特報 ワークマン高成長の秘密 IRも積極的に推進

個別 特報 連載


低い流動性でも高い増配ペース

12月2日、中小型の優良銘柄ワークマン(7564・JQ)が11月の月次実績を公表、全店売上高で前年同月比107.5%となったことが明らかになった。10月は110%なので、下期の累計は108%強といったところ。

ワークマンといえば吉幾三。建設工事従事者向けの作業着や軍手、安全靴、ヘルメットなどを売る店をFC(フランチャイズ)展開している、通称「作業服のユニクロ」。

ワークマン(7564) 月足

ワークマン(7564) 月足

カインズホームなどを展開するベイシアグループから1980年に分社化して誕生した会社で、上場は97年9月。

11月末時点で全国に723店舗を有するが、このうち約85%がFC。それ以外の約15%も、ある程度の実力がついたらFCとして独立させる、トレーニング店舗である。

従って、この会社の売上高の大半は、FC店から入るロイヤリティと、FC店向けの商品の卸高で構成されている。全国のFC店舗での販売動向がほぼそのまま、FC本部であるこの会社の売上高に反映される。本部だけが栄えるFCではない、というのがこの会社のウリである。

株主総数は2013年3月末時点で980名しかいない。大株主にはベイシアグループの創業一族やその資産管理会社が名を連ね、特定大株主上位10者が89.7%もの株式を保有している。当然浮動株数は極端に少なく、四季報によればわずか2.6%である。

通常こういう会社はIR(投資家向け広報)にほとんど関心を示さないのだが、この会社は半期どころか四半期ごとに決算説明会を開催し、その際に配布した資料はもちろん、動画も自社サイト上で公表している。特定大株主上位10者には海外の年金系と思われるファンドも入っており、決算説明会は毎回、小規模なヘッジファンドの運用担当者やセルサイドの中小型銘柄担当者などが多数集まるらしい。

投資家からは、創業一族の保有分の売り出しを求める声は絶えないようなのだが、売り出しをしても買った投資家が抱え込んで放さないため、いつまでたっても流動性は高まらないらしい。

下の一覧は上場から現在に至るまでの同社の業績を集計したものだが、確かにこれだけの実績があると、いったん買ったら手放さない投資家が多いというのもうなずける。

上場時の公募売り出し価格は1,900円で、その後の分割を考慮すると実質950円。現在の株価が3,900円台なので、16年間でざっと4倍である。配当性向を2割から3割に引き上げた10年以降の増配ペースもすごい。同族の保有割合が多いことは弊害もある一方で、増配に対する強力なインセンティブにもなる。

基本的に控え目な業績予想を出し、着地するまでなかなか変えない保守派なのだが、今上期は珍しく期初予想を達成できなかった。大規模な物流センターの新設や出店コストで利益が圧迫されたということもあるが、主要原因は売上高の未達だ。

チェーン全店売上高は前上期比では4.3%増で着地したが、期初計画は6%増だったので、まずはここで1.7%ショート。FCへの商品供給も当然未達となり、この会社の上期の売上高は前上期比103%、計画対比で2.6%のショートとなった。原価でも2.7%のショートだったが、販管費が計画を1.4%下回ったので、営業利益では計画比3.4%で済んだ。 通期計画は変えていないので、上期の未達分はそのまま下期へシワヨセされ、下期は売上高で前下期比108%の売上高を達成しなければならない。

上期実績が103%の中で108%はやや厳しそうに見えるし、計画未達は久々なので、株価に影響が出てもおかしくないのだが、浮動株が極端に少ないからなのか、はたまた投資家のこの会社への信頼ゆえなのか、株価は上期の決算発表後、全くと言っていいほど動かなかった。

取りあえず10月、11月はこのペースをクリアしているので、最後までこのペースを維持できれば期初計画はクリアできる。ちなみに、会社予想では配当は据え置きだが、この計画で3割の配当性向だと80円への増配も計算上は期待できる。

創業一族の保有株を大量に売り出し、流動性を高めればとっくの昔に東証1部昇格は可能な実力がありながら、いまだにJASDAQにとどまっているのは、やはり同族経営へのこだわりがあるからなのかもしれない。

業績推移(クリックで拡大)

業績推移(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
戻る