特報 今年に入ってのTOB・MBOを振り返る 東宝不動産、オストジャパングループ、グッドマン、マガシーク、ユニパルス

個別 特報 連載


目立つ東宝不動産のTOB価格

東宝不動産(8833) 週足

東宝不動産(8833) 週足

今年も早2月。今回は今年に入ってからのキャッシュアウト案件をざっとおさらいしてみることにしよう。下の一覧表のうち、DCFの上限、下限は買収者、会社側双方が取得した第三者評価双方から、上限は高い方、下限は低い方を拾ってある。

まずは年明け1発目の東宝不動産。TOB(株式公開買い付け)価格の735円は帳簿上の1株純資産は上回っているが、巨額の含み益を考慮した1株純資産は約1500円なので、株主側に何かと動きがあるのは本誌でも1月23日に報道済みだ。それにしてもDCF評価の上限が843円でしかないというのだから、どういう計算をするとそうなるのか、ぜひ計算根拠が見てみたい。

昨年は5割、6割のプレミアム案件がめじろ押しだったが、今年に入ってからは3-4割に落ちているのは、株価の方が上がってしまったからだろう。

ユニバルス(6842) 週足

ユニバルス(6842) 週足

今年最初のMBO(経営陣による買収)案件となったユニパルスも、TOB価格が1倍を割っている上、そもそも買収者が依頼した第三者評価はBPSを下回る1057円。このユニパルス、85億円の総資産のうち約30億円が現預金や有価証券などの金融資産。借金は約5億7000万円しかなく実質無借金なので、自己資本比率も6割を超えている。買収に必要な36億円は全額三井住友銀行からのローンで賄う計画のようなので、非公開化から1年後には、この豊富な金融資産の大半がローンの返済に充てられてしまわないだろうか、などと勝手に心配してみたくなる。

一方、市場価格の倍以上のTOB価格となっているオストジャパングループは、本社を札幌に置く調剤薬局チェーン。リーマン・ショック前の2007年9月に上場しており、その際の売出単価は11万7000円。11年6月に300分割を実施しているので、分割を考慮すると390円。TOB公表直前の市場価格はその当時とほぼ同水準であり、そこに100%を超えるプレミアムを乗せているわけだから、わずか5年半での市場退出とはいえ悪質性は感じられない。

NTTドコモに買収されるマガシークは衣料品ネット通販会社。伊藤忠商事の社内ベンチャーが発祥で、今も伊藤忠が64・3%を保有している。つまり、本件は伊藤忠のエグジット案件だ。06年11月の上場時の公募単価は65万円。初値こそ80万円を超えたが、半年経たないうちに半値になってしまった。底値は10年10月の5万3600円。TOB価格のPBR(株価純資産倍率)はとりあえず1倍を超えており、まずまずの結果と言えそうだ。

伊藤忠は使い捨て医療用具販売のグッドマンの筆頭株主でもある。この会社に伊藤忠が資本参加したのは4期連続の赤字の可能性が見えていた08年10月。発行総額約40億円の第三者割当増資を引き受け、36・2%を握る筆頭株主になっている。

このときの引受単価は988円。今回のTOB単価はそのおよそ3分の1なので、この価格でニプロにキャッシュアウトされてしまうというのなら大損だが、今回はキャッシュウアト後も伊藤忠はグッドマンの株主として居残る。

TOBはニプロで実施し、伊藤忠は応募しないで居残る。TOB終了後、例によって全部取得条項付き種類株を使って少数株主を追い出すのだが、強制買い取りの対価として少数株主に渡す株が、伊藤忠だけは端株にならないような交換比率が用いられる。

単独の株主が独占支配する形をとることが一般的なキャッシュアウト案件としては珍しいパターンだ。伊藤忠がここからどう負けを取り返すのか、ぜひ見てみたいところだが、非公開化されてしまったらその後の動向を外部から知ることはできない。

今のところ、かつてのような極端な低PBR案件は株高の影響からか鳴りを潜めた感がある。それだけに含み益を考慮した1株純資産の半額以下というTOB価格を打ち出した東宝不動産は非常に目立つ。東宝不動産のTOBは2月21日に終了する。

年明け早々いきなり盛り上がったアコーディアのTOBでは、最後の2週間でどんでん返しが起きた。この法則に当てはめるなら、東宝不動産で何かが起こるとすれば、連休明けあたりからだろう。

2013年に表面化したTOB・MBO企業
公表日 社名
(コード)
買収者 PBR プレミアム 公表当日終値 BPS TOB
価格
DCF
下限
DCF
上限
1/8 東宝不動産
(8833)
東宝 1.04 33.15% 552 708 735 631 843
1/9 オストJG
(2757)
富士薬品 1.49 111.20% 384 546 811 603 1,019
1/24 グッドマン
(7535)
ニプロ 0.94 45.89% 231 358 337 294 366
1/30 マガシーク
(3060)
NTTドコモ 1.13 35.00% 100,000 119,000 135,000 114,818 169,581
2/1 ユニパルス
(6842)
TYHD 0.88 43.94% 660 1,084 950 917 1,373
※BPSは2月4日時点で公表済み四半期末時点。公表当日終値、BPS、TOB価格、DCF下限、上限は単位円。
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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