取材の現場から 迷走する日産のEV戦略 政府の関心は燃料電池車に

個別 取材の現場から 連載


漠然と報道などを見ていると、日産(7201)のEV(電気自動車)戦略は順調に進んでいるように見える。アメリカでの累計販売台数が3年間で3万5,000台となり、商用EV「e-NV200」の開発も最終段階に進んでいる。10月11日には横浜市と共同で、2人乗りの超小型EV「ニューモビリティコンセプト」を使ったカーシェアリングの実験事業を行う。

着々とEV戦略の駒を進めているように映るが、実際はそうでもない。日産は、ルノーと合わせて2016年度に累計150万台を目標としていたが、7月にやっと10万台を超えた程度にすぎない。そのため、目標を20年度に目標を先送りすると一部で報じられている。

普及が進まない原因として日産は、急速充電器の普及が遅れていることを上げている。しかし、普及が進まないのは、日産の自業自得のところもあるのだ。

「自動車業界は10年にチャデモ協議会という急速充電システムの規格づくりをするコンソーシアムを結成。その後、チャデモチャージという充電サービスを行う会社をつくった。ところが、日産は参加せず、ジャパンチャージネットワークという別会社を立ち上げ、独自に展開を進めた。そのため業界の足並みが乱れ、充電器の普及が滞った」(日産関係者)

日産は昨年、リーフ拡販の専門プロジェクトチーム(PT)を社内に設置した。しかし、「販売は伸びず、成果といえば、政府から充電器設置の補助金1,005億円を勝ち取ったぐらい。PTのメンバーも実績を上げられず、次々と交代している」(前出・関係者)という。

せっかくの補助金も、充電器設置者がいないため、「余ってしまうのではないか」とも言われている。そこで、テコ入れのためPTを志賀COOの直轄事業とし、7月にはトヨタ(7203)ホンダ(7267)三菱(7211)が手を結び、充電器普及に取り組むことを発表した。しかし、具体的な動きは見えてこない。

充電器インフラの普及には、行政の協力も必要となる。EVは経産省の所管だが、バッテリーは自動車課だけでなく、パソコンや携帯電話を所管する情報通信器課もかかわる。業界団体も自動車工業会と電池工業会に分かれる。そのため、なかなか足並みがそろわない。政府も今やEVには関心はなく、燃料電池車(FCV)に目が行っている。

日産が社運を賭けてのEV戦略は、もはや暗礁に乗り上げている。

戻る