特報 石井食品 業績低迷でも「無添加」「品質保証」

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食品メーカーとして崇高な信念、後は黒字転換策

石井食品(2894) 週足

石井食品(2894) 週足

チキンハンバーグやミートボールでおなじみの石井食品(2894)が、10月28日、2014年3月期中間期の業績を発表した。結果は売上高が前期比2%減の46億7,200万円で営業損益は2億7,500万円の赤字。当期純損益も2億8,600万円の赤字となった。上期の期初予想が48億円の売上高で4,500万円の営業黒字だったので、売上高、営業損益ともに大幅な未達になった。

石井食品は売上高106億円、営業利益1億5,000万円という期初の通期予想を現時点では変えていない。だが、前上期の売上高は47億6,600万円で営業損益が2億2,300万円の赤字。前通期の売上高が101億9,000万円に対し営業損益が4億1,900万円の赤字だった。

上期は前期よりも売上高、営業利益ともに悪化しているので、現時点での通期予想を達成するには、下期だけで前期比1割増収の59億2,800万円の売上高で4億2,500万円の営業黒字を出さなければならない。

さらに、59億2,800万円の売上高で4億2,500万円の営業利益を稼ぎ出すには、近年の売上総利益率の水準では、15億円くらいに販管費を抑えなければならず、この金額は上期よりも3億-4億円少ない水準だ。上期並みの販管費でこの営業利益目標を達成するのなら、売上総利益率は38%以上必要で、この水準は近年の1.7倍の売上高があった1996年当時よりも高い。

つまりは、現在の計画値の達成はほぼ絶望的。普通に考えると今期も営業赤字が続くことになる。

この会社、上場が62年なので上場会社としては老舗の部類に入るが、じっくり会社の中味を見てみたことがなかったので、あらためて中味を見てみたが、これだけ赤字が続いている割に、財務内容は悪くない。18年間で売上高、総資産、純資産がすべて約4割減り、PBR(株価純資産倍率)が1倍を超えていたのは18年前まで。株価も3分の1以下になった。

有利子負債の額は18年前とほとんど変わらず20億円前後だが、現預金が有利子負債の総額を若干上回る現預金があるので、とりあえず実質無借金ではある。

ただ、現預金は18年前に50億円ほどあったので、とうとう有利子負債と同額に水準まで減ってきてしまったことになる。

今回同社のウェブサイトを見て初めて知ったのだが、この会社、無添加に深いこだわりを持っているようで、原材料のトレーサビリティーが追えたり、品質保証も徹底しているようで、無添加へのこだわりゆえに、コンビニへの納品をやめたりもしている。

チキンハンバーグは大阪で万博が開催された70年の発売で、ミートボールはその4年後の74年。どちらも筆者にとっては、子供のころにCMで見て食べたくなり、親にねだっても買ってもらえなかった憧れの加工食品だった。買ってもらえない理由は、確か値段が高いからだったように記憶している。

筆者の友人にも大ファンがいて、テリヤキ味のミートボールは朝食には欠かせないのだそうだ。ちなみにこの友人の家庭は、朝はパン食である。

この18年間の業績を追ってみると、売上総利益率は4ポイントほど低下しており、販管費が3割程度しか減っていないため、減収にコストカットが追いついていないことが分かる。

数字を見る限り、年商120億円強くらいないと営業損益が黒字化しない計算になるのだが、年商の8割をハンバーグやミートボールなどの食肉加工品に依存し、販売チャネル別では85%をスーパーや量販店に頼る構図は変わっていない。

食品メーカーとしての信念が業績の低迷の原因になっているあたりはいかにも惜しい。財務が健全なうちに、営業黒字転換への実現可能な抜本的施策が打たれることを期待したい。

石井食品の「業績」「財務」「株価」推移
売上高 営業利益 当期
純利益
総資産 純資産 自己資本
比率
期末株価 PER PBR
1996/3 17,408 565 129 15,096 8,630 57.2% 635 89.9 1.4
97/3 16,577 695 104 14,775 8,575 58.0% 392 68.8 0.8
98/3 16,722 345 -98 13,464 8,318 61.8% 315 -58.9 0.7
99/3 16,384 471 76 13,378 8,241 61.6% 289 69.3 0.6
2000/3 14,802 256 94 13,638 8,175 59.9% 295 57.4 0.7
01/3 13,843 -11 -238 13,560 7,819 57.7% 264 -20.4 0.6
02/3 12,427 -15 -233 13,059 7,484 57.3% 215 -16.9 0.5
03/3 12,795 -72 -207 12,228 7,135 58.3% 220 -19.5 0.6
04/3 12,711 -32 -160 11,900 6,987 58.7% 232 -26.6 0.6
05/3 13,038 250 139 11,851 7,002 59.1% 277 36.4 0.7
06/3 13,088 313 186 11,919 7,148 60.0% 371 36.6 1.0
07/3 12,931 305 181 12,324 7,229 58.7% 321 32.5 0.8
08/3 12,383 33 -14 11,368 7,003 61.6% 280 -354.4 0.7
09/3 12,417 286 147 11,347 6,980 61.5% 202 25.2 0.5
10/3 11,131 188 -73 11,035 6,822 61.8% 231 -58.0 0.6
11/3 10,615 -272 -428 10,150 6,236 61.4% 217 -9.3 0.6
12/3 10,554 -394 -684 9,980 5,528 55.4% 196 -5.3 0.7
13/3 10,190 -419 -456 9,196 5,077 55.2% 201 -8.1 0.7
14/3(計) 10,600 150 75
※単位は株価は円、それ以外の金額は百万円。PER,PBRは単位倍で実績ベース。
著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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