特報 セーラー万年筆のライツオファリング 新株予約権の最終取引日は3月から

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昨年12月27日の取引終了後、セーラー万年筆(7992・2部)が、ライツオファリングの実施を公表した。

基準日は1月16日、新株予約権の上場は1月17日で、最終取引日は3月7日。権利行使期間は2月20日から3月14日金曜日まで。

セーラー万年筆(7992) 月足

セーラー万年筆(7992) 月足

今回の新株予約権は1個で普通株1株分なので、すべて権利行使されると発行済み株式総数はほぼ倍増する。調達予定額は最大で21億9,091万円である。

セーラー万年筆と言えば文具の老舗だが、実は業績の方はかなりがけっぷち状態だ。過去10年間で営業黒字はわずか3回。10年前に56億円だった純資産は2012年12月末時点で10分の1以下の4億2,800万円まで減っている。株価もほぼ10分の1だ。今回の最大調達予定額は、13年12月期第3四半期末時点の純資産4億4,700万円の5倍近い。

資金使途の内訳は、文具工場の天応(広島市呉)の建て替え・設備更新と、産業用ロボット工場の青梅(青梅市)の設備更新に計6億円、文具の開発投資に1億2,000万円、ロボット機器事業の開発投資に8,000万円、システム化投資に1億円のほか、ロボット事業のM&A(企業合併・買収)に12億4,500万円となっている。現在のセーラー万年筆は文具以外に産業用のロボット事業も手掛けているが、どちらも苦戦している。ロボット事業のM&Aで起死回生を狙いたいということのようだ。

とりあえず資金使途に借金返済は入っていない。短期の借入金が20億円ほどあるが、これは借り換えで話がつくということなのだろう。

がけっぷち企業のライツオファリングの場合、期末で赤字が出ると債務超過転落。ゆえにその分の調達というケースが多いのだが、この会社の13年12月期の純益予想は一応黒字。ただ、第3四半期までの累計で最終赤字が2億7,800万円ある。前期は第3四半期までの累計最終赤字は1億1,000万円で、通期の着地もこれに近い1億2,600万円の赤字だった。

さらに、ライツオファリングの実施公表から2時間半後の27日18時すぎに、中国におけるロボットの生産体制の再編を公表している。従来は上海の連結子会社で製造していたが、ここでの製造をやめて上海子会社は中国国内向けの販売に専念。代わって台湾の会社に生産委託する方法に年明けから変更する、というもの。

上海の生産中止での特損は不明

気になるのは上海子会社で生産をやめる関係で、特損計上もあるという点だ。これで一体いくらの特損が出るのか現時点では不明だ。新株予約権の最終取引日は3月に入ってからなので、13年12月期の着地を見た上で株主は権利行使の有無を判断できる。

今回のライツオファリング、権利行使価格は31円。27日終値を基準にするとディスカウント率は32%。過去の実施例の中では最も低い。ノンコミットメント型なので調達額は権利行使率にリンクする。ライツオファリングのリリースには、調達額が減ればM&Aの対象も変更するとあり、なんだか既に具体的な候補会社があるような表現だ。

何とも中途半端なスキームに見えるのだが、結果はどうなるのか。ちなみに同社の株式は昨年3月まではほとんど動かない銘柄だったが、4月から5月にかけて売買高が急増。6月以降小康状態を保っていたが、第3四半期の短信公表後は俄然(がぜん)売買高が増え、仕手株化している印象だ。年明け最初の取引日である6日の売買高は、従来の1カ月分以上に匹敵する527万株に達している。

ライツオファリングの実施事例
行使価格 株価 ディスカウント率 総資産 純資産 調達額 権利
最大 結果 行使率
タカラレーベン 8897 300 559 46.3% 58,068 8,236 4,967 4,753 95.7%
ADワークス 3250 4,000 7,362 45.7% 7,111 2,224 539 500 92.8%
クレアHD 1757 45 80 43.8% 795 532 737 601 81.5%
IR Japan 6051 6,000 16,200 63.0% 2,087 1,505 1,012 994 98.3%
J-RED 3350 25 407 93.9% 948 240 693 681 98.3%
日本エスコン 8892 100 425 76.5% 44,369 4,626 3,518 3,455 98.2%
Jトラスト 8508 1,800 3,550 49.3% 218,706 70,895 113,069 97,682 86.0%
メガネスーパ 3318 75 129 41.9% 11,769 △1,418 1,358 905 66.7%
J-SOLHD 6636 2,500 6,702 62.7% 1,371 662 1,776 1,663 93.6%
ガイアックス 3775 600 1,996 69.9% 1,674 379 1,490 1,259 82.1%
レカム 3323 1,200 2,500 52.0% 1,244 △20 267 250 93.6%
T&CHD 3832 13,000 20,242 35.8% 607 △587 336 267 79.6%
J-RED 3350 40 76 47.4% 987 215 2,200 2,010 91.4%
ADワークス 3250 20 69 71.0% 8,377 2,813 2,217 2,149 96.7%
SE H&I 9478 116 210 44.8% 9,137 3,449 927
日医工 4541 676 2,369 71.5% 106,298 51,145 12,837
セーラー 7992 31 46 32.6% 4,494 474 2,145

※金額は行使価格と株価が単位円、総資産、純資産、調達額が単位百万円。総資産、純資産はライツオファリング実施公表時点で公表済みの直近四半期末時点。IRジャパンとADワークスの2回目はコミットメント型に付き、最終的には行使率は100%

セーラー万年筆の業績推移1
売上高 営業利益 当期純利益
ロボット機器 文具 ロボット機器 文具
03/12 16,639 10,633 6,006 1,322 1,943 △620 425
04/12 10,441 4,734 5,706 △322 118 △440 △1,374
05/12 8,626 2,407 6,218 △332 △335 3 △1,960
06/12 10,006 3,490 6,515 177 94 82 202
07/12 9,095 2,670 6,424 △21 △50 29 △112
08/12 8,366 2,118 6,248 △284 △339 54 △444
09/12 6,606 1,516 5,090 △421 △200 △220 △553
10/12 6,613 2,026 4,586 △259 46 △305 △1,067
11/12 6,604 2,122 4,482 △589 △105 △484 △749
12/12 6,452 2,077 4,374 47 34 12 △126
13/12計 6,145 81 5
セーラー万年筆の業績推移2
総資産 純資産 純資産比率 配当 期末株価 PER PBR
03/12 16,934 5,607 33.1% 0.0 410 38.9 3.0
04/12 12,817 4,434 34.6% 0.0 248 ▲ 7.3 2.3
05/12 13,156 4,056 30.8% 0.0 245 ▲ 5.3 2.7
06/12 12,304 3,418 27.8% 0.0 157 34.7 2.1
07/12 10,686 3,129 29.3% 0.0 97 ▲ 38.6 1.4
08/12 8,419 2,225 26.4% 0.0 46 ▲ 4.6 0.9
09/12 7,127 1,864 26.2% 0.0 57 ▲ 4.6 1.5
10/12 5,744 942 16.4% 0.0 52 ▲ 2.4 2.9
11/12 4,928 441 8.9% 0.0 34 ▲ 2.6 4.8
12/12 4,638 428 9.2% 0.0 40 ▲ 18.3 5.9
13/12計 0.0 46

※金額は株価は円、株価以外は100万円。PER、PBRは実績ベースで単位は倍

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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