所第一部に上場する銘柄」である必要がある。さらに、「高流動性銘柄」という基準もあり、いわゆるかつての「大証銘柄」であれば、東証に上場はしていても、東証における出来高・売買代金などが低くて採用には至らなかった。ところが東証と大証の現物市場が統合されたことで、取引所別の流動性を考慮する必要がなくなり、かつての「大証銘柄」であっても、東証銘柄として平等に数字を競うことができるようになったのだ。

市場関係者が大幅な銘柄入替えの可能性についてざわつくのには、原因がある。それが伝説ともいえる2000年に実施された「日経平均30銘柄入替え」と、それに伴う株価下落という「惨事」があった。当時、日経平均は経済の変化についていけていない指数、という批判をたびたび浴びるようになっていた。それは銘柄入替えのペースが鈍く、旧来型の重厚長大産業が多くを占める一方で、当時の新興産業であったIT革命は取り残された格好になっていたのだ。そこで、日本経済新聞社は学識経験者などの意見を取り入れて新選定基準を策定、一気に30銘柄を入替える決断をしたのだ。当時入替えられた30銘柄は、今でも「日経平均プロフィル」のHPに掲載されている。いかに低位株中心に削除され、値がさ株中心に新規採用されたかがご覧いただけると思う。

当時、この30銘柄入れ替えを打ち出した日本経済新聞社にとっては、学識経験者が理論的にバックアップする体制はあったのかもしれないが、悲しいかな、市場で実務を取り仕切る関係者からの「落とし穴」の指摘が全く届かなかったのだろう。銘柄入れ替えの実務を考えればわかるが、重厚長大の低位株を削除によって売却しても、新しく採用される値がさ株には金額が不足する事態が、あちこちで発生したのだ。つまり、100万円分を売却しても、新規採用で250万円必要ならば、差額の150万円をどこかで調達してくる必要が発生する。つまり、ほかの銘柄を薄くスライスして売却し、その差額を調達するしかないのだ。この売り圧力は、積もり重なって巨大な金額となり、マーケットに大きな売り圧力を掛ける羽目となった。しかも、ファンダメンタルズに一切関係ない「指数の銘柄入れ替え」という、いわば事務的オペレーションによって、日経平均は急落する羽目に陥ってしまった。

当然、日本経済新聞社には大きなトラウマが残されたと市場関係者は見ている。決して自らの責任とは認めなかったものの、その後、日経平均の銘柄入れ替えに関しては、「みなし額面の換算」という姑息(こそく)な計算方法が多様され、銘柄入れ替えによって指数そのものが急落するような事態は最大限回避しよう、とする姿勢がうかがえた。その一方で、値がさ株の影響がいつまでも薄まらずに残り続け、それが現状のファーストリテイリング、ソフトバンク、ファナックなどの値がさ株の値動きに指数全体が左右されてしまう、という弊害を抱えている。

今回の定期銘柄入替えでは、大証が東証に統合されたことで、例えば任天堂などのいわゆる値がさの「大証銘柄」が日経平均に採用される可能性がある。ただし、値がさ株については、見なし額面が50円か500円かで大きくインパクトが異なってしまうため、市場関係者の期待通りに物事が進むかどうかはわからない。また、日経平均には業種別のバランスを考慮する考え方もあり、その観点からは、金融からの採用の可能性も考えられる。いずれにしろ、市場関係者はこの日経平均の定期銘柄入れ替えを今週末あたりに想定しており、注目しておきたい。

「日経平均プロフィル」
http://indexes.nikkei.co.jp/nkave
「日経平均株価の選定基準改定と銘柄入れ替えについて(2000年4月15日発表)」
http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/news/20000415J_1.pdf
「新規採用30銘柄、除外30銘柄」
http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/news/20000415J_3.pdf

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