特報 2月に入ってのTOB開始が急増 アムスク、ウェアハウス、エース交易、トウペ、スタライフなど

個別 特報 連載


2月に入ってキャッシュアウト目的のTOB(株式公開買い付け)開始が急増している。昨年は1月が6件、2月が7件あったが、3月以降は毎月1―2件で推移。9月、10月は2カ月連続で0件、11月、12月も2件ずつしかなかったが、今年は1月が4件、2月は2月8日までに早くも昨年と同じ7件だ。

一般にキャッシュアウトは株価が動いている時には出にくい。株価が高いときも影を潜めるので、近時のキャッシュアウトラッシュは「これ以上、上がらないうち」の駆け込みだろうか。

先週はこの欄で2月1日にTOB開始を公表したユニパルスの分まで紹介しているので、今週はその後の分をチェックしてみることにしよう。

アムスク(7468) 日足

アムスク(7468) 日足

まずは2月1日公表のアムスク(7468・JQ)。独立系の半導体商社で創業家が発行済みの4割強を保有している。全部取得条項スキームは使うものの、前哨戦では自己株買いを使う。買収者がSPCを作り、そこで公開買い付けを実施するケースが圧倒的多数を占める中、かなり珍しい。過去には北陸ミサワホーム(2009年5月TOB開始)とインター(09年1月TOB開始)しかこの手法は使っていない。

自己株の割合が増えると、相対的に創業家の議決権割合が増えて臨時株主総会での、少数株主の追い出しに必要な議決権割合(3分の2以上)というわけだ。SPCを作らない分、アドバイザーの弁護士などに支払うコストは安いはずだ。

問題はTOB価格だ。今回のTOB価格は1株当たり210円。過去1カ月平均の168円に25%、6カ月平均の161円には30%のプレミアムが乗っているのだが、この会社の12年12月末時点のBPSは861円もある。TOB価格はBPSの4分の1以下だ。12年12月末時点の現預金は25億円あるが、借金も19億円あるので、ネット現預金は6億円しかない計算になるが、金融機関には了解を得ている様で、自己資金でのTOBである。

親会社ゲオ(2681)が完全子会社化を目指すウェアハウス(4724)も、TOB価格がBPSを大きく下回っている。TOB価格は300円で、1カ月平均の221円に対するプレミアムは35%だが、BPSは604円なのでTOB価格はBPSの半値だ。

引退した創業オーナーとの間ですったもんだがあったエース交易(8749・JQ)は、創業オーナーに同社株を担保に融資をしていたタイガーファンドが18%分の新株予約権を保有しており、このタイガーファンドが100%支配を狙ってのTOBである。

TOB価格の320円のプレミアムは、1カ月平均270円に対しては18%、6カ月平均251円に対しては27%だがBPSは622円。TOB価格はBPSのほぼ半値だ。

トウベ(4614) 日足

トウベ(4614) 日足

一方、日本ゼオン(4205)に買収されるトウペ(4614)のTOB価格は125円。1カ月平均が107円でプレミアムはわずか16%だが、6カ月平均の82円に対してだと52%。BPSは30円なので、TOB価格はBPSの4倍ということになる。

楽天(4755・JQ)に買収されるスタイライフ(3037・JQ)も、TOB価格はBPSを大きく上回っている。TOB価格の7万4000円は1カ月平均の6万420円比で22%、6カ月平均の5万8391円比で26%。プレミアムは見劣りするが、BPSは4万7725円なので、TOB価格はBPSの1・5倍だ。

さらに、ひまわりホールディングス(8738・JQ)は、親会社のISホールディングスによる救済と言ったほうがいい。顧客損失の立替金が回収不能になり、11年9月に債務超過に転落。今年3月末までに債務超過が解消できなければ上場廃止になる。

TOB価格は113円と、1カ月平均(62円)に82%もプレミアムが乗っており、6カ月平均(57円)に対するプレミアムは98%である。株主にとっては地獄で仏の心境だろう。

アムスクは創業家が4割、自己株が7%あるし、うるさそうな株主は上位には見当たらない。ウェアハウスもゲオが6割を握り、自己株も7%あるので、両社とも追い出し決議獲得に必要な議決権獲得は可能だろうが、追い出し後の価格決定の申し立ては覚悟したほうが良さそうだ。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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