特報 アコーディアの「経営戦略に関する検討状況」 レノ保有の株式買い取り資金が焦点

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アコーディア(2131) 週足

アコーディア(2131) 週足

10月31日、アコーディア・ゴルフ(2131)が2014年3月期の中間決算を発表した。

売上高、営業利益、経常利益までは前年同期を上回ったものの、純益は下回った。福島県内のコースに係る、原発被害に対する受け取り保証金や負ののれんが前期は特別利益に計上されていたのだが、今期はそれがなくなったためだ。

さらに、前期は上回ったとはいえ、売上高は1.5%、営業利益は6.1%、経常利益は4.6%、それぞれ期初計画を下回るという、ややさえない結果になった。

今夏の猛暑で夏場の集客に影響が出た上、秋口の猛暑も追い打ちをかけたためなのだが、この決算発表と同時に、「当社の経営戦略に関する検討状況について」と題したリリースも開示されている。

全国紙はどこも書かず、株価も反応することはなかったが、ゴルフ業界内ではそれなりに話題になった。

問題のリリースの中味は、アコーディアがPGMからTOB(株式公開買い付け)をかけられて公表した中期計画の中に盛りこまれていた、「ゴルフ場のアセットライト」に関する、検討状況の進捗(しんちょく)状況だった。

アセットライトとは、つまるところ、保有しているゴルフ場資産を流動化してキャッシュを作り、有利子負債の返済原資と今後のコース取得に充てるというもの。

TOBへの応募行動を阻止するため、アコーディアは9割配当を打ち出している。これまでゴルフ場から上がるキャッシュフローは有利子負債の弁済とコースやゴルフ場経営会社の買収に使い、残りを配当に回していたのだから、9割配当を実施すればキャッシュは足りなくなる。

そこで流動化でカネを作りますというわけで、アセットライトという話になった。TOB自体は最終日の昼すぎに、外資系の通信社が、すぐにでも流動化を実施してカネを作り、TOBに乗じてアコーディア株の約2割を取得したレノから買い戻す動きに出るととれるような記事を配信。これが引き金になって応募取り消しが続出して、PGMによるTOBは不成立となった。

アコーディアは今年12月に100億円、来年9月に150億円の社債償還を迎える。いずれも格付をとり、財務制限条項も付すことで有利な金利で調達した社債なので、9割配当を実施するアコーディアが全く同じ条件で継続してもらえないことは明らかではあったのだが、通常の銀行借り入れで借り換えれば済むことだ。それもできないほどアコーディアの評価は低くはない。実際、今年12月の社債償還は銀行のローンで対応する。

もはや売りに出るコースも限られており、かつてのように巨額の買収原資が必要なわけでもない。

だが、今回のリリースで、アコーディアは相変わらずアセットライトに関する検討を続けていることを明らかにしている。その心はというと、やはりレノが保有する株式の買い取り資金の調達ではないかと考えざるを得ない。

レノから株を買い取る資金ということは、収益を生まない資金使途になるので、銀行には貸せと言えないし銀行としても貸しにくい。

ある会員制情報月刊誌もこの件を今年10月号と11月号の2カ月連続で掲載しており、流動化はシンガポール市場へのREIT上場の形で行われるべく検討していて、シンガポールの投資家の背後には村上世彰氏がいる、というストーリーだ。

村上氏が自分の保有株を引き取らせる原資捻出(ねんしゅつ)方法をアコーディアに提案している、と言っているわけだが、もしもこれが事実だとすれば、アコーディアの取締役は大変だ。

レノからの引き取り価格が妥当なものであれば、どういういきさつでスキームが持ちこまれたとしても法的な問題は発生しない。

だが、妥当な価格とは何なのかは解釈が分かれる。どこまで検討を尽くせば良いのかも判断が分かれるところだろう。

日本でのREIT上場どころか、シンガポールでの上場となったら、銀行としては融資のスタンスを変えざるをえない。無担保で出していたローンを有担保にして資金を出すことは難しくはないが、重要な資産が会社から切り離されてしまったら話は変わる。

あくまでアコーディアは「株主総会マターであり株主の判断次第」だとしているが、ストーリーのおもしろさとは裏腹に、実現性は極めて乏しいものといえるだろう。

アコーディアゴルフの財務状況推移
有利子負債
残高
現金同等物 営業CF 投資CF 財務CF
残高 期中増減 配当金 有利子負債
1Q 101,741 6,162 1,499 4,329 -2,143 -687 -914 423
2Q 109,496 14,258 8,096 2,436 -1,649 7,307 -127 7,688
3Q 110,301 14,016 -242 3,414 -4,162 507 0 805
4Q 104,687 4,763 -9,253 4,684 -6,025 -7,911 -7 3,301
2011/3計 14,863 -13,979 -784 -1,048 12,217
1Q 109,332 5,343 580 1,713 -4,596 3,463 -830 4,644
2Q 107,480 4,456 -887 4,790 -1,613 -2,351 -192 -1,852
3Q 108,765 7,762 3,306 2,203 -1,488 877 -2 1,239
4Q 102,563 4,600 -3,162 6,228 -2,851 -6,537 -1 -6,200
2012/3計 14,934 -10,548 -4,548 -1,025 -2,169
1Q 106,339 5,083 483 2,520 -4,364 2,326 -1,025 3,775
2Q 106,637 5,000 -83 2,905 -2,727 -261 -203 298
3Q 107,811 5,465 465 2,644 -2,967 788 -2 1,172
4Q 102,361 5,823 358 6,214 -1,695 -4,161 -1 -5,451
2013/3計 14,283 -11,753 -1,308 -1,231 -206
1Q 109,079 7,330 1,507 908 -939 1,538 -4,753 6,782
2Q 104,435 5,269 -2,061 3,900 -1,488 -2,934 -873 -4,647
2014/3上計 4,808 -2,427 -1,396 -5,626 2,135
※単位はすべて百万円。財務CFの有利子負債は新規借入-返済で表記。
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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