特報 ぴあ 業績回復後の“落とし穴” チケット部門の巨額償却は終了

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ぴあ(4337) 週足

ぴあ(4337) 週足

11月14日、ぴあ(4337)が2014年3月期の中間決算を発表した。売上高は前年同期比121%、営業損益は3億2,600万円の赤字から一気に5億3,700万円の黒字へと、大きく改善した。通期の営業利益予想は8億円と、前期の2倍以上だ。

ぴあの上場は02年1月。過去12期間中、営業赤字が5回もあるなど、厳しい状況が続いていた。その主たる原因はチケット販売システムへの投資にある。

■チケット販売システム

ぴあは03年10月にWebによるチケット販売を本格的に開始したのだが、システムがうまく稼働せずソフトウエア資産の減損処理を余儀なくされて業績が悪化したのが04―05年あたり。08年1月からは新システムに移行するのだが、これがまたうまく稼働せず、08年3月期からは3期連続で営業赤字に。09年3月期には希望退職の募集まで実施している。

巨額のシステム投資を行ったので、その償却負担は当然重い。償却負担は09年3月期の13億円から毎期上昇。12年3月期は15億円に達するのだが、売上高が付いてくるようになったのが、その12年3月期。

そして今期はその巨額の償却が終わり、一気に営業利益を押し上げることになったというわけだ。だから償却前の営業利益であるEBITDAは09年3月期以降毎期プラスだ。

かつてコンサートのチケットは、発売予定日の発売開始予定時刻に電話をかけ、つながったときには完売している、というものだった。

ネット予約の時代になっても人気アーティストのコンサートチケットは、アクセスできたときには完売しているという意味では同じだが、チケットは必ずキャンセルが出るので、カード決済の取り消しも含めてキャンセル処理はかなり煩雑だ。

もっとも、興行主はチケット販売をイベントプローモーターに丸投げするので、ぴあのチケットシステムのありがたみを意識する機会はない。ユーザー側はトラブルがなくて当たり前という感覚だ。故にぴあのシステムをありがたいと感じているのはイベントプローモーターくらいなのかもしれない。

ぴあの巨額のシステム投資のおかげでチケット販売が破格にスムーズになったことは間違いない。それが、ぴあがチケット販売の世界で独り勝ち状態になった理由でもあるのだろう。

出版部門の不祥事が浮上

■不祥事対応の不透明感

ようやく報われ始めたその矢先、あり得ない不祥事が起きた。チケット部門ではなく、出版部門で、著者にウソの印刷部数を伝えて、支払うべき印税の額をごまかしていたというものだ。

ごまかした相手は大手芸能プロダクションのスターダストプロモーション。中谷美紀や竹内結子、椎名桔平といった大物俳優を抱える。

ごまかしの対象になった書籍は、ももいろクローバーZのムック本。ももクロの所属事務所であるスターダストが出版契約上の著者で、10万部印刷したのに、6万部で出版契約を結び、6万部相当の印税しか払っていなかったことが、ぴあの内部関係者がスターダストに通報して判明した。

ぴあはこの問題を10月17日に開示したが、この時点では第三者委員会の報告書も開示せず、経緯の説明もあいまいな内容だった。これに業を煮やしたのか、その3日後の10月20日にスターダストが内部告発による発覚であることや、ごまかした編集担当者が取締役に口裏合わせを頼んだことが、告発文に書かれていたことを暴露した。

ぴあは決算発表と同時に調査の最終結果も公表したのだが、これまた調査報告書の現物を開示しないままの、なんとも中途半端なもの。

問題の編集者は、興業プロデューサーとしても、編集者としてもかなりの実績を上げているスター社員。告発文の内容が正しいという前提に立てば、「オレ様編集者」である。

今回ごまかした印税額はわずか550万円。190億円近い現預金を持つ会社がやることではない。社内の決済も最初から10万部だったという。

■どうなる、調査報告書開示

一方今回の印税率は15%。通常は10%だから5%高い。社内は10%10万部で通していたのに、15%になってしまった。10%10万部の予算に収めるには15%だと6万6,666部。端数を切って6万部ということにした、という仮説は成り立つが、何しろ調査報告書が開示されていないので、ことの経緯は一切分からない。

それにしても2万部刷るのも勇気がいる時代に、10万部といえば会社としてかなりの覚悟をするほどの部数である。出版の世界では出版契約書は出版からかなり後になって、日付をさかのぼって締結される。確定した部数で契約するという目的もあるからだ。

印刷会社への支払いは10万部、著者への印税支払いは6万部で通った経理、契約書が6万部で通っている法務の体制は一体どうなっているのかと考えると、やはり調査報告書の開示は必要だろう。

だが、スターダスト社が今後訴訟を起こす可能性があるため、調査報告書は不利な証拠になりかねない。やはり開示しないのではなく、できないということなのかもしれない。

上場来のぴあの業績

上場来のぴあの業績(クリックで拡大)

著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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