特報 ビックカメラ 業績増額報道は予見できた

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『不明確な情報等に関する注意喚起』銘柄に指定

8月22日、ビックカメラ(3048)が5件目となる『不明確な情報等に関する注意喚起』銘柄に指定された。この日の未明、日本経済新聞が速報で「ビックカメラ、営業益5割増 2014年8月期」とし、売上高が8,200億円、営業利益が200億円前後になる見込みだと報じ、株価が急騰したからだ。

ビックカメラ(3048) 週足

ビックカメラ(3048) 週足

ビックカメラがこの時点で公表していた業績予想は、売上高が8,130億円、営業利益が148億円。200億円とはずいぶんなカイ離がある。そこで市場が反応したわけだが、実は公表済みの決算をちょっと細かく見るだけで、この数字は誰でも十分予想が可能な範囲だ。

下の表【1】は過去4期間のビックカメラの業績を四半期ごとに分解して集計したものだ。すべてだれでも見られる短信から集計できる。

こうしてみると、季節要因が実によく分かる。8月決算のビックカメラは、9月から11月が第1四半期(1Q)、12月から2月が第2四半期(2Q)。そして3月から5月が第3四半期(3Q)で、6月から8月が第4四半期(4Q)である。

書き入れ時は当然クリスマスシーズンなので、何もなければ2Qが業績のピークになる。逆に言えば、2Qの稼ぎが足りないと、ほかの四半期で挽回(ばんかい)するのは結構難しい。

ただ、今年は消費増税という一大イベントがあったので、3Qが極めて高い伸びを示した。売上高で言うと、1Qは前年比99%、2Qは103%、3Qは実に114%だ。4Qは当然反動減がある。

ただ、現在の通期売り上げ計画から3Qまでの累計売上高を差し引いた1,771億円を、4Qで売り上げれば公表数値はクリアする。1,771億円は前年同期の85%である。

いくら3Qで需要の先食いをしたからといって、果たしてここまで落ちるのか。

そこで参考になるのが、ビックカメラがホームページ上で開示している、月次の売り上げ実績だ。

6月はグループ全体で前年比87.7%だったが、7月は93%。大雑把に平均すると、6-7月2カ月間で大体90%。8月次第とはいうものの、一応4Qの売り上げが前年比9割だとすると、売上高は1,854億円になる。そうすると通期売上高の着地は8,130億円じゃなく8,212億円。

営業利益はどうか。営業利益は粗利益から販売管理費を差し引いた残りだ。もう3Qの時点で通期計画をクリアしているので、4Qが赤字でも達成してしまう。そんなアホな。1,771億円の売上高で営業損益が1,671億円の赤字になるということは、例えば売上総利益率が例年並みなら販管費率は26%にハネ上がってしまう。

そこで、現実的な線を探ってみる。売上総利益率、販管費率どちらも前4Q並みで計算してみると、営業利益は38億円。通期で203億円くらいになる。新聞報道とぴったり一致するではないか。

公表数字で計算できる程度の結果でしかなかったのだが、ビックカメラ自身が日経の報道に対するコメントとして、「計画を上ブレる」と発表したことで、こんな細かい計算をしている時間もなければ必要性も感じていない投資家が一気に参戦したのだろう。

通常、この類の報道は、「当社が発表したものではありません」の一言で終わりだが、今回ビックカメラがこんなに親切なコメンントを出したのは、今年5月に「不明確な情報への機動的な注意喚起を行うための開示注意銘柄制度の改善に係る業務規定等の一部改訂」が行われたからだ。

このルール改正、昨年の川崎重工と三井造船の経営統合スクープがきっかけになっていることは言うまでもない。日経の先行報道に対し、川崎重工側が経営統合の協議をしている事実がない、とウソをついた。報道が先行してしまった場合、多くの場合は「当社が発表したものではない」という、木でハナを括ったようなコメントが出れば報道は正式決定に至っていないだけでほぼ事実。逆に検討している事実がない、とまでコメントしたら本当にガセだと判断する、というのが市場のスタンダードだ。「言わない」選択肢はあっても、「うそつき」はだめ。その点、昨年の川崎重工の対応はいかにもまずかった。

