特報 エンプラス(6961) たった2年で営業利益13倍の秘密

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LEDレンズキャップ驚異の売れ行き 数年に一度メガヒット商品

3月6日、精密プラスチック加工のエンプラス(6961)が、英国の会社から半導体のバーインソケット事業の譲渡を受けることを公表した。

2月17日付の譲渡なので、収益貢献は来期からになるし、売上高で15億円、営業利益で1.6億円程度の上乗せなので、現在のこの会社の業績からすればほとんど影響はない。それゆえか株価への影響は全く感じられないが、この会社、わずか2年前の営業利益は11億円たらず。株価も1,000円前後。それが今では6,000円台だ。

今期の着地予想は400億円の売上高に130億円の営業利益。たった2年で年商が倍、営業利益が13倍にもなる理由はただ1つ。液晶テレビ向けのLED(発光ダイオード)レンズキャップが驚異の売れ行きを示しているのだ。

エンプラス(6961) 週足

エンプラス(6961) 週足

エンプラスは埼玉県川口市に本社を構える実に地味な会社だが、数年に一度、高採算のメガヒット商品を出すことで知られ、その高い技術力には定評がある会社だ。

上場は1982年6月。この会社を世の中に知らしめたのは、昔懐かしいカセットテープレコーダーのヘッド部分付近にくっついていた、白いプラスチック製のローラーである。素人にはどうということのないローラーに見えたが、高い技術力を要する部品だったようで、これで一世を風靡(ふうび)した。

主力商品は自動車やOA機器に使われる、高精密のプラスチック部品。ICのテスト用ソケットも上場当時から手掛けている製品だ。

下の表は過去20年間のこの会社の業績推移をまとめたものだが、ご覧の通り、とにかく業績の変動が激しい。90年代の順当な成長はOA機器や自動車向けのプラスチック部品が順当に成長したことや、パソコンの普及による液晶用バックライトが成長路線にうまく乗ったことによるものだ。

2002年3月期はそのパソコン市場の急落でいったん踊り場を迎えるが、03年から06年にかけてはノートPCの普及が追い風になった。当時は高いスペックが求められたので、同社のノートPC用に使用される、液晶用のバックライト用ガイドパネルが売れに売れて同社の業績を大きく引き上げた。

だが、その高スペックの導光板用パネルに陰りが見え始めるのが07年。携帯の普及で急速に大型の液晶パネルの需要が後退。高スペックものの需要も後退し、業績が急速に悪化したのがリーマン・ショック直前の08年3月期。さらに08年9月のリーマン・ショックで、安定収益源だった自動車やOA機器向けのプラスチック部品が壊滅的な打撃を受け、09年3月期はついに営業赤字に転落。株価は1,000円を割る水準まで落ち込んだ。

11年3月期には大型導光板事業から撤退、12年3月期は東日本大震災とタイの洪水被害で再び自動車向けが打撃を受け、前期比営業減益を余儀なくされる。

だが、その最悪の時期に温めていたのがLEDレンズキャップ事業。14年3月期の売上高予想400億円のうち、LEDレンズキャップ事業を手掛けるオプト事業部の売上高予想は実に215億円。第3四半期までの累計営業利益は92億円だが、そのうちオプト事業の営業利益は84億円を占める。

株価も今年1月いっぱいまでは7,000円台後半を維持していた。2月に入って株価が6,000円台に落ちてきているのは、1月30日に発表された第3四半期までの実績がほぼ想定内で、さらなる上方修正の見込みがなくなったためだろう。正直に市場が来期予想を折り込み始めたということになるのだろうが、メガヒット商品はいずれ役割を終えるときがくる。

現在、大型液晶テレビ用途でバカ売れしているLED用レンズキャップが、照明用途など新たな用途でブレイクすれば株価の再上昇もあり得るだろうが、過去、この会社はメガヒット商品を連続して出せたことがほとんどない。

それゆえに外資系ヘッジファンドの運用担当者は「極めて高い技術力を持つ会社であることは確かだが、業績の振れ幅が大き過ぎるので長期投資に向かない」と言い切る。今回は過去のジンクスを打ち破れるのか。注目したい。

エンプラスの業績推移

エンプラスの業績推移(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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