櫻井英明のそこが聞きたい ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ 菅野隆二代表取締役社長 可能性秘めるバイオマーカー

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うつ病診断薬は技術の証

菅野隆二代表取締役社長

菅野隆二代表取締役社長

兜町カタリスト・櫻井英明氏が上場企業のトップを取材する「櫻井英明のそこが聞きたい」。第6回は、慶應義塾大学発のバイオベンチャー、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(6090・東マ)。菅野隆二代表取締役社長に現状と今後の戦略を聞いた。

――業容からお聞きします。

菅野 当社はメタボローム解析とバイオマーカーの探索研究をしています。

メタボというのが社名についていますが、メタボロームとはアミノ酸とか脂肪酸とか糖とか体の中で作っている代謝物の総称です。当社は代謝物を解析してからいろいろなことを探っていく事業を行っていますが一つは代謝物を測定して解析する事業です。クライアントは大学とか製薬会社、食品会社など代謝の状況や変化を知りたい研究者になります。病気の人と健康な人の血液を比較して薬の投与の効果が分かるというようなことが可能となります。もっともこれは短期的事業で会社のエンジンはこれで回っています。

もう一つの中長期的な可能性はバイオマーカーという診断に使うものを見つけることです。バイオマーカーとは特定の疾患に対して客観的に評価できる生体上の指標のこと。例えば糖尿病だったら血糖値、尿酸値では痛風が分かるなど健康診断などで使われているものも既にあります。ただまだバイオマーカーが分からない病気もあります。

典型的なのはうつ病です。現在は、問診中心ですが患者が正確に病状を伝えるとは限らないし、医師の経験や主観に負う部分が大きいので、客観的な診断が困難です。血液などに含まれる物質の高低で診断ができるようになれば画期的なことが起こることになります。特にうつ病の場合は治療の途中で薬をやめてしまう患者さんも多いのですが、ここに血液検査の客観的なデータがあれば非常に役立ちます。つまり診断が難しい「うつ病」なども、治療や回復の状態を客観的に“数値”で示すことができるようになったり、薬を選ぶ時に、より副作用が少なく効果が期待できるものを選ぶことができるようになります。今の自分の状態を知ることによって“病気の予防”にもつながります。

――うつ病マーカーの先は?

菅野 汎用性という意味では、まずは早期診断が可能になります。例えばうつ病による不眠などの場合、まず専門医ではなく内科医に行くでしょう。睡眠導入剤などで一度は良くなるかもしれませんが根源的治癒にはなりません。早期発見のためにはバイオマーカーは必要です。

ガンについては、コンパニオン診断薬の開発を進めています。これは副作用の大きい抗ガン剤は身体的にも経済的にも負担が大きいので効く人だけに効果的に抗ガン剤を使うということです。事前に効く人と効かない人の区別をすることで的確に患者さんに抗ガン剤を投与できるようになります。これは医療費の増大に歯止めをかける解答になるでしょう。

海外ではボストンにオフィスを出しています。アメリカのガン研究費は、日本の約18倍と市場性も大きく、ガンに特化したパッケージ(C―SCOPE)の販売に注力しています。

――山形にこだわりがあるとのことですが。

菅野 当社は山形の鶴岡市のメタボロームキャンパスに本社があります。慶應義塾大学の生命先端科学研究所があり、そこを山形県と鶴岡市が支援しています。当社はそこから出たバイオベンチャーです。地方創生の時期ですから地方活性化のひとつのモデルになるのではないか、と考えています。

<取材メモ>
一つはうつ病のバイオマーカー診断薬。そして北米含めたガンのC―SCOPE展開。そして基盤としてのメタボローム解析事業。今日の集積を担保して黒字化を確保し将来の成長のための事業に資金を投入しているという構図は明確だ。「うつ病のバイオマーカーはわれわれの技術の価値の証。われわれはバイオマーカーを見つける価値のあるニワトリを持っている。最初の金のタマゴがうつ病。次にガンなどの金のタマゴが生まれてくるということです」と菅野社長。今年の進展に期待大である。

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