取材の現場から トヨタ単体業績の黒字化 意外な円安への恨み節

個別 取材の現場から 連載


トヨタ(7203) 日足

トヨタ(7203) 日足

昨年末からの円安転換で、日本の輸出産業の業績は一気に好転した。が、その代表格であるトヨタ自動車(7203)は、この展開が面白くないのだという。

トヨタは先の第3四半期決算で、単体の黒字見通しを公表した。トヨタは5年前のリーマン・ショックで赤字に転落。その後、連結では黒字に戻したものの、トヨタ本体は赤字から抜け出せずにいた。

この5年間、トヨタは不運続きだった。米国で品質問題が問題化し、豊田社長が米公聴会に召集される騒動にまで発展となった。その翌年は、東日本大震災、さらに、タイの洪水でサプライチェーンが混乱。工場の稼働が止まる事態となった。その中で円高が進行。円高だけでなく、電力不足や高い法人税、さまざまな規制など〝6重苦〟と称される負担が常に業績に圧力を加えていた。そうしたさまざまな苦難を克服した上での黒字化だった。

今期のトヨタの決算発表の推移を見ると、第1四半期の単体の営業利益は700億円の赤字見通しだったが、第2四半期は200億円の赤字に改善。じりじり黒字化に向け、業績を改善させてきた。秋口には、社内に単独黒字化委員会なるPTを立ち上げ、1円、1銭レベルのコスト削減に全社を挙げて取り組んだ。

「その結果、昨年末には第3四半期で500億円の黒字を提示できる見通しが立った」(トヨタ関係者)。

ところがその中、自民党への政権交代やアベノミクス効果によって、円高が一気に円安にシフト。1ドル=76円まで上がった為替が今や96円と20円も円安に転じた。

これに伴い第3四半期決算でトヨタの単独決算は、1,500億円の黒字に転じた。第2四半期は200億円のマイナスだから、たった3カ月で1,700億円も利益が改善したのだ。

「トヨタ関係者は『円安が3カ月遅ければ』と非常に悔しがっていた。アベノミクスのおかげで、トヨタの底力を世間に示せなくなってしまったからだ」(自動車担当記者)。

もし円安転換が3カ月遅かったら、第3四半期で地道な努力の結晶で叩き出した500億円の黒字を世間に提示し、トヨタの復活を高らかに示すことができたはずだ。それがあにはからんや、円高という他力本願による黒字化であるかのように世間に受け止められてしまった。

トヨタは単体黒字化によって、過去5年間の「厄」をはらおうと思っていたようだが、ぎりぎりの段階でまたつまずいてしまった――。

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