特報 T&Cホールディングス ライツオファリングの複雑な背景

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資本不足に陥った根本的な原因は業績不振

T&CHD(3832) 日足6カ月

T&CHD(3832) 日足6カ月

T&Cホールディングス(3832・JQ)が、8月26日、ライツオファリングの実施を発表した。実施内容はかなり複雑なので順を追って説明しよう。

この会社、2013年11月期第2四半期末(今年5月末)時点で5億8,700万円の債務超過。債務超過に陥ったのは前期なので、今期中に解消しないと上場廃止になる。

そこでまず、田中茂樹社長以下、役員や株主、グループ会社などから借りている借入金5億710万円を、1株当たり2万790円のDES(デッドエクイティスワップ)で資本に参入する。

12年11月期末時点での株主、役員、従業員や関係先からの借入金の合計は2億2,556万円だが、その後増えたのだろう。おそらくJASDAQが書かせたのだろう。DES実施のリリースには、DESの対象になる借入金について、誰からいついくら借り、資金使途が何だったのかがこと細かに描かれている。資金使途は人件費だの事務所家賃だの、つまりは日常的な経費である。今年に入ってから急増しており、その額実に2億4,470万円。

一方銀行借入の方は、12年11月末時点でみずほ銀行から2億1,630万円、三菱東京UFJ銀行から5,700万円の合計2億7,330万円あったが、今年5月末時点では1億1,486万円へと1億5,843万円減っている。

このDESの実施で田中社長の保有株数は2,131株から7,106株に増え、議決権割合も7.8%から13.74%に上昇する。

このDES実施時点で、まず発行済み株式総数は2万7,321株から2万4,392株増え、5万1,713株になる。ほぼ倍増だ。

そこへライツオファリングを実施する。新株予約権5万1,713個を割当て、2個で1株分なので、株主全員が権利行使をすれば、最大で2万5,856株の新株が発行され、発行済み株式総数は7万7,569株となり、従前の2.8倍に膨れあがる。

権利行使価格は1株(予約権2個)当たり1万3,000円。株主全員が払い込みをし、権利行使割合が100%になったら3億3,612万円の資金が調達出来るが、発行諸費用で4,000万円も抜かれるので、手取りは2億9,612万円。DESで消し込んだ5億710万円を加えると、8億円程度の資本増強になる。

会社側は今期の業績予想を公表していないが、前期、前々期並みの3-4億円の赤字で着地するとしたら、DESで消し込んだ5億円以外に後2-3億円必要なので、かなり権利行使率が高くないと債務超過解消は難しい。

今回のライツオファリングについては、「闇株新聞」氏が、相当怒っておられる。市場で支えられるはずがない株数が市場に出回り、ライツオファリングなら何でもあり、という悪しき前例になる可能性がある、というのである。

ただ、それ以前の問題として、そもそも誰が権利行使をするのだろうか。この会社は昨年、悪質なブローカーにだまされ、入るはずだった増資資金が入らないという不手際があった。

だが、そもそもこの会社が資本不足に陥った根本的な原因は業績不振だ。リーマン・ショックで日本株の投資情報の販売成績が壊滅的な打撃を受け、08年11月期には早くも営業赤字に転落している。

そこへ持ち分法対象の関係会社の損失が加わって、経常損益段階でさらに赤字が膨らむ。この悪循環を4期続けた結果の資本不足である。

日本株は昨年12月以降回復しているが、既にこの会社、益出しのために投資情報提供部門の大半を売却してしまっており、回復の恩恵は限定的。

経営状態の悪化が鮮明になった11年11月期末時点で、株主数は前期末の682人から903人へと急増している。12年11月期末はさらに増えて955人だ。

06年12月の上場時の初値は72万円だったが、1カ月後には46万円、1年後には12万円に落ちている。

現在の株主の中に、上場当時からの保有者がどのくらい残っているのかは分からないが、この銘柄、既に仕手株化して久しい。

株主が追加の資金を出してこの会社を救う気になるのか。それとも見限るのか。上場廃止=倒産ではないが、今年に入ってからの株主や役職員などからの借入状況を見ると、資金繰り自体が大丈夫なのかといいたくなる。

ライツオファリングとは、つくづく株主の分別、判断に委ねられた制度だと実感せざるを得ない。

ちなみに新株予約権の割当対象株主を確定する基準日は9月18日。新株予約権の上場期間は9月19日から10月31日までで、権利行使期間は11月8日までだ。

T&Cホールディングスの業績推移

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著者紹介 伊藤 歩(いとう あゆみ)
ノンバンク、外資系金融機関など複数の企業で融資、不良債権回収、金融商品の販売を手掛けた経験を持つ金融ジャーナリスト。主な著書に「TOB阻止 完全対応マニュアル」(財界展望新社刊)
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