特報 アルメディオのライツオファリング 資金用途はアーカイブ事業の先行投資

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連休の谷間の4月30日の取引終了後、アルメディオ(7859・2部)がライツオファリングの実施を公表した。アルメディオといえば、CD、DVDの国際標準規格テスト用媒体の大手。CDプレーヤーやDVDプレーヤー、パソコンなど情報家電の製造工程で、国際標準に適合しているかどうかをチェックするための媒体を製造している会社である。

アルメディオ(7859) 月足

アルメディオ(7859) 月足

1999年3月の上場当時、その世界シェアは75%と言われ、時価総額は100億円を超える超有望企業だった。

そのアルメディオが、今や崖っぷち企業御用達といった不名誉な烙印(らくいん)を押されているライツオファリングとは、一体何事かと思いきや、かつての超優良企業アルメディオも、今や上場廃止基準抵触が危ぶまれる企業と化しているのである。

例によって上場から現在までの業績を振り返ってみると、売上高のピークは2005年3月期だが、営業利益のピークはその前年の04年3月期。02年3月期は前年の同時多発テロの影響により米国でデジタル家電が売れず、デジタル家電メーカーを主要顧客とするアルメディオも業績が落ち込んだ。それでも当期純利益が前年の10分の1以下になりながら、株価がさほど落ちなかったのは、この会社の技術力や財務体質の良好さが投資家から支持されていたからだろう。

業績に陰りが見え始めるのは06年3月期。デジタル家電の最大市場である北米で、デジタル家電そのものの価格下落が止まらず、翌07年3月期になると市場縮小がいっそう進展。08年3月期は減収ながらも単価と歩留まりの改善で営業利益は前期比増額に転じたが、その半年後のリーマン・ショックで壊滅的な打撃を受け、DVDの次世代メディアとして期待し、投資もしたブルーレイは思ったほど普及せず、以後、減収に歯止めがかからなくなっていく。

新事業として工業炉用炉材などの断熱材事業の記載が登場するのは、営業損益が赤字に転じた10年3月期から。11年3月期はエコポイント効果で薄型テレビ市場が拡大、減収ながらも営業黒字に転じたものの、12年3月期以降は3期連続で営業損益段階から赤字という状況が続いている。

だが、その断熱材事業はいまだに黒字転換に至らず、CD、DVDのプレス事業はスマートフォン、タブレットの普及で音楽配信に食われて需要は下降線の一途。年商がピーク時の半分以下となった現在でも、創業事業のテストメディア事業は規模が縮小を余儀なくされる中、今も黒字であり、利益の柱という状態だ。

もともと有利子負債残高を現預金残高が大きく上回る、いわゆる実質無借金会社なので財務体質は良好。2期連続で営業赤字が続いた13年3月期末時点では9割近い自己資本比率を維持していた。

だが、今期は期末になって10億円もの減損の計上を監査法人から求められたらしく、4月30日に公表した14年3月期の業績予想修正では、最終損益は3億5000万円の赤字から一気に14億円の赤字に拡大した。そうなると、純資産と資産が両建てで目減りするので、自己資本比率はさほど変わらないだろうが、純資産の額は22億円程度まで減ってしまう。

それでも現預金は昨年12月末時点で12億円もあり、年商20億円の会社としては潤沢だ。崖っぷち企業のバランスシートを見慣れた目で見ると、まだまだ十分優良企業に見えてしまうが、市場の評価は厳しい。時価総額が上場廃止基準の10億円を割る水準にまで落ちて来ている。

それでも潤沢な資金があるのになぜ今ライツオファリングなのかといえば、先が見えているディスク事業に代わる事業として同社が期待する、アーカイブ事業の先行投資資金確保のためだという。

公文書や法定保存文書、契約書などを紙のまま保存し続けることは、公共団体にとっても企業にとっても、倉庫スペースの確保に莫大(ばくだい)な費用が掛かる頭の痛い問題であり、テレビ局が保存する膨大な量の過去の放送番組の保存もまた同じ。制作会社からテレビ局への納品は未だにテープが使われ、それがそのままテレビ局の倉庫で保管されていくので、温度、湿度の管理状態が整った保管スペースに膨大な費用が掛かっている。

アルメディオは長期保存用の記録媒体として優れているとされる光ディスクの技術力の優位性を生かし、この分野を伸ばすのだという。

その第一弾として、創業者の出身母体であるティアック(6803)からストレージデバイス事業を買収する交渉を開始したことを3月19日に公表、このニュースを好感してアルメディオの株価は公表当日終値の180円から、翌日は230円まで上昇したほどだ。

今回のライツオファリングはノンコミットメント型なので、調達額は行使率次第だが最大で5億円。ほかの事例に比べると、純資産に対する割合は小さい。調達した資金はティアックからの買収に使う予定で、買収交渉が不調に終わった場合でも、別のM&A(企業合併・買収)案件など、いずれにしてもアーカイブ事業に使うという。

ただ、権利行使価格は110円と、公表当日終値の168円に対するディスカウント率は34.5%と、過去の事例の中では2番目の低さだ。従って、権利行使率はあまり上がらない可能性が高いが、もしもこの水準で行使率が9割を超えるようなら、この会社の技術力に対する期待はまだまだ高いということになるだろう。

アルメディオの業績推移

アルメディオの業績推移(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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