特別インタビュー 真のグローバル企業に注目を グローバルマネジメント研究所 福住俊男・代表取締役社長

インタビュー


グローバルマネジメント研究所 福住俊男・代表取締役社長

福住俊男氏

企業には“脱皮”の努力が必要

■グローバル企業に着目する理由

「長年、コンサルタントとして日本企業を見てきて、『日本企業はグローバル市場で製品力と販売力で勝負をしているが、本当にそれで勝てるのか、勝ち続けることができるか』と疑問を持っていた。日本企業が強いと言われている分野においても、中国・韓国・インドといった新興国企業がどんどん力を付けてきている。どうすればグローバル市場でもっと競争力のある企業になれるのか。やはり、グローバル全体の最適を追求する『真のグローバル企業』になることが必要なのではないだろうか」

■海外展開する日本企業の99%は「真のグローバル企業」にあらず

「海外展開は(1)商社を使った製品輸出、(2)販売代理店の活用、(3)販社の設立④工場の設立⑤研究開発拠点の設立――といった段階を経ている。基本的にすべての海外拠点に日本人が駐在し、とことん収益性を追求し、拠点別部分最適を追求した結果を連結する『連結グループ経営』が一般的。その意味で海外展開している日本企業は多いが、上場企業の99%は、海外に足掛かりを作り、本社の指示の下、単月黒字化を目指す『国際企業』、または、人・物・金・情報をある程度現地で調達し独立採算で分権化する『多国籍企業』のどちらかにとどまっている。“真のグローバル企業”の域に達している日本企業は極めて少ない」

■真のグローバル企業とは

「グローバル企業の要件は、『国・地域別、顧客別に少しずつ違うニーズに応える製品やサービスをタイミングよく効率的に作り出し、それぞれの国・地域、顧客のニーズに見合った価格で提供できるよう経営を行う』ことであり、世界中のローカルの局地戦をグローバル・ベストのテクノロジーやナレッジを使ってことごとく制する企業が、グローバルに競争力のある企業といえる。よって真のグローバル企業とは、『最適な経営資源をグローバルに求め、活用し、グローバル最適を追求するために、グローバル市場の中で統一された経営理念、ビジョン、コア・バリュー、経営方針を基盤として、製品やサービスを提供する企業』と考える。一言で言うと、『グローバルに1つの企業のような経営をしている企業』といえる」

■真のグローバル企業になるには

「日本には良い製品、高い技術を持つ企業が多いが、その多くは個人の頑張りにより今まで成長してきた。ナレッジや経験値が個人的なものにとどまり、企業として体系化し組織的な仕組みを確立してビジネスをしている企業はまだ少ない。日本だけで展開するなら属人的な手法もある程度通用し、現場の創意工夫でなんとかできようが、異なる文化や考えを持つ海外ではそれは通用しない」

「真のグローバル企業になるには、国内外の拠点をまたいで業務別のチームを作り、グローバルに自分たちのベストのノウハウを“見える化”して共有するとともに、自分たちの共通の目標を設定し、その目標達成度合いを測定する基準作りが欠かせない。少なくとも、『業務別KPI(重要業績評価指標)』はグローバルに統一したい。こうしたグローバルチームがうまく機能するためには人事のグローバル化も欠かせない。真のグローバル企業に脱皮するのは大変なことではあるが、真のグローバル企業になれば、長期的により競争力のある企業になれると考えている」

■投資家もグローバル企業を見極めて投資を

「グローバル化を中期計画でうたう企業は多いが、そこでいうところのグローバル化は単に海外拠点を作ることを指しているケースが少なくない。海外に拠点や工場を持っていても、日本企業や日本人を相手にビジネスをしているケースも多い。海外拠点で日本企業以外の顧客企業をどれだけ開拓できているか、グローバルに戦える組織的仕組みができているか、人事のグローバル化ができているかなど、投資家も投資先企業が真のグローバル企業になれるかどうかを見抜いて投資してほしいと思っている」

■「多国籍企業」と「グローバル企業」の例

「多国籍企業は、トヨタ(7203)ホンダ(7267)ソニー(6758)パナソニック(6752)日立製作所(6501)NTTデータ(9613)など。一方、グローバル企業と思われるのは、カルロス・ゴーン会長兼社長によって変わった日産自(7201)、グローバル共通な人事制度を導入している旭硝子(5201)、欧米企業ではGE、HP、マイクロソフト、デル、P&G、アクセンチュア、BMW、ネスレなどだ。グローバル共通の人事制度の確立はとても大切。欧米のグローバル企業では当たり前のように導入されている」

「今は多国籍企業に分類されるが、真のグローバル企業を目指して努力をしている企業が増えてきた。日立製作所、ファーストリテイリング(9983)楽天(4755)などだ。日立製作所は、鉄道システム事業のグローバル本社を需要地である欧州のロンドンに移し、IT事業の本社機能の一部を最先端の技術が集まる米シリコンバレーに置いている。需要地に本社を置くのは企業経営として合理的で適切と考える。人事制度改革にも取り組んでおり、注目している」

【福住俊男氏略歴】
1975年、アクセンチュアに入所し、コンサルタントとして活躍。87年、パートナーに。コンサルティング方法論の開発やナレッジ共有の仕組み作りにもかかわる。01年に退職。慶応大学SFC研究所訪問研究員として企業のグローバル最適な経営のあり方の調査研究を行うなど多方面で活躍。05年、グローバルマネジメント研究所設立。
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