新興市場 明日の日本経済を支える新興企業が集結 東証証券取引所 村田雅幸・執行役員に聞く

インタビュー


村田雅幸氏

村田雅幸氏

東証は昨夏実施した東証・大証の現物市場統合により、マザーズ、JASDAQという2つの新興市場を運営している。それぞれの市場の特徴、新興企業投資の魅力などを、東京証券取引所の村田雅幸・執行役員に聞いた。

経営スタンスで市場すみ分け

――マザーズ市場、JASDAQ市場にはそれぞれどういった特徴があるのでしょうか。

「マザーズは、『マザーズ上場から10年内に東証1部にステップアップするためのマーケット』というコンセプトがあり、速やかな東証1部昇格を目指す企業に適したマーケットとなっている。近年は早期のステップアップを狙い、マザーズを選択する企業が増えてきている」

「JASDAQは、旧店頭市場から発展したマーケットで、多様な業態・成長段階の企業が上場している。米NASDAQにアップル、グーグルがいまもなお上場しているようにNASDAQは“エンドマーケット”となっており、JASDAQもNASDAQのような“エンドマーケット”の性格を併せ持っている。もちろんJASDAQから東証1・2部にステップアップすることもでき、そのタイミングは各社の判断に委ねられている。『自社のペースで、自社の時間軸で、前進したい』と考える企業に適したマーケットといえる」

「このように大枠のコンセプトにすみ分けが出来ているが、JASDAQ・グロースについては、上場から10年内に営業利益を確保できなければ上場廃止基準に抵触するなど、一定の期間内で一定の成果を挙げることが求められる市場という意味で、マザーズとJASDAQ・グロースは似ていることから、将来的にどのような市場の構成が望ましいのかについて内部で検討を始めているところだ」

新風吹き込む企業多数

――新興企業の特徴、投資の魅力とは。

「特徴としては、大企業のように多角化しておらず、ニッチな分野やユニークな事業に特化している企業が多いことが挙げられる。事業環境の変化が目まぐるしい一方、事業内容が“シンプル”ということは、業績を左右する要因やリスクもある程度分かりやすいといえる」

「利用者が『あったらいいな』と思うサービスをタイムリーに提供して新市場を開拓している企業、消費者目線でサービスを提供して既存市場に切り込んでいる企業――と、それぞれの立場で新風を吹き込んでいる企業が多い。また、ベンチャー・中堅企業ならではの機動性を生かして事業展開することで、あっという間に大きく成長する企業も存在する。経営者の経営理念や個性が事業に反映されやすく、経営者と投資家の距離が比較的近いことも特徴の1つ」

「投資先を見極めることが大切。“これは”と思う企業を探し、その企業の成長を見守り、成長の成果を分かち合う――こんな投資をできるだけ多くの人に体験していただけたら幸いだ」

「年間IPO100社時代」の到来近い

IPO社数の推移

IPO社数の推移

――2014年のIPO(新規上場)展望。

「数年前は閉塞(へいそく)感が漂っていたが、一昨年あたりから企業業績が改善し、市場ムードも改善。ベンチャー経営者の間でも、IPOは有効な経営戦略と再認識されている。IPO社数は09年を底に順調に増えており、市場関係者間では、今年のIPO社数を年70社程度と予想する向きが多い。また、本年IPO第1号のアキュセラ・インクのようにグローバルでの活躍が期待されるベンチャーも出てきている。日本のポテンシャルを考えれば、近いうちに『年間IPO100社時代』の再来も現実味を帯びてきた」

「振り返ると、2000年前後に景気低迷を打破し、産業空洞化の回避、国内雇用の増大、新たな成長産業創出に向けて、国はベンチャー育成を重要課題として明確に位置付け、証券市場でも新興市場の創設・整備が進んだ。当時株式を上場した企業には、全上場会社の中でも時価総額上位に位置し、事業の国際化、雇用の増大に寄与した企業も存在する。今後、新興市場に上場する企業からも、10-20年後、世界で収益を上げ、時価総額も数千億―数兆円規模に拡大し、日本を代表する企業に成長するところが出てこよう」

企業成長を分かち合う投資を

――今後の課題。

「ここもとのIPO社数の回復は、国や経済界が数々のベンチャー育成支援策を講じてきたことが背景にある。制度面の改善は随分と進んだものの、米国シリコンバレーに象徴されるような『ベンチャーを生み育てる土壌』『世界的なメガベンチャーの輩出』の点では、日本はまだまだ見劣りしている。IPOのすそ野を広げると同時に、メガベンチャーの輩出率を高める土壌づくりが必要と考える」

「そのための課題は大きく2つ。1つは『成功の循環モデルの確立』。IPOで成長が止まったり、リタイヤしてしまうのではなく、事業成功者が若いベンチャーをサポートし、さらに成長を促進させるといった、いわゆる“エコシステム”の中で取引所も役割を果たしていきたい。もう1つは中長期の投資スタイルの定着。IPO銘柄の初値が象徴的だが、『企業価値』ではなく『株価』に投資するきらいが見受けられる。企業や経営者などを見て、本来の企業価値から投資判断し、中長期で保有する投資家がさらに増えれば、証券市場はさらに良いものになると思う」

――最後にマザーズ、JASDAQのあり方についてうかがいたい。昨夏の現物市場の統合を終え、次は運営している2つの新興市場をどのようにしていくのかも課題に挙がる。

「どのようにしていくとよいか、まさに検討しているところ。現在は、上場企業、証券会社、個人投資家、機関投資家などの声を幅広く集めている段階にある。市場の枠組みをシンプルにすべきという声がある一方で、マザーズとJASDAQなど既に定着もしており、選択肢があった方が良いなどさまざまな考えがある。どういった理念やミッションでIPOを活性化させ、市場を運営していくのかについては、日本取引所グループの経営の柱の1つであるので、しっかりと検討していきたい」

村田雅幸(むらた・まさゆき)氏のプロフィール
1991年大阪証券取引所に入社、その後デリバティブ部門、上場審査部門を経て、広報部長、東京支社長、執行役員を歴任。東証・大証の統合後、2013年東京証券取引所執行役員に就任、上場推進担当。2000年経済産業省中小企業診断士に登録。
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