トップインタビュー アキュセラ・インク 窪田良会長・社長兼最高経営責任者に聞く 世界初 飲み薬タイプの「加齢黄斑変性」治療薬

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臨床試験の最終局面迎える 508人の被験者登録完了

窪田良会長・社長兼最高経営責任者

窪田良氏

年を取るにつれ目の中に老廃物がたまることで起こり、米国では失明の主要原因となっている「加齢黄斑変性」。中心視力の低下を引き起こし、深刻なケースにおいては中心視力が喪失するという網膜疾患で、「ドライ型」を経て、そのまま地図状萎縮という症状を引き起こし徐々に失明に向かうか、急激に視力を失う「ウェット型」に移行する。MarketScope社の2012年の調査によると、加齢黄斑変性の患者数は米国では約1,100万人、全世界では約1億2,700万人と推定されている。患者数がこれほど多いにもかかわらず、「ドライ型加齢黄斑変性」の有効な治療薬としてFDA(米食品医薬品局)の承認を受けて上市されている薬剤はまだない。そこに一筋の光明が差し込んできている。画期的な新薬を開発しているアキュセラ・インク(4589・東マ)の窪田良会長・社長兼最高経営責任者に開発状況、今後の展望などを聞いた。

――起業の経緯。

「慶應大学を卒業し眼科医として勤務する中で、有効な治療薬が存在しない眼疾患が多いと感じ、治療薬を研究開発して貢献したいと考えたのが始まり。緑内障の原因遺伝子発見をきっかけに米ワシントン大学に呼ばれ、研究成果を発展させたいとの思いから起業した。こうした経緯から、米国に本社を置き、眼科領域の治療薬開発に特化している」

――強み。

「目の治療薬といえば、まず目薬が思い浮かぶだろうが、これで治せるのは角膜など前眼部の病気のみ(網膜など後眼部には目薬が到達しない)。このため現在、後眼部の病気を治療するには眼球に注射するしか方法がない。『ウェット型加齢黄斑変性』の患者に対しては、VEGF阻害剤を眼球注射することで出血などの症状を緩和している。眼球に直接注射を施術するため、患者にとっても医療従事者にとっても負担は大きい」

「こうした中、当社は『ドライ型加齢黄斑変性』の早期治療を目指す飲み薬を開発している」

――開発状況。

「地図状萎縮を伴う『ドライ型加齢黄斑変性』の治療薬候補となる、視覚サイクルモジュレーター『エミクススタト塩酸塩』は、2008年から臨床開発を行っている。この『エミクススタト塩酸塩』のメリットの1つは、“飲み薬”であるということ。現在、米国および欧州で臨床試験のフェーズ2b/3段階にあり、地図状萎縮を伴う『ドライ型加齢黄斑変性』に対する治療薬候補の開発において、世界で最も開発が進んでいる。臨床試験に参加してくださる患者は通常よりも速いペースで集まり、3月初めに508人の被験者登録が完了した」

――今後の臨床試験スケジュール

「『ドライ型加齢黄斑変性』は慢性疾患のため、長期的に投与していくことになる。また、患者さんの多くは高齢者で、ほかの持病を抱えているケースも多いため、ほかの薬との飲み合わせなども確認する必要がある。今後1-2年かけてデータを集め、有効性を確認できた暁には、FDAと欧州医薬品庁に承認申請する」

――フェーズ2b/3の臨床試験期間として1-2年と幅をもたせている理由

「投与から12カ月後と、24カ月後でデータ解析を行うため」

「仮に12カ月後の中間解析で優れた薬効を示すことが出れば、“次のステップ”に進み、承認申請を行う可能性はある。中間解析で統計学的に高い優位性が認められ、承認申請を行った例が過去にあり、当社もその可能性は排除しないということだ。当治療薬はFDAに申請すると優先的に審査が行われる『ファストトラック』に指定されている。」

――となると、承認取得は最短で何年後になるのでしょうか

「臨床試験の段階で申し上げることはできない。いずれにしても、こんなにも早いペースで臨床試験に患者登録を頂いているのは期待感の表れだと受け止めている」

――気が早いようですが、ドライ型加齢黄斑変性の飲み薬の市場規模についてどのようにみていらっしゃるのでしょうか

「眼科領域は、癌(がん)などの全身疾患に比べて治療薬の開発が遅れていて、今後の期待成長率は、他領域の医薬品が3%のところ眼科領域では約6%」

「『ウェット型加齢黄斑変性』の治療に実用化されているVGEF阻害剤の『ルセンティスR』(注射剤タイプ)は、全世界で約4,000億円の売り上げを記録している。ジェネンテックなどが手掛ける抗がん剤『アバスチン』(注射剤タイプ)も、医師の裁量でウェット型向け治療薬として使用されており、これも加えると、世界市場は8,000億円と言われている。加齢黄斑変性の患者数や、注射剤よりも飲み薬の方が治療実行を決断しやすいことから勘案していただきたい」

――そのほかの治療薬の開発について

「糖尿病患者の約40-45%(世界で推定約9,750万人/2012年MarketScope社)が患っているにもかかわらず、いまだに認可された治療薬がない『糖尿病性網膜症』についても、可及的速やかに開発を進めたい。この領域でも当社は世界の最先端を走っている」

――ヘリオスなどもiPS細胞由来の加齢黄斑変性の治療薬を開発している。これらと競合するのでしょうか

「当社が開発している加齢黄斑変性の治療薬は、病気の進行を抑制し、初期段階での治療を目指すもの。一方、iPS細胞などを活用した再生医療は薬などで治らない人が利用することになる。このため、まったく競合しない。両者のすみ分けは可能とみている」

――企業として目指す方向性

「当社は研究、開発、販売まで自社で行い、『自分たちの運命を自分たちでコントロールできる会社』を目指している。失明が危ぶまれる患者に最適な治療薬を一日も早く開発し、世の中の役に立つよう、企業価値を高められるよう、引き続き努力していく」

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