利便性<安全性 「スタート信用」出足好調

インタビュー


投資家サイドの要望が出発点

佐藤歩執行役員

佐藤歩執行役員

マネックス証券 佐藤歩執行役員に聞く

戦後の東証再開後、現在の信用取引制度が創設されたのは1951年。ドッジ不況による低迷脱却が目的とされるが、その後の相場急騰を踏まえれば、十分に功を奏したと言えるだろう。以来60年余、「期日」を廃した無期限信用(一般信用)の導入や、1日に何度でも売買できる証拠金規制緩和など、制度運用面でさまざまな利便性向上が図られてきたが、それでも個人投資家全体で見れば、信用取引利用者はまだ、ごく一部にとどまっているのが現状だ。こうした状況打破に向けて、従来とは違った新しいアプローチによる信用取引の枠組み「スタート信用」を昨年12月22日から開始したマネックス証券の佐藤歩執行役員(写真)に話を聞いた。

――スタート信用とは。

「従来の信用取引口座とは別に、初心者向けとしてさまざまな制限を設けた信用取引サービスだ。具体的には(1)建玉上限を総額500万円(既存の信用取引口座の上限は10億円)に抑え、(2)信用売りはできず、(3)損切りなどの自動発注サービス『みまもるくん』を口座開設時から設定してもらう」

――制限を設ける代わりに、審査を緩くして口座開設を容易にするのか。

「審査基準を緩和することはなく、通常の信用取引口座開設と同様だ」

――それでは、単に信用取引顧客の利便性が低下するだけではないのか。

「確かに、各種の規制緩和を進めることで間口を広げてきた過去の信用取引の流れからは“逆行”することになるが、これは投資家サイドの要望から生まれたものだ」

――というのは。

「10数年間に寄せられた、都合数千に及ぶ顧客の問い合わせ内容を分析し、ある仮説のもとで、昨秋、アンケート調査を実施したところ、興味深い結果が浮かび上がった。信用取引のイメージとして、『レバレッジが効き過ぎる』25%、『カラ売りはリスクが高い』24%、『ルールが複雑で難しい』28%など。信用取引は魔物、身ぐるみをはがされる、といったところ。こうした内容を反映させたのが前述のサービス内容だ」

口座数は当初想定の3倍

――新サービス導入後の口座開設数の動向は。

「まだ開始後1カ月弱のデータだが、『スタート信用』の新規開設口座数は、通常の信用取引口座を3割方上回っており、当初想定していた約3倍の好スタートとなった。また、両者を合わせれば前年比約2倍増となっており、『スタート信用』分が丸々上乗せされた格好だ。高いリスクを恐れながらも、信用取引そのものには魅力を感じているという、アンケート結果を裏付けている」

――男女比や年齢構成などに特色は出ているか。

「2種類の口座に、大きな違いは見られない」

――導入編の「スタート信用」から“卒業”して、(カラ売りもできる)通常の信用取引口座に移ることも可能なのか。

「もちろんだ。それが1つの狙いでもある」

――このままうまくいくようなら、ほかのネット証券の追随もありそうだ。

「他社のことは分からないが、創業者・松本大の金融哲学の下で進めてきた当社の堅実なサービス内容は顧客の間でも浸透していると思う。信用取引では“後発”とはいえ、そうした当社のブランドイメージと新サービスは、うまくマッチしているのではないか」

――ちなみに、一方では、(スタート信用利用者とは対極でもある)デイトレーダーなどにも、新たなトレードツールの提供を用意しているとか。

「プログラム売買などにも使える優れものだ。著名なトレーダーともコンタクトを取って、開発の最終段階を迎えている。2、3月にはシミュレーション用のアルファ版、春ごろには実践活用できるベータ版を関係者に配布、秋までには一般公開を予定している」(本紙1月30日付1面)

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