日本にもETFのエコシステム構築に向け尽力 ブラックロック・ジャパン

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ブラックロックの世界トップブランド「iシェアーズ」3銘柄が東証に上場

渡邊雅史氏

渡邊雅史氏

iシェアーズ事業部ストラテジスト 渡邊雅史氏に聞く

世界トップのETF(上場投資信託)ブランド「iシェアーズ」のETFを運用するブラックロック・グループが日本のETF市場に本格進出した。7月17日、「iシェアーズ 先進国株ETF(MSCIコクサイ、1581)」、「iシェアーズ エマージング株ETF(MSCIエマージングIMI、1582)」および「iシェアーズ フロンティア株ETF(MSCIフロンティア100、1583)」が、東京証券取引所に上場した。そこで、今回「iシェアーズ」のETFを東証に上場した背景や、ETF市場の現状、ETF普及拡大への取り組みなどについてブラックロック・ジャパンのiシェアーズ事業部ストラテジストの渡邊雅史氏に聞いた。

■ブラックロック、他の運用会社との違い

ブラックロックは世界最大の運用会社で、運用総額が約4兆ドル(約400兆円)に上っている。当社のビジネスとしては、個人や企業年金、機関投資家のお客さま向けにETFを含むさまざまな運用プロダクトやアドバイスを提供することに加え、運用ソリューションとして当社で活用しているリスク管理システム「アラジン」といった運用のプラットフォームなどを他社に提供するビジネスも行っている。お客さまの資産運用のあらゆるニーズに総合的に対応できる形態をとっている点が、ほかの一般的な資産運用会社と違うところで、当社の強みと考えている。ETFに関しては、2000年にiシェアーズというブランドで米国のETF市場に本格参入して以降、幅広い地域や資産クラスのETFを拡充してきた。過去10年間、世界のETF市場は年率約30%のペースで拡大し、200兆円を超える市場規模へ成長しているが、その中で、iシェアーズETFは、全世界で600本を超えるETFを提供し、ETF運用残高は80兆円を超え、本数、残高ともに、世界1位のETFブランドとなっている。

■iシェアーズ東証上場のメリット

今回当社が運用するiシェアーズETF3銘柄が東証に上場されたが、まずは、日本でのETFビジネスのこれまでの取り組みを紹介したい。当社は2001年に日本株のETFを立ち上げた。その後、2007年に海外で上場しているETFを日本の投資家に紹介するETFビジネスを始めた。具体的には、海外ETFを金融庁に届出することで機関投資家のお客さまはもちろんのこと、個人のお客さまにもご投資いただけるようにしている。現状では、海外ETF95本の届出を行っている。一方、適格機関投資家のお客さまは、規制緩和により、海外で展開している600本以上のETFを自由に売買できるようになった。現在では、エマージング株や債券を対象にしたETFなどへの投資も活発化するなど、とりわけ機関投資家の方のETF活用の幅は広がってきている。一方、個人投資家の方にとっては、これまで主なiシェアーズETFは、海外ETFとして、外国株式の口座で売買していただくしかなかった。個人投資家の方々の立場で考えると、海外の株式市場の商品を外貨建てで、夜中の時間帯に売買しなければならないというハードルがあった。今回新たに誕生した「iシェアーズETF東証上場シリーズ」は、海外で実績のあるiシェアーズETFを日本株とまったく同じプラットフォームで手軽に取引していただくことができ、日本の投資家の皆さまに新たな海外分散投資の選択肢を提供することのできる商品であると考えている。

■ETFマーケットの現状

ETFについては、海外のETFは直近で5,000本弱が取引されている。市場規模は2兆ドル(約200兆円)を超えてきており、急速に拡大している。流動性、透明性、柔軟性に優れた投資ツールであるETFはここ数10年の金融の世界における最も成功したイノベーションの1つと表現されることもある。ブラックロックがiシェアーズというブランドで海外展開を始めたのが2000年。それから順調に残高を伸ばし、ETFの中でのiシェアーズのシェアは世界の約4割を占めている。銘柄数で見ても世界最多で600本を超えており、そのうち直近で95本を日本で届け出ており、個人投資家の方もそれらにアクセスできるようになっている。また、日本のETF市場は、これから急速な成長が見込めるのではないかと期待している。株式市場の時価総額に対するETFの時価総額の占める割合を見ると、約150兆円のETF残高を持つ米国は、株式市場の5%強をETFが占めている。欧州は約38兆円で2.7%、日本のETFは約6兆円でシェアは1.4%と、欧米と比べまだまだ小さい。その意味で、日本のETF市場拡大の余地は大きいと考えている。

