取材の現場から 電波オークション導入見送り 自民党のソフトバンクたたきが始まった?

個別 取材の現場から 連載


ソフトバンク(9984) 週足

ソフトバンク(9984) 週足

総務省が「電波オークション」の導入見送りを決めた。政権交代に伴う政策転換だが、「これで、自民党政権のソフトバンク(9984)たたきが始まった」との声も上がっている。

携帯電話会社への電波帯の割り当ては、総務省が審議会の意見を通じて、どの事業者にどの周波数を与えるか決めてきた。が、世界各国では、国の審査ではなくオークションで周波数を割り当てるのが大勢となってきている。オークションにすることで、政府の恣意(しい)を排除した透明性のある割り当てができる上、落札額が国庫に入る。国民共有の財産(電波)を国民のために活用するという観点からも、オークション方式が妥当だとも言われていた。

そのため民主党政権では、電波オークションの実施を閣議決定し、法案を国会に提出した。が、自民党が懸念を示していたことから廃案となり、自民党政権になれば、オークション制度は当然廃止になるとみられていた。

自民党が今回、電波オークションを撤回した背景には、ソフトバンクの存在もあるとされる。

ソフトバンクは1月1日、イー・アクセスを完全子会社化した。イー・アクセスは昨年6月、プラチナバンドと称される700MHzの電波帯の割り当てを受けた。ソフトバンクも昨年2月に、900MHzの割り当てを得ていたので、ソフトバンクはイー・アクセスを買収することで、まんまと700/900帯の2枠のプラチナバンドを手に入れることができたわけだ。

イー・アクセスが700帯の割り当てを受ける際、基地局などネットワーク整備のための資金調達力を懸念する声があった。そのため、6月の割り当て時点でソフトバンクとの間で裏取引――つまり、割り当ての前からソフトバンクに身売りする密約があったのではないか、ともみられていた。そもそも、電波割り当ての認定から3カ月程度で交渉がまとまったこと自体が怪しいとも報じられていた。

そこで電波監理審議会は、周波数割り当て規定に違反する事態が生じていないかと、総務省に調査を要請。総務省は昨年11月28日に問題はないという説明を同審議会に行っているが、2月4日に公表された同審議会の議事録を見ると、個々の問題点について総務省は「現時点では」問題なしと繰り返していた。審議会も、「『現時点では』というような表現がありますので、今後変わり得る可能性があるということで、今後ともしっかり見ていっていただきたいと思っております」という会長代理の発言で議論を閉じている。総務省側はソフトバンクの買収について、必ずしも問題なしと判断したわけではないようだ。

もちろんソフトバンク側も、総務省の〝不快感〟を気にしているようで、1月17日にはイー・アクセスの議決権の66.71%を売却。ソフトバンクとは別事業者であることを強調し、総務省に配慮する姿勢を示してはいる。

総務省がソフトバンクを厳しく見るのは、言うまでもなく、役所に喧嘩を売り、規制緩和で業容を拡大してきた会社だからだ。そして、自民党もソフトバンクを苦々しく思っている。というのも、ソフトバンクが民主党でもうけてきた会社だと見ているからだ。

菅政権時代、ソフトバンクの孫正義社長は、メガソーラー事業への参入を打ち上げ、再生可能エネルギー買取制度の導入などで政権にアプローチし、メガソーラー事業者にとって有利な固定買取価格を勝ち取った経緯もある。一種、民主党の政商的な動きを見せていた。そもそも孫社長の社長室長は民主党代議士だった嶋聡氏。自民党から見ればソフトバンクは、紛れもない民主党系企業なのだ。

もともと自民党は、NTT(9432)やKDDI(9433)といった電電公社を母体とする通信業者との関係が深い。何より、安倍首相の〝お友達〟でもある世耕弘成官房副長官は元NTT職員で、NTTと関係のある族議員も多い。新興勢力のソフトバンクとそりが合わないのは当然だ。

総務省が電波オークション見送りを決めたことで、これから予定されている電波割り当ては従来通り、総務省が担う。「そのため、イー・アクセスを傘下に置くソフトバンクは既に十分な周波数を得ているから、総務省がドコモ(9437)やKDDIに優先して割り当てるという判断をしかねない」(総務省担当記者)ともみられている。
もちろん、あの孫社長のことだから、そんなそぶりでも見せれば、アグレッシブに自民党や総務省に食い掛かっていくだろうが――。

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