特報 アコーディア・ゴルフ 説明会で「レノ」が質問

個別 特報 連載


アセットライト実施の賛否

2週連続になるが、今週もアコーディア・ゴルフ(2131)を取り上げてみたい。

5月12日の決算発表当日開催された、アナリスト向け決算説明会で、筆頭株主レノの代表・三浦恵美氏が質問に立ち、経営陣に詰め寄ったのである。

このことは5月14日に東洋経済オンラインにアップされた記事で明らかになっているのだが、この記事、なぜかほとんど話題になることもないまま1-2日で埋もれてしまった。

今、グーグルで検索をかけても、「アコーディア ニュース」「アコーディア ゴルフ場売却」といったワードではヒットしない。「アコーディア レノ」でもだめ。さすがに「アコーディア 決算説明会」と入れればようやく出てくるといった状態だ。つまり、あらかじめ記事の存在を知っていて探しにいかないと見つからない。

追随したメディアは皆無。不思議なことにヤフーファイナンスの掲示板でも全く話題になった形跡がない。レノは一貫してメディアの取材は拒否の姿勢を貫いており、コメントが得られないと記事が書けない記者や、記事掲載を認めないデスクが大多数を占めるメディアの現状からすると、ある程度やむを得ない。

だが、三浦氏の発言内容は、アセットライト実施の賛否を問う株主総会の行方を占う重要なカギになる。

アコーディアの決算説明会は、あくまで機関投資家とアナリストが対象で、原則メディアは入れない。メディアで入れるのはごく一部。四季報の取材がある東洋経済は、その限られたメディアの1つ。

■配当余力引下げの理由

基本的に機関投資家とアナリストばかりなので、質疑応答の時間に手を上げて質問をする参加者は毎回ほぼ皆無。人前で質問すれば手の内を明かすことになるのだから当然だ。必要なことは後から個別に会社側に聞けばいい。

従って、説明会そのものは毎回何の盛り上がりもない無味乾燥なものというのが恒例だった。ところが今回はよりによってレノの三浦氏が質問に立った。

内容は、PGMからTOB(株式公開買い付け)をかけられた際、9割配当で乗り切ったのに、配当余力がありながらなぜ45%に引き下げるのか、という点だ。

これに対し会社側は配当と自己株取得をバランス良く進めるから株主還元性向というとらえ方の中で株主価値の最大化を目指す、と回答。さらに三浦氏からは、株主還元性向の具体的な数値目標を問われたが、これには回答しなかった、というのが記事に書かれたその場でのやりとりである。

アコーディアがどう言おうと、今回のアセットライト化の主要目的が、レノが保有する株を会社側が買い取るための資金作りであることは誰もが認めるところ。実際、アセットライト化は来る定時株主総会の特別決議を経て実施される。

■質問の真意は

単なる特別決議なら議決権の3分の2で済むが、アコーディアは今回、レノ以外の株主の過半数の賛成を条件にしており、これは3分の2よりもハードルが高い。

逆に言えば、今回のスキームにレノは賛同しているはずで、そのレノがこのような質問に立つとは、一体どういうことなのか。アコーディアはレノと話もついていないアセットライト化計画をブチ上げたのか、という疑いを世間に持たせるに十分過ぎる。

レノが賛成しないのなら特別決議を通すことは不可能なので、アセットライト化は実施されない。2015年3月期の配当予想はアセットライト化実施前提で45%。アセットライト化が実施されないなら、以前の通り9割配当に戻さない合理的な理由がなくなる。

アコーディア(2131) 日足

アコーディア(2131) 日足

いくらなんでもレノと話もついていないのに計画を公表するわけがない、今回の三浦氏の行動には何か別の意図がある、と考えて、レノが賛成するという前提に立った場合、ほかの株主はどう考えるか。まずアコーディアの成長を信じ、総会後に実施される予定の自己株TOBの買い付け価格1,400円以上に株価が上がると考える株主は、総会決議に賛成票を投じ、TOBにも応募しないだろう。

次にアコーディアの株価が1,400円以上にはならないと考える株主は、当然TOBの実施を望む。現在の市場価格は一貫して1,400円を下回っている。TOB応募をもくろむ株主は、必要条件である総会決議に賛同する組と、総会決議には全く関心を示さずTOBを待つ組に分かれる。後者は他力本願なので、TOBを望むなら総会決議に賛同すべきだ。

■TOB株数に限り

ただここで問題になるのは、TOBが発行済みの3割までしか実施されないという点だ。アコーディアの成長を信じない応募者が殺到すれば比例案分になる。買い取ってもらえず手元に株が残ってしまう。アセットライト化実施後に株価が暴落するリスクもある。

少しでも好条件の1,400円で買ってもらえるなら、売り残しが出てもよしとするという考え方は、よほど取得価格が安い人でなければできない。

となると、そもそもアセットライト化による成長を信じない株主は、総会で反対票を投じ、アセットライト化を阻止するのがスジだ。

変数の多さに惑わされがちだが、ここはシンプルに、アセットライト化で株価が上がると思うなら賛成票。株価が下がると思うなら反対票というのが結局のところ王道のような気がする。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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