特報 栄電子の業績予想修正 創業者の退職金支払いが影響

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栄電子(7567) 週足

栄電子(7567) 週足

お盆ど真ん中で市場が閑散としていた8月15日の取引終了直後、電子部品商社の栄電子(7567・JQ)が、大幅な業績予想修正を公表した。8月9日に第1四半期の短信を公表してから1週間も経っていない。

通期の営業利益を3,400万円引き上げて2億1,400万円とする一方で、当期純利益は1億円から500万円へと引き下げた。500万円では、ほんのちょっと在庫評価がぶれただけで赤字になりかねない。しかもその原因は、創業者への巨額の退職金支払いが決まったから、というのである。

栄電子の創業者である染谷英雄氏は、1968年に前身である有限会社を設立、株式会社に改組したのが3年後の71年。株式の店頭公開は97年10月で、99年に社長を退いて代表取締役(代取)会長になっている。

染谷氏の動静が目まぐるしく変わり始めるのは2007年から。4月に社長兼務となり、翌年の08年の総会で社長を退いて再び代取会長のみに。ところが7カ月後の09年1月に代取社長に復帰し、翌10年6月の総会では取締役を退任して相談役に。だが、11年3月にはまたもや代取会長に復帰し、そして今年5月、会長職のみならず取締役も退いて相談役になった。

今回染谷氏に支払われる予定の退職金は実に11億6,000万円。このうち9億1,400万円は引当済みで、役員生命保険の満期解約で戻る5,500万円を差し引いた残り2億4,500万円を新たに特損処理するため、純益の大幅な下方修正に到ったというわけだ。 この11億6,000万円という金額、この会社の株主資本のほぼ半額に該当する。さらに、8月19日終値ベースの時価総額は7億8,900万円なので、時価総額の1.5倍近い金額に相当する。

まったくもって余計なお世話かもしれないが、この会社の今年6月末時点での現預金は15億円強。投資有価証券が3億円ほどあるので、これを全部換金したとしても、1回で現金払いするのはかなりの負担だ。手持ちのキャッシュが減ってしまっては、この会社は商社なのに事業に支障が出ないのか心配になる。

しかも会社が絶好調だというのならまだしも、ここ数年の会社の業績はお世辞にも良好とは言い難い。年商はピークの4割。前期は営業損益段階から赤字で、それゆえに繰延税金資産の大半の取り崩しを余儀なくされ、最終損益は4億円強の赤字だった。無配が2期連続しており、現時点で配当予想は出していないが、赤字になるかならないかという水準の最終損益で復配は難しいと考えるべきだろう。

11年3月期に10円だけ配当しているので、無配の連続期間は2期だが、その前2期も無配。業績の推移を見てみると、リーマン・ショックどころか、サブプライム・ショック後から業績の方はサッパリなのだ。

ただ、この会社は大株主一覧に登場する染谷氏関係者の保有分を単純に合計しただけで5割を超えるので、ほかの株主が退職金の支払いを減額させたりすることはほぼ不可能だ。この会社が染谷氏の退任時に備えて引当金を積んだ時期はかなり昔だ。上場時点では既に引当が積まれている。10年6月に取締役を退いて相談役になった際に、7億4,700万円の退職金を受け取る予定になっていたようで、10年3月期の有価証券報告書にもその旨記載がある。だが、結局は支払われなかったようだが、今回はその金額に4億円以上が上乗せされている。

ちなみに、同社は今年5月15日に役員退職慰労金制度を廃止する旨を公表している。必要な退職金は引当済みなので業績への影響は軽微だとも言っているから、2億4,500万円もの影響が出てしまった背景は知りたいところだ。

なお、04年3月期から12年3月期までは、あの竹田和平氏が大株主一覧に登場していたが、13年3月期の大株主一覧からは姿を消している。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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