特報 日本風力開発(2766) なぜ今ごろの勧告?なぜ課徴金で済む? 会社側は徹底抗戦の構え

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日本風力開発(2766) 週足2年

日本風力開発(2766) 週足2年

3月最終営業日にあたる3月29日、SESC(証券取引等監視委員会)が、日本風力開発(2766)に対して3億9,969万円の課徴金納付命令を発するよう、金融庁長官に勧告したことを公表した。理由は2009年3月期有価証券報告書虚偽記載である。

日本風力開発は、この09年3月期の有価証券報告書を参照書類として、09年9月から10年1月にかけて、公募増資や新株予約権付き社債募集などで総額88億円の資金調達を実施している。課徴金の計算式は機械的に決まっており、88億円の調達額をもとに計算した課徴金が約4億円だったというわけだ。

ただ、今回の勧告、何で今ごろになってなのかという疑問がわく。というのも、処分の対象となった09年3月期決算に関しては、当時監査を担当していた新日本監査法人を解任する騒動が起きて大いに注目を集めたのだが、あれから4年近い年月が経過しているからだ。

日本風力開発は三井物産出身の塚脇正幸代表が立ち上げた、社名の通り風力発電の開発業者だ。創業は1999年。ドイツのGEウィンドエナジー社製の風力発電機を買ってきて、日本各地に風力発電所を建設。生産した電気を電力会社等に売るという商売なのだが、03年3月の上場当初から、その決算処理には疑問を呈する専門家が一定割合存在したのも事実だ。

というのも、同社は発電所1カ所ごとにSPCを作り、そこが発電所施設を建設、保有する。そこで使う発電設備をドイツから買ってくるのも同社。発電設備を仕入れてSPCに売却する取引は、連結ベースでは内部取引で相殺されると考えるのが普通だろうが、発電所の建設はゼネコンが請け負う。発電設備もゼネコンが仕入れる。このため、発電設備を仕入れてゼネコンに販売する取引を内部取引として相殺せず、別立てで連結決算を組む会計処理を創業当時から行っていたからだ。上場出来たということは、東証はその会計処理をいわゆる“一般に公正妥当な会計処理”だと認めたということになる。

上場以降、同社は補助金を使って全国各地に発電所を次々と建設していくのだが、実際に売電事業が安定的に収益を生むようになるまでにはそれなりの時間がかかる。上場から数年間、発電設備の仕入販売事業の収益が、この会社の決算の見てくれに多大な貢献を果たしたことは間違いないのだが、この会社のそんな決算処理に、異を唱えたのが、かの月刊情報誌FACTAである。

09年3月期決算で、風力発電機器115基分の販売手数料を得たとする決算処理をし、当時監査を担当していた新日本監査法人もこの処理に適正意見を付けたのだが、その前の年の設置件数が25基。その前は5基しかなく、さらにその前でも61基。いくらなんでも115基分を一気に計上するのはおかしいだろう、という指摘だった。

新日本とモメだしたのはこの翌年。10年3月期決算で、新日本が前期の09年3月期の処理を修正するよう求めたのだが、会社側が応じず新日本を“解任”してしまった。

従業員が買い戻しを約束したととれる書面が出てきたことが原因なのだが、新日本が監査法人交代時に辞任理由を開示するという、前代未聞の展開になった。08年4月の企業内容の開示に関する内閣府例の改正で、監査法人が交代理由を開示しても守秘義務違反を問われない制度が誕生したにもかかわらず、この制度を使って開示をしたケースはこれが初。

このときは会社側が外部の専門家を雇って外部調査委員会を発足させ、前期の決算を修正すべきかどうかの検討を行っている。1回目は新日本とモメ始めた時期で、2回目は新日本を解任したあと。2回とも当然ながらシロ判定だった。

監査法人はやよい監査法人に交代、10年3月期の有価証券報告書は無事提出されたのだが、このころから民主党の事業仕訳のおかげで補助金制度が打ち切られ、新たな発電所の建設が困難になったため、問題の発電設備の仕入販売事業は事実上開店休業状態になる一方、各地の発電所の稼働で50億円前後の売電収入が上がり始める。

3期連続で巨額の赤字を計上、金融機関との間でも弁済期限についての定期的な協議を必要とする状況に陥ったのだが、13年3月期決算は固定買い取り制度の一部寄与で営業赤字が大幅に縮小。発電所3カ所の売却で最終損益は黒字転換が見込まれる。来期は固定買い取り制度が通期で寄与するため営業黒字を見込む。今期の発電所売却で得たキャッシュで有利子負債も大幅に減る見通しだ。

なぜ今ごろ課徴金処分か、という疑問は、業績の改善が見込めるようになったから、というのならすんなり解ける。

ただ、赤字を黒字にした、というのがSESCの見解なので、なぜ課徴金で済ませるのかという別の疑問もわく。

もっとも、会社側がSESCの勧告当日に出したリリースを見る限り、徹底抗戦を予想させる内容になっており、審判手続で争うことになる可能性は濃厚だ。審判手続でもクロ判定なら行政訴訟で争うことになる。違反事実を認める答弁書が同社から出されなければ、審判期日は5月13日に開催される。

日本風力開発の業績推移と財務データの推移

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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