■ETF成長に向けたブラックロックの取り組み

日本でもさまざまな運用会社がETFを提供しているが、ブラックロックのiシェアーズが目指しているのは、ETFエコシステムの構築であり、これはiシェアーズだからこそ実現できるものであると自負している。エコシステムは日本語で言えば生態系だ。ETFを取り巻く色々な参加者がいて、それぞれの参加者が適切に動かないとETFは育っていかない。森の中に色々な生物がいて、食物連鎖などで相互に依存あって、結果として森が機能していく、そういうイメージだ。ETFの森は、ETFプロバイダーがETFという商品を作るだけではなく、マーケットメーカーや、設定・交換の手続きなどを行う指定証券会社、証券取引所、指数プロバイダー、ETFを販売する証券会社、フィナンシャルプランナー、メディアなど、ETFをとりまくさまざまな方々と作り上げて行くものだ。また、ETFに関する制度を作っている規制当局への働きかけ、ETFを取り巻く税制に関する課題を解決するための税務当局とのやり取りなどさまざまな活動をしないとETFの森は育っていかない。当社は、iシェアーズというブランドで、海外、特に米国や欧州を中心に残高を伸ばしてきたが、その中でさまざまなノウハウを培っており、そうした強みを生かして、日本にもETFのエコシステムを作っていきたいと思っている。そして、最も重要なのは、エコシステムの中心が投資家であることだ。ETFは民主的な投資ツールと言われるが、投資家同士が自分の意思で売り買いを取引所で行い、価格形成がされることが大きな特徴だ。ETFを取り巻くエコシステムにかかわるすべての関係者がともに投資家の方々を向いて活動していくことが非常に重要となろう。そのような取り組みを通して、投資家の皆様が主役の資産運用の世界を日本のお客さまにご提供できればと考えている。

■東証上場のiシェアーズの概要と特徴

今回の商品は、既に海外の証券取引所に上場されていて実績のあるiシェアーズを東証に上場させた。東証で、日本円で、日本株とまったく同じプラットフォームで手軽に取引いただけることが最大のメリットだ。新しいETFをゼロから立ち上げたわけではなく、既に海外で実績のあるETFを活用しており、資産残高が大きいETFがベースになった商品を日本の投資家の方々が売買できる。また、今回は、広範な海外株式市場にアクセスでき、分散投資に手軽に活用できるものを、ご提供させていただいている。iシェアーズ 先進国株ETF(銘柄コード1581)は、日本を除く先進国の株式に広く分散投資するもの。iシェアーズ エマージング株ETF(銘柄コード1582)は、エマージング株に広く分散投資するものである。また、iシェアーズ フロンティア株ETF(銘柄コード1583)は、既に多くの話題を集めている。フロンティア株に投資できるようなETFは日本ではほかにないからだ。投資国についてみると、先進国株ETFは日本を除く先進国23カ国。メインはアメリカやイギリス、ドイツなどで、この3カ国のウエートが比較的大きくなっている。エマージング株ETFはBRICsや韓国、台湾などが中心。フロンティア株ETFはエマージング株にも含まれない新興国株、例えば中東や、ナイジェリア、ケニアなどのアフリカ、アジアではベトナムやバングラディシュなどが対象。連動を目指す指数は、先進国株ETFはMSCI KOKUSAI(コクサイ)インデックス、エマージング株ETFはMSCI エマージング・マーケットIMIインデックス、フロンティア株ETFはMSCI フロンティア・マーケット100インデックスだ。ベースとなるETFの残高は、先進国株ETFが約600億円、エマージング株ETFが約1,800億円、フロンティア株ETFが約200億円と、比較的残高が大きく、その点でもご安心いただけるのではないかと考えている。売買単位は1口で、現在の基準価額から見れば1口5,000円弱と手軽に購入でき、小口の投資にも活用していただくことができる。日本の信託報酬の概念に近い総経費率は、先進国株ETFが0.25%、エマージング株ETFが0.18%と非常に低水準で、3銘柄のうち、最も高いフロンティア株ETFでも0.79%。フロンティア株ETFの総経費率は、先進国株ETFとエマージング株ETFと比べれば高いものの、1%未満の総経費率は、十分魅力的だと考えている。

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