新春特別インタビュー 桐谷広人さん(元棋士)に聞く

インタビュー


株主優待で生活することで知られる元将棋棋士(七段)の桐谷広人さん。株式投資の世界に足を踏み入れたきっかけ、優待銘柄に注目するに至った経緯、優待銘柄の魅力、銘柄選定法などを聞いた

終戦直後に出来た東京証券協和会には書道、生花、ダンスなどさまざまな文化教室みたいなものがありまして、日本将棋連盟の仲間から頼まれ私は将棋部の師範に。1979年のことです。

教室のあった東京証券会館(東京都中央区日本橋茅場町)6階には囲碁将棋盤が百面ほどあり、当時としては日本最大級の囲碁・将棋クラブでした。証券マンが昼休みや大引けに将棋や碁などに興じていました。

私が行くときは夕方5時半に集まって、ちらし寿司をパッパと食べて軽く腹ごしらえ。私の周りにカタカナのロの字に将棋盤を並べ20人ぐらいを相手に順番に回りながら一手ずつ打っていく手法で指導しました。将棋は相手が長く考えるとなかなか終わらないもので、時間延長になるのはザラですが、東京証券協和会は午後8時が消灯で守衛さんが見回りに来るので、その点、よかったです。

最初の5年間は株をやりませんでした。株はギャンブルと思っていましたし、証券マンのこともあんまり好きでなかったのです。ただ、当時住んでいた阿佐ケ谷(東京都杉並区)の中央証券に将棋が大好きな最取(さいしゅ)さんという人がいて、時々お茶を飲みながら世間話をするようになりました。そのうち、いつもお茶ばかり飲んで悪いなと思い、中期国債ファンドを200万円分購入して預けました。ただ、向こうは証券マンですから手数料を稼がなければならないし、話をしているうちに親近感が沸いてきたこともあって、ちょっと株を買ってみたのです。それが実に楽しかった。

それからいくつかのバブルとバブル崩壊があり、大損も経験しました。売買依存症になったこともありましたが、株は上がったり下がったりするもので、崩落は安く買えるチャンス。自分はもう年だし、株主優待と配当で十分生活できています。もうけたい、勝ちたいと思いすぎると、肩に力が入りすぎて、自然な動きができなくなります。株式売買も将棋もそうです。

株主優待や配当で選ぶと大損もしにくいですが、大もうけもできません。それでアベノミクスではもうけ損ねましたが、信用取引をすべて清算でき、さらに十分に利が乗っています。今は余っているお金で売買しているから多少負けてもへっちゃら。むしろ下がると安いところを買えるからいい、と思うようになりました。

若い頃、お金に苦労してインスタントラーメンばかりすすった記憶からお金は使うのがもったいなく感じられるのですが、株主優待券だと期限が来るとただの紙切れになってしまうので自然と使うようになります。また、新しい発見があるのもいい。年を取ると家にこもりがちになりますが、株主優待券をきっかけに買い物に行ったり、知り合いを誘って飲みに行ったり、これまで行ったことのない街に足を運んだりと、自分の世界が広がっていくのを感じます。株主優待をきっかけに友だちも増えました。

今は株主優待付き銘柄を四百数十銘柄持ち、それとは別に1日10万円を上限に売買を楽しんでいます。時々、「どのぐらい株を保有すると、株主優待で生活できるのでしょう」と聞かれるのですが、私と同じようにたくさんの株主優待付き銘柄を保有している方に聞いてみても、だいたい3,000万円以上を株主優待付き銘柄に分散投資されているようです。3,000万円で利回り5%とすると年150万円。月額で12万5,000円となります。ただ、アベノミクスで株が上がったので、今は利回り4%程度を目安にされた方がいいように思います。

私は「お金の生かし方を世の中の人に伝えたい」と思い、いろいろなところでお話をさせていただいております。私の経験がお役に立てれば幸いです。

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