特報 ツノダの株主代表訴訟で最高裁判断 異例!1個人株主が株主代表訴訟に勝訴

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ツノダ(7308) 週足

ツノダ(7308) 週足

6月7日、約4年にわたって争われてきたツノダ(7308)の株主代表訴訟で最高裁の判断が出た。訴えられていたのは同社代表の角田重夫氏で、訴えていたのは個人株主の細川幸祐氏。ツノダ株式を33万株(4.2%)保有する第2位株主である。

この会社、今年3月末時点で自己株式を279万株保有していて、これが発行済み株式総数の36%に当たる。自己株を除くと筆頭株主は創業家の資産管理会社であるツノダメンテナンスで、保有割合は15.5%。従って、議決権ではツノダメンテナンスが24.2%、細川氏は6.6%ということになる。

今回の訴訟の発端は今から4年前に、角田代表が細川氏に対し、657万円の損害賠償を求める裁判を起こしたことにある。細川氏が大株主一覧に登場するのは2005年6月期の有価証券報告書が最初だ。

角田代表に善管注意義務違反があるとして、細川氏が取締役会に対し、角田氏の解任を求めたり、株主総会の議案書を提出したり、あるいは株主総会で発言したり、さらにはYahooファイナンスの掲示板に書き込むなどしたことが、自分を誹謗(ひぼう)中傷するものであり、名誉を毀損(きそん)され、精神的苦痛を被った、というのが角田氏側の提訴理由である。

これに対し細川氏側は、角田氏の資産管理会社でツノダの筆頭株主でもある愛知小牧産業(現ツノダメンテナンス)との間で不動産の管理委託契約を締結して業務委託費を支払ったり、複数の経営コンサルタントとの間で顧問契約を結んで顧問料を支払ったことが、取締役としての善管注意義務違反に当たるとして、会社に与えた損害9,716万円を会社に支払うよう求める株主代表訴訟を起こした。

2本の訴訟は1本にまとめられ、11年9月20日の1審判決は、角田代表に2,481万円の支払いを命じた。当然角田氏側は控訴したが、12年6月22日の2審判決でも角田氏に2,383万円の支払いを命じるものだった。このため、角田氏側が最高裁に上告していたのだが、その上告も棄却され、2審の高裁の判断が確定したというわけだ。

一個人株主が株主代表訴訟に勝訴したということはかなり画期的なことといえる。

このツノダという会社、かつての社名をツノダ自転車という。もはや一定の年齢層以上でなければぴんとこないかもしれないが、その名の通り自転車メーカーだった。高額の自転車でヒット商品も出し、国内におけるブランド力はそれなりにあったが、やはり時代の波には逆らえず、自社ブランドものを止めてOEM(相手先ブランドによる生産)に切り替え、そのOEMも縮小、現在では細々と企画開発を手掛けるのみ。40億円以上あった年商も今や4-5億円。自転車部門の年商は2,000万円強でしかない。

だが、侮るなかれ。保有資産を生かし不動産賃貸業に業態転換を図り、今や自己資本比率68%の無借金会社である。業態転換期の1990年代末から7年間は営業赤字が続いたが、業態転換が完了してからは、安定的に収益を稼ぎ出せる優良企業に生まれ変わった。

とはいえ、しょせん年商4-5億円である。ここ数年の純益は7,000万-8,000万円前後。2013年6月期の純益予想も7,200万円である。

そこへ角田代表から会社へ支払われる2,383万円が乗るわけだから、今期の純益底上げ効果は絶大だ。

ツノダの含み益は1株817円

1年前の株価は250円前後だったが、6月4日終値は373円でPBR(株価純資産率)はほぼ1倍と、1株純資産と同水準。実はこの会社、保有不動産の含み益はかなりある。12年6月期の有価証券報告書での開示情報では、簿価12億円に対し、時価が53億円あり、差引含み益は40億円。これを、自己株を差し引いた1株当たりに引き直すと817円にもなるのだから、今の水準でもまだまだ割安なのかもしれない。

ちなみに株主の細川氏は毎年株主総会で増配や役員の解任を求める株主提案を出す、“戦う個人投資家”だが、細川氏が提案する議案に、昨年は27-28%の賛同票が入っている。

ツノダの業績・財務の推移
決算期 売上高 営業利益 純益 総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末株価
1991/6 3,609 374 320 5,705 2,225 39.0% 5 950
92/6 3,316 375 101 6,233 2,275 36.5% 5 690
93/6 2,850 176 36 6,084 2,262 37.2% 5 544
94/6 2,346 88 54 5,564 2,274 40.9% 5 475
95/6 2,267 38 17 5,164 2,252 43.6% 5 230
96/6 2,214 △13 38 4,865 2,251 46.3% 2.5 310
97/6 2,093 38 92 4,351 2,324 53.4% 2.5 239
98/6 2,006 2 △34 4,040 2,270 56.2% 0 118
99/6 1,689 △49 0 3,903 2,271 58.2% 0 130
2000/6 1,162 △96 △175 3,612 1,927 53.3% 0 89
01/6 1,028 △46 △19 3,885 2,260 58.2% 0 93
02/6 744 △23 △146 3,624 2,022 55.8% 0 65
03/6 513 △31 218 3,470 2,147 61.9% 2.5 65
04/6 383 △21 △309 3,109 1,684 54.2% 2.5 122
05/6 270 △35 74 2,789 1,768 63.4% 5 195
06/6 394 64 1 2,715 1,794 66.1% 5 224
07/6 419 111 79 2,712 1,882 69.4% 7 250
08/6 412 112 71 2,475 1,771 71.6% 7 215
09/6 412 89 35 2,281 1,657 72.6% 7 210
10/6 432 121 82 2,276 1,680 73.8% 7 200
11/6 436 109 78 2,315 1,701 73.5% 7 240
12/6 431 88 71 2,632 1,786 67.9% 8 249
13/6 430 105 72 8

※単位は株価と配当のみ円、それ以外は百万円。13年6月期は予想。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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