新春特別インタビュー GPIF運用委員会・米澤康博委員長に聞く 高値づかみ避け、株買い進める

インタビュー


スマートベータ運用シフトへ

米澤康博委員長

米澤康博委員長

昨年の株式市場で大きな話題を集めたGPIF(年金積立金管理運用独立行政邦人)。運用資産130兆円を擁する“世界最大の機関投資家”だが、その実相は関係者を含め、なお誤解されている部分も少なくないのが現状だ。昨年10月末の基本ポートフォリオ見直しなどで主導的な役割を果たした運用委員会の米澤康博委員長(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授=写真)に話を聞いた。

――GPIFにおける運用委員会の位置付けは、どうなっているのか。

「法律的には、『全権を握る理事長の諮問機関』という位置付けだが、先の基本ポートフォリオ見直しも含め、運用委員会の決定は、実質的にほぼ最終決定として取り扱われており、企業で言えば『取締役会』に相当する機関と考えていい」

――新ポートフォリオでは国内株式と外国株式が各25%と、従来の各12%から大幅に引き上げられ、「安倍政権のPKO(株価維持策)」といった声も聞かれたが…。

「将来の年金受給者のために『これしかない』という選択をした。一番のポイントは、遅かれ早かれインフレによる金利上昇が避けられず、国債中心の運用ではキャピタルロスが生じることだ。大手銀行にしても国債保有を減らしている。従来の資産構成では、年金財政上から要請される運用目標(賃金上昇率+1.7%)に対して安定的に負け続けるだけ。リスクを取りながら、勝っていく道を選んだのが、今回のポートフォリオだ」

――途中経過の段階で、メディア報道を通じて内容が漏れ伝わってきたのは、情報管理面での問題があるのではないか。

「例えば6月上旬の日本経済新聞に掲載された私のインタビュー記事でも、『8月に発表する可能性』『日本株の基本比率20%』などの数字が出たが、『20%』と言ったつもりは全くない。そもそも6月3日の財政検証結果発表を受けて計算が始まったばかりで、具体的な数字は誰も持っていなかった。その後の報道では、いつの間にか『20%』が『20%台半ば』に変わったりもしたが、大体において計算結果が出てくる前に報道されており、従ってわれわれとは全く関係はない。もちろん、算出後、これらは最大限の機密事項として取り扱ってきた」

――みずほ証券レポートによると、11月の同証券セミナーで、新基本ポートフォリオの乖離(かいり)許容幅内への移行期間は「1年に近いイメージ」と発言されたとか。

「質疑応答の場で5年か1年かと問われ、『5年もかからないだろう』と申し上げた。そもそも、国内債券以外の3資産は9月末時点で、既に新ポートフォリオの乖離許容幅(国内株式なら25%プラスマイナス9%)の範囲内にある」

――国内株式は、まだ下限に近い水準にあるが、“中心線”に到達するのはいつごろになるのか。

「できるだけ早く行うことが今後の課題ではあるが、極力、高値づかみとなることのないように実施していきたい」

――昨年11月に提出された有識者会議の最終報告書で、アクティブ運用重視がうたわれたものの、その後、逆にパッシブ比率が上昇しているが。

「有識者会議の提言はほとんど受け入れてきたが、唯一の例外がこれ。アクティブ運用は高コストがネックとなる。むしろ今後はアクティブを減らして、スマートベータ型の運用にシフトしていくことになるだろう」

オルタナティブにも本腰

――インフラ、プライベートエクイティ(PE)や不動産などのオルタナティブ(代替)資産による運用はどうなるか。

「例えば日本のPEは『国内株式』、海外のインフラ投資は『外国債券』など、既存の4資産区分に含めながら、合計で資産全体の5%を上限に、これから徐々に投資していく。そのためにも、こうした資産の特性についての知識や運用ノウハウを持つ人材の確保が重要となる。運用委員会では現在、GPIF内のガバナンス強化に向け重点的に取り組んでいるが、年末で一区切りつけば、次はオルタナティブ運用問題に本格的に取り組んでいきたい」

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