特報 アコーディアTOB問題 旧村上F系「レノ社」が突如の参戦 エフィッシモも買い付けか

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アコーディア(2131) 日足1年 MA(25-75)

アコーディア(2131) 日足1年 MA(25-75)

新年最初の記事は別のテーマを考えていたのだが、年明け早々TOB(株式公開買い付け)期間中のアコーディア(2131)に、村上系ファンドと言われるレノが株付けしていることが判明したので、新年最初はアコーディアでいくことにする。

レノの代表は才色兼備との噂が高い三浦恵美氏。村上世彰氏の右腕と言われた女性だ。レノの役員には村上ファンドファミリーがずらりと顔をそろえており、2年半ほど前、月刊情報誌FACTAでその動向や投資スタンスなど取り上げられたこともある。

レノがアコーディアの大量保有報告書を提出したのは1月7日。提出時間までは不明だが、提出した大量保有報告書は全部で5本。レノ、C&Iホールディングス、合同会社南青山不動産の3社の名義で昨年11月19日から買い付けを開始しているので、PGMがTOB宣言を出して2営業日目から買い付けを開始していたことになる。12月25日からの材料なき株価急騰の原因はレノだったということだろう。

レノグループの取得株数
取引日 レノ C&I 南青山 合計
11/19 1,183 1,183
11/20 10,675 10,675
11/21 2,760 2,760
11/22 2,332 2,332
11/26 1,948 1,948
11/27 1,400 1,400
11/27 ▲ 500 ▲ 500
11/28 140 140
11/29 448 448
11/30 570 570
12/03 2,064 2,064
12/04 70 70
12/05 272 272
12/06 5,663 5,663
12/07 2,098 2,098
12/10 500 500
12/11 1,311 1,311
12/12 482 482
12/13 4,700 4,700
12/14 373 373
12/17 1,195 1,195
12/18 3,533 3,533
12/19 3,301 3,301
12/20 2,592 2,592
12/21 3,255 3,255
12/25 10,615 983 11,598
12/26 11,623 11,623
12/27 3,840 15,892 19,732
12/28 2,320 17,614 19,934
1/4 12,475 17,188 29,663
合計 29,513 64,708 50,694 144,915

1月4日、アコーディアは、株主総会における特別決議の必要議決権割合を4分の3に引き上げる定款変更をかけるための臨時株主総会を3月下旬に開催する、という奇策を繰り出した。PGMに5割超の議決権を取られても、経営統合には特別決議が必要なので、そのハードルを3分の2ではなく4分の3に引き上げておけば、少数株主の意向が反映しやすいというのがアコーディア経営陣の理屈だ。当然、臨時総会の基準日はTOB期限前日の16日としている。特別決議のハードルは会社法上の原則は3分の2だが、定款変更をかければハードルを上げることは会社法も許容している。

ただ、基本的にはハードルが低いほうが、株主がおとなしい会社の場合は経営陣の意向をより簡単に反映できるのだから、わざわざハードルを上げようというインセンティブが働くことは滅多にない。この奇策、アコーディアの顧問弁護士である森・濱田松本法律事務所の石綿学弁護士が考案したそうだが、ハードルを定款変更で引き上げるのは日本では初らしい。だが、この奇策、公表前に報道が出ると、無情にも株価は急落してしまった。

週明けの1月7日、7万8100円で始まると、みるみる上昇。TOB価格に近接する8万900円で取引を終えた。翌1月8日は前場で一時、TOB価格を上回る8万2800円を付ける場面もあったが、本稿を執筆している午前11時25分時点では8万600円に下がっている。いずれにしても、かつて村上氏は、「自分が買っていることが市場に知れると、それだけで株価が上がってしまう」とぼやいたこともあり、レノを材料に株価が上がるのは旧村上系ファンドの常だ。

それにしても、1月4日までにレノグループが買い付けた株数は7日公表分までで14万4915株。発行済み株式総数の実に13.75%に上る。同じく村上ファンド系と言われるエフィッシモも買い付けを行っているという未確認情報もある。数%ならいざ知らず、この量になるとその意図を図りかねてしまう。

ここまでの買い付け総額は112億9125万円なので1株当たりの取得単価は7万7916円。このままTOBに応募すれば8万1000円のTOB価格との差額3084円×取得株数=4億4691万円の利益が出る。112億円の投資で2カ月間に4億4691万円のサヤだと年利回りは23.7%。まずまずだろう。ただ、今回のTOBは上限が決まっているので、応募しても抽選になって処分しきれないリスクがある。

3月末まで持ち続けて5500円の配当を受け取ればそれだけで7億9703万円の利益だが、保有株の処分リスクが残る。TOBが終了してもなお、現在の水準の株価が維持される保証はない。

1月4日の臨時株主総会開催リリースと同時に、アコーディアは遅ればせながら2カ所からとった自社株の第三者評価を公表した。評価者はアコーディアの主幹事大和証券と、4大会計事務所系のPwC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)。むこう数年間に稼ぐであろう収益から現在の価値を割り出すDCF法での評価は、大和が12万4632円-16万3916円、PwCが10万5492円-13万4944円。

どちらもアコーディア経営陣が描くバラ色の収益計画に従って出されていることを疑わなければならないので、本当にこれだけの価値があるのかどうかは疑わしい。キャッシュフローや割引率など計算根拠も開示しなければ、DCFの評価など何の説得力も持たない。さらに、計算上の企業価値と実際の株価は乖離(かいり)するのが常だ。

もろもろ処分リスクを考えるとレノの意図は不明だ。TOBの期限までほぼ1週間。ゴルフ場2強を巡るバトルは今年も面白い展開になりそうだ。

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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