新ルール適用は今年5月31日。2カ月半でビックカメラを含めて5社が注意喚起銘柄に指定されたが、ビックカメラ以外で、決算情報に絡んで指定を受けているのは上場早々アメリカ製薬大手ファイザーとの共同研究開発契約を解消するなどと発表して大騒ぎになったペプチドリーム。このケースはビックカメラのケースとは明らかに異なる。スカイマークは買収がらみ、指定第1号の第一生命はエクイティファイナンスがらみ。

ビックカメラ以外にも、決算予測の記事はいくつも出ているが、ビックカメラ以外はどこも指定対象になっていない。

こうなると、既存の予想数値とのカイ離が大き過ぎたことや、市場が反応したことが原因と考えるしかない。ともあれ、限られたケースとはいえ、上場会社の開示文言が多少なりとも親切になるのは歓迎すべきことだろう。

【1】ビックカメラの四半期別決算(単位:百万円)
売上高 売上
総利益
売上
総利益率
販管費 販管費率 営業利益 経常利益 当期
純利益
11/8 1Q 149,580 37,381 25.0% 34,736 23.2% 3,094 3,563 703
2Q 162,389 41,445 25.5% 33,862 20.9% 7,584 8,016 4,459
3Q 145,877 38,687 26.5% 33,470 22.9% 5,217 5,859 3,357
4Q 154,268 38,897 25.2% 34,863 22.6% 4,034 4,891 530
12/8 1Q 121,520 29,991 24.7% 28,836 23.7% 1,155 1,659 883
2Q 140,832 34,031 24.2% 31,507 22.4% 2,524 3,064 992
3Q 129,530 31,744 24.5% 29,556 22.8% 2,187 2,574 4,276
4Q 126,175 29,754 23.6% 31,551 25.0% -1,797 1,119 -2,144
13/8 1Q 185,274 45,366 24.5% 45,753 24.7% -386 -937 -784
2Q 214,408 51,611 24.1% 47,002 21.9% 4,607 4,957 -288
3Q 199,693 50,907 25.5% 46,396 23.2% 4,575 5,386 2,939
4Q 206,003 51,948 25.2% 47,640 23.1% 4,245 5,940 569
14/8 1Q 184,565 46,764 25.3% 45,643 24.7% 1,121 1,897 894
2Q 222,575 54,879 24.7% 49,524 22.3% 5,355 7,677 3,867
3Q 228,704 60,197 26.3% 50,201 22.0% 9,995 10,870 5,811
4Q計 177,156 44,643 25.2% 46,314 26.1% -1,671 -4,944 -2,872
4Q予 185,402 46,721 25.2% 42,827 23.1% 3,894 21,065 10,321
【2】ビックカメラの連結業績推移と株価指標
売上高 営業
利益
当期
純利益
総資産 純資産 自己資本比率 配当 期末
株価
PER PBR 配当
性向
05/8 433,424 18,092 5,112 172,086 11,613 6.7% 250 3.1%
06/8 493,957 14,948 6,202 219,222 44,582 19.1% 1,000 190,000 19.8 3.44 10.4%
07/8 565,751 19,190 7,271 231,579 53,140 21.3% 1,000 63,500 6.6 0.97 10.4%
08/8 630,740 16,346 -1,662 238,183 58,089 22.7% 1,000 56,900 -53.0 1.76
09/8 589,177 8,854 5,094 230,945 61,810 25.0% 1,000 37,300 12.3 1.08 32.9%
10/8 608,274 14,764 5,965 221,757 62,660 28.0% 1,000 32,150 9.2 0.89 28.5%
11/8 612,114 19,929 9,049 219,837 72,240 32.5% 1,000 43,750 8.3 1.05 19.0%
12/8 518,057 4,069 4,007 380,666 88,124 19.0% 1,000 39,150 16.8 0.93 42.9%
13/8 805,378 13,041 2,436 347,520 91,687 21.5% 1,000 42,650 30.1 0.98 70.5%
14/8予 813,000 14,800 7,700 10 887 19.8 22.3%

※金額の単位は配当と株価のみ円、それ以外は百万円。PER、PBRは倍。実績ベース

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