特報 続!アコーディアTOB闘争 効果的な策を打ち出せるかがカギ

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11月15日のTOB(株式公開買い付け)開始宣言からちょうど10営業日目にあたる12月3日、アコーディア・ゴルフ(2131)が、PGMホールディングス(2466)によるTOBに対し、反対の意見表明を行った。

同日16時から開催された説明会で、アコーディアの鎌田隆介社長が反対の理由として挙げたのは、(1)同社が同日公表した新中期計画の優位性(2)公開価格の不充分性(3)目的の不当性、利益相反構造の意図的な創出④方法の不当性-極めて不公正な強圧的買収手法の採用の4点。

まず(1)は、2013年3月期の着地計画225億円のEBITDA(営業利益+減価償却費+減損)を、4年後の17年3月期に269億円に引き上げるという点と、配当性向を現在の27%から9割に引き上げる点の2点が柱だ。

アコーディアはおおむね200億円前後のEBITDAのうち、ゴルフ場や練習場の買収などM&A(企業合併・買収)や設備投資に約100億円を投じ、借入金の約定返済に60-70億円を回してきた。このほか、有利子負債の期限前弁済を行うなどして期末のキャッシュが大体50億円くらいになるというのがここ数年の流れだった。

ゴルフ場2強(アコーディアとPMG)の過去3期の業績比較
決算期 売上高
(百万円)
EBITDA(百万円) 当期純利益
(百万円)
純益ベース
ROE(%)
純益ベース
ROA(%)
純有利子負債(百万円)
対売上高比(%) 対EBITDA
(倍)
アコーディア 10/3 87,372 21,339 24.42% 10,438 14.30% 4.31% 96,609 4.5
11/3 86,693 20,664 23.84% 8,121 10.41% 3.25% 99,874 4.8
12/3 86,798 20,392 23.49% 11,293 12.79% 4.45% 97,913 4.8
12/9 47,805 11,039 23.09% 3,672 8.09% 2.82% 101,587 4.6
PGM 09/12 82,335 18,101 21.98% 8,633 12.71% 3.13% 105,526 8.1
10/12 79,519 16,694 20.99% 15,297 19.12% 5.77% 104,233 8.7
11/12 70,758 12,362 17.47% 2,273 2.82% 0.86% 103,097 11.5
11/6 34,647 5,612 16.20% 929 1.99% 0.68% 88,102 7.8

今回の増配計画は、手元に残る資金の大半を配当で社外流出させることを意味する。EBITDAで稼ぐキャッシュは借入返済に優先的に回され、これまでのようにはM&Aは出来なくなるので、今後は買収ではなく運営受託を増やす形で“ノンアセット型ビジネス”に転換するのだという。

そもそもアコーディアは10%前後と、配当性向が低水準の会社だった。ゴールドマン・サックス傘下の時代も含め、株主の大半が機関投資家なので、配当性向を高めても基本的に喜ばれない。浮いたキャッシュフローをM&Aに回し、外部成長を目指すという成長モデルを株主が受け入れてきた会社だ。

その方針が一変したのが今年5月。4月の竹生道巨前社長のスキャンダル発生と平和・PGM連合の攻撃で、今年5月、13年3月期決算での配当性向を一気に26%に引き上げた。

今回のTOB宣言直前の10月31日には、それまで1400円としていた配当を1600円とし、配当性向を27%に引き上げたばかり。どうしても場当たり的な印象を受けてしまう。225億円のEBITDAを4年で1・2倍にするという計画の根拠も開示資料を見る限り不明確だ。投資家がこの計画によって、数年後の株価がTOB価格の8万1000円をはるかに上回るであろうと確信できない限り、この計画にTOBへの応募抑制効果は望めない。

第一、これだけの配当を約束してしまっては、スポンサーも容易には付かなくなる。ホワイトナイト探しを打ち切るとも、探し続けるともアコーディア経営陣は言わなかっただけに、この大幅増配への覚悟のほどにも疑問を持たざるを得ない。

また、両社の経営統合は収益力でアコーディアよりも劣るPGMにとってはメリットがあるが、アコーディアにはほとんどないとも言っている。その根拠として、両社の12年3月期と11年12月期までのEBITDAの比較や。EBITDAベースのROA(総資本利益率)の比較なども掲載しているのだが、PGMの収益体質や財務体質は12年12月期の第2・四半期以降劇的に変化している。

子会社発行の優先株を親会社平和に引き受けさせて120億円を調達、財務レバレッジ(有利子負債から現預金を差し引い\たネット有利子負債がEBITDAの何倍あるか)もこのおかげで急改善している。毎月の売上高や来場者数の伸びにも顕著な差が出てきている。明らかにアコーディアは5月以降PGMに顧客を食われている。

むしろ公開買い付け価格の8万1000円が安いのだということを強調する方が説得力はあるはずなのに、この部分の説明はほとんどない。アコーディアが妥当と考える価格を明示してその価格にTOB価格を引き上げられてしまうことを恐れた可能性はあるが、それでは株主は動かせないだろう。

一夜明けた12月4日。アコーディア株は前日終値から1200円高の7万8400円で前場を終えた。既に新中期計画の効果は見えた感がある。TOBが終了する来年1月17日まではまだ1カ月半もある。アコーディアに残された時間はまだある。効果的な策を打ち出さない限り、あっけなくPGMに議決権の過半数を取られてしまうだろう。

ゴルフ場2強の2012年の月次状況
ゴルフ場売上高(百万円) 入場者数(万人) 単価(円)
前年同月比 前年同月比 前年同月比
アコーディア 1月 5,341 101.2% 480 104.7% 9,711 98.4%
2月 4,179 93.0% 377 94.2% 9,359 99.2%
3月 6,214 128.8% 573 129.3% 9,750 104.5%
4月 7,301 113.6% 666 110.8% 9,870 104.0%
5月 8,187 109.6% 771 111.8% 9,683 99.2%
6月 7,327 104.6% 688 104.9% 9,588 100.2%
7月 7,451 100.3% 721 102.6% 9,336 97.6%
8月 6,730 98.1% 679 98.2% 8,873 99.8%
9月 7,470 103.9% 725 105.8% 9,336 99.4%
10月 8,127 98.1% 758 100.0% 未公表
PGM 1月 4,308 99.7% 413 100.9% 9,002 99.0%
2月 3,434 92.3% 332 90.5% 8,509 100.0%
3月 5,304 130.5% 502 128.1% 9,288 105.8%
4月 6,211 119.0% 576 115.4% 9,686 105.4%
5月 7,145 111.2% 685 113.9% 9,522 98.5%
6月 6,703 110.5% 652 113.5% 9,342 98.5%
7月 6,772 105.6% 707 113.1% 8,734 94.2%
8月 6,105 105.5% 673 111.0% 8,171 95.6%
9月 6,736 113.4% 669 117.2% 9,184 98.1%
10月 7,135 102.1% 678 107.5% 9,640 95.3%
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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