特報 NowLoading社の行方 会計不正発覚公表と違約金請求

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不動産の商習慣「手付け倍返し」

3月11日、セールスプロモーションサービスのNowLoading(2447、以下、NL社)が2013年3月期決算で不正があったことを公表した。訂正後の決算がまだ公表されていないので正確な数値は不明だが、2億2,125万円と公表していた売上高のうち7,619万円を取り消し、取り消す売上高に対応する仕入も3,047万円取り消すという。ということは単純に粗利益が4,571万円減ることになる。公表済みの営業利益は3,689万円だったので、営業利益は882万円の赤字ということになる。

この修正で13年3月期が債務超過だったことになるので、2期連続の債務超過ということになり、実は上場廃止基準に抵触していたことになる。問題の13年3月期は監査法人ともめたために有価証券報告書の提出が遅れた年度でもある。この決算期の監査法人は清翔。売掛金の回収可能性に疑問があるから、入金があるまで監査報告書にサインをしない、と言われ、6月の定時株主総会開催の2日前になって、ようやくサインをもらえたといういきさつがある。

11日の同社リリースによると、当時の代表、つまりこの会社の創業者である中川哲也氏が、監査報告書にサインをもらいたいがために、自分でお金を用意して入金があったフリをしたという。

12年3月期で債務超過に転落したため、13年3月期で債務超過が解消していないと上場廃止になってしまう。このため、13年1月の時点ではビッグヒットPIPEなるファンドからの出資を取りつけ、9,900万円を拠出してもらえることになっていたのだが、同社の13年3月29日付のリリースによれば、3月になって期間損益で自力による債務超過が解消できる見通しが立ったから、ビッグヒット社からの出資はNL社側からお断りした、とある。出資してもらっておけば良かったのに、という考え方もある一方で、不正会計をもくろんでいたとなると、出資してもらっていたら損害賠償の対象になり得たので、出資は断っておいて賢明だったとも言える。

その崖っぷち状態のNL社に追い打ちをかけるように、会計不正発覚公表から3日後の3月14日、NL社に対し、メッツ(4744・東マ)が4億2,000万円の違約金を請求したことを公表した。

メッツはシステム開発会社として00年にマザーズに3社目の会社として上場している。上場で先行した2社が上場廃止になっているので、今ではマザーズ最古参である。その後、大手メガバンクの不良債権になっていた西麻布の不動産を引き取るなどしているうちに本業が先細りになり、株主にお金を返せるうちにという判断で、12年に解散を決議する。有利子負債はゼロだったので、多少なりとも株主に残余資産の配当が可能だったからだ。

しかし、その解散決議の直後に別の買い手が現れ、一転上場を維持することになった。新たなスポンサーに就任したのは、千葉県で産廃事業会社を経営する一方、不動産賃貸業も手掛ける吉野勝秀氏。このスポンサー交代を機に、メッツは不動産売買会社になった。このため、メッツは現在、実質的存続性喪失に伴う猶予期間銘柄に指定されている。

実はNL社も昨年4月に筆頭株主が交代したことを機に、不動産業への転換を図っている。それまで筆頭株主だった、中国人実業家で上海マイクロソフト終身名誉総裁の唐駿氏から、同氏所有株式を買い取った酒井勝一氏は、昨年6月の総会で創業者の中川氏に代わってNL社の代表に就任。不動産業界ではほとんど知られていないニューフェイスだが、富士バイオメディカルの粉飾事件で有罪判決を受け、現在執行猶予の身である吉富太可士氏からダイドー技建という投資会社を今年2月に取得したことで一躍有名になった。

ダイドー技建は酒井氏個人での取得だったが、支配力基準でこの会社がNL社の連結子会社になるとして、実質的存続性喪失に伴う猶予期間銘柄に指定されている。

そのNL社が仕入れ、メッツに転売するはずだった江戸川区の土地をNL社が買えなくなった。このため、メッツから受け取っていた手付け金2億1,000万円の倍額をメッツから請求されたというわけだ。不動産取引では、買い手が自分の都合で買わなくなった場合は手付け金放棄で済むが、売り手は自分の都合で売れなくなったら受け取った手付けの倍額を買い手に返金しなければならない。いわゆる「手付け倍返し」という商習慣である。

だが、13年12月末時点でのNL社の現預金残高はわずか230万円。そもそも総資産が1億7,000万円しかない。メッツはNL社から仕入れた土地の転売で20億円以上の売上高を業績予想に折り込んでいたようで、売上高こそ35億円から16億円に下方修正したが、営業利益は5,200万円上乗せして2億7,600万円に上方修正した。売上高16億円には4億2,000万円の違約金が含まれている。

3月14日付のメッツのリリースでは、違約金を売上計上したとあるので、反対勘定は未収処理をしたのだろう。だが、メッツの監査法人である三優がどう判断するかによるが、NL社から違約金を回収できないと判断されたら貸倒引当金を積まされるので、この営業利益以下の上方修正はかなり強気と言っていい。積まされる引当金の額次第ではメッツも債務超過転落の危機にさらされかねない。両社の動向には注目だ。

NowLoadingの業績推移

NowLoadingの業績推移

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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