取材の現場から 日産のルノー化が進む? 志賀俊之COO引責の余波

個別 取材の現場から 連載


日産(7201) 週足

日産(7201) 週足

日産(7201)は中間決算会見で、志賀俊之COO(最高執行責任者)が副会長に就任する人事を発表。下方修正に伴う引責退任だとみられている。

志賀氏は、日産とルノーの接着剤役を務めていたと言われる。その一方で、「日産を守る防波堤」でもあったとされる。その志賀氏が更迭されたことで、カルロス・ゴーンCEO(最高経営責任者)の独走、独断体制が強まるのではないかとも言われている。これは、日産がフランスの〝植民地”になりかねないという問題もはらんでいる。

ゴーン氏は決算会見で、自らの進退を問われた。それに対し「決めるのは株主だ」と回答。日産の筆頭株主は仏ルノーで、43.40%を保有。ルノーのCEOはゴーン氏。ルノーの株主はフランス政府で、15%保有している。

フランス政府は「モノ言う株主」だ。特に雇用には敏感に反応する。2010年1月、ゴーン氏はサルコジ大統領に呼び出された。当時、ルノーが小型車クリオの生産をトルコに全面移管する計画を進めており、これに国会議員が反発していたためだった。株主である大統領の要請により、全面移管は見送ることとなった。

ゴーン氏は、レバノン人の両親の子としてブラジルで生まれ、フランスで育ったという。多重国籍者だと伝えられるが、出身校はフランスの国家エリートを養成する「グランゼコール」なので、フランスのエリート官僚的な側面もあり、フランスの国益は無視できないようだ。

今、ルノーの業績は不振。そこでゴーン氏は、人員削減を進めようとしたが、やはりフランス政府から横やりが入った。モントブール産業再生相は今年1月、ゴーン氏に「ルノーの業績が悪いとき、日産がルノーを助けるのは普通のことだ」と直接圧力を掛けたという。

そして日産は4月26日、次期マイクラ(日本名マーチ)を、ルノーの工場で生産することを発表。インドから欧州に輸出していた分をルノーに移管する。日産は「投資の抑制、為替影響の低減、在庫の削減などの効果が見込まれる」と説明しているが、日産関係者は「まやかしだ」と切って捨てる。インドで自社生産していたものを、欧州のルノー工場に移管すればコスト増となるのは明らか。日産の利益が減り、その分がルノーの売り上げになるのだ。そういう流れの中で、志賀氏がCOOから外されたのだ。

ただ、ルノーが日産を食いつぶすことはないだろう。日産の利益はルノーの連結利益になるからだ。ただ、需要が縮小する日本市場を見捨てる可能性はあり得る。株主にとってはプラスだが、日本のモノづくりにとっては危機だ。

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