特報 NECネッツエスアイ 連結子会社の不祥事で問われる監査法人

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欺いた手口の公表に関心

1月17日、NEC(6701)の子会社でネットワーク事業を手掛けるNECネッツエスアイ(1973)が、連結子会社で15億円もの使い込みがあったことを公表した。

使い込みが発覚したのはネッツエスアイ東洋。東洋通信機の電子器機事業部門を分社化して切り出した会社で、NECネッツエスアイ(当時は日本電気システム建設)が2005年5月に買収した。紙幣読取識別装置や光伝送装置の製造販売会社だという。

NECネッツSI(1973) 週足

NECネッツSI(1973) 週足

1月17日付の同社のリリースによると、ネッツエスアイ東洋の従業員が、05年7月ごろから小切手の二重振り出しや不正な裏書きによる現金化などによって着服を行ったとある。横領したカネの使途はネット競馬を中心とするギャンブルで、銀行残高証明書などの偽造や不正仕訳を行うなどの方法によって発覚を免れていたのだそうだ。

発覚のきっかけは同社がコンプライアンス強化活動の一環として行った事務処理改善活動の中で、不明な売掛金があることに気づき、独自に調査した結果判明したのだという。

今後詳細な事実解明を行って、厳正な処分を行うとともに調査結果の開示を行う、と言っているので、いずれ詳細な報告書が開示されることになるのだろう。各年度の被害額を確定し、各年度ごとに営業外損失で処理をするというから、06年3月期から13年3月期までの8期分の決算について、経常利益以下の金額の訂正も行われるはずだ。

NECネッツエスアイの連結売掛金残高は13年3月末時点で923億円。15億円を約10年間にわたって着服したわけだから、1年あたりは平均で1億5000万円。埋もれてしまう金額ではあるのだろう。

ネッツエスアイ東洋の正確な売上高は不明だが、NECネッツエスアイの連結売上高構成は、企業ネットワーク事業が4割弱、社会インフラ事業が3割、キャリアネットワーク事業が約25%で、そのほかが7%弱。セグメント利益はほぼ売上高構成に比例している。

ネッツエスアイ東洋はその他セグメントの会社で、その他セグメントの売上高は150億円弱でセグメント営業利益は4億円。このセグメントの数字がネッツエスアイ東洋の業績とイコールではないので、ネッツエスアイの業績はこれ以下ということになる。子会社としての存在感は希薄だったのだろう。

とは言え、10年間も見過ごされてきたということは問題だ。15億円となるとセグメントの4年分の営業利益が吹っ飛ぶことになる。そこで「監査法人は何をしていた」、ということになるのだが、この会社、08年3月期までは新日本監査法人が監査をしていた。09年3月期からはあずさ監査法人に変えているのは、親会社のNECが同じタイミングで新日本からあずさに変えたからだ。親会社のNECは、監査法人変更の理由として、08年2月25日付のリリースで会計監査の継続委嘱期間が長期にわたることと会計基準を米国基準から日本基準に変更することを上げている。

つまり、あずさは09年3月期からの6期間、新日本は05年3月期からの4期間にわたって不正を見過ごしていたことになる。

しかもあずさの監査報告書にサインをしている代表社員は浜田康氏。『会計不正―会社の「常識」監査人の「倫理」』という著者をしたためている不正会計にはことのほか厳しい会計士である。浜田氏本人としてはまさに痛恨の極みだろう。

あずさと新日本という組み合わせはオリンパスの不正を発見できなかった組み合わせでもある。調査報告書には監査法人を欺いた手口の数々も盛りこまれることになるだろう。なぜ会計士は不正を発見できないのか。その重要なヒントをくれる報告書にもなるはずだ。

■NECネッツエスアイの業績推移
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 総資産 純資産 自己資本比率 期末株価 PER PBR
2005/3 198,625 4,812 4,750 1,222 123,935 51,704 41.7% 1,060 37.54 0.86
06/3 213,672 6,056 5,982 2,609 134,911 54,017 40.0% 1,534 25.33 1.19
07/3 254,641 7,849 7,860 3,476 148,797 62,201 41.3% 1,491 21.08 1.21
08/3 258,212 10,743 10,423 4,412 154,171 66,132 42.3% 1,702 19.19 1.30
09/3 249,070 10,968 11,211 5,154 147,462 69,340 46.6% 840 8.11 0.61
10/3 217,727 9,867 10,125 5,806 146,915 74,221 50.1% 1,239 10.61 0.84
11/3 217,948 10,835 10,931 4,747 149,923 77,464 51.3% 1,057 11.07 0.68
12/3 204,658 9,747 9,570 4,593 149,707 80,651 53.5% 1,182 12.80 0.73
13/3 235,716 12,483 12,578 7,492 168,295 86,797 51.2% 1,852 12.29 1.07
14/3計 260,000 14,000 14,000 8,300

※単位百万円、株価は円。PER、PBRは実績ベースで単位は倍

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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