ホンネで迫る!! ブラインドインタビュー バランスシートは「関係者一覧表」

インタビュー


セクターで異なる“化粧方法”

企業の財布を掌握する財務担当者。彼らの目に機関投資家や市場はどう映っているのだろうか。

財務担当者A「企業に増配や自社株買い、ROE(自己資本利益率)改善を要求するのが、機関投資家の間で流行っているが、すべての要求はのめない。もちろん株主は大切だが、数あるステークホルダー(利害関係者)の1つ。株主にばかり目を向けると、企業活動にひずみが出てくる」

財務担当者B「うちは機関投資家の要求を上手にいなすことができず、設備投資のためにとっておいたお金の一部を泣く泣く増配に充てた。工場を建てたいが、いい候補地が見つからなくてね。それで現預金が高水準になっていたが、機関投資家には金余りとしか映らないようだね」

財務担当者C「時々起こる工場爆発や不良品の回収騒ぎの中には、機関投資家の要求に応えようとして、やるべき設備投資がおろそかになっていたり、無理なコストカットが原因だったケースもあるようだ」

財務担当者A「機関投資家には、『バランスシートの勘定科目をよく見てくれ』と言いたい。仕入れと販売の両方の取引先、社員、役員、銀行、リース会社、修理業者、倉庫・ビルなどの家主、地元、国や自治体などの税金徴収者などにまつわる数値が記され、株主にかかわる勘定科目は一部にすぎないことがよく分かるはず」

財務担当者B「取引先は『売掛金』『買掛金および支払手形』、社員は『退職給付引当金』、銀行は『短期借入金』『長期借入金』に出てくる。『買掛金および支払手形』は場合によっては公取委なども関係者になる。支払いサイトが延びるのは良さそうなことだけど、下請けいじめにつながり、公取委が目をつけるからね」

財務担当者C「地元は『建物および構築物』『土地』に絡む。田舎に行けば行くほど地縁が強くなり、そう簡単には土地は売れないもの。修理業者は『建物および構築物』や『機械装置および運搬具』の関係者になる」

財務担当者A「まさにバランスシートは『企業の関係者一覧』。どれが欠けても会社は成り立たない」

財務担当者B「バランスシートに、損益計算書、キャッシュフロー計算書を加えた財務3表を眺めると、企業のさまざまなことが見えてくるから面白い」

財務担当者C「他社の分析はね(笑)セクターごとに“化粧方法”も違うようだ」

財務担当者A「例えば外食の上場企業でよくあるのは、副業で卸業を展開するケース。四半期末や期末に近づくと、計画未達分を埋めるため、知り合いが経営する非上場の外食店に高く食材を売りつけて、利益をかさ上げしてその場をしのぐ。苦しいときに食材を買ってもらったお礼に、知り合いの外食店が新たに出店するときにツバをつけていた好立地の店を譲る、ほかの卸よりも支払いサイトを長くする、というのは古典的な手法だね」

財務担当者B「非連結の子会社、いうことを聞く会社、社長の資産管理会社などを使って、お化粧している上場企業も業種を問わず結構多いね。その手の会社は経営が悪くなると、不良在庫の買取会社に化けたり、利益が必要以上に出ると利益調整弁になったりする。監査法人は非連結会社をそれほど見ない。連結から外れれば、ごまかしに使える」

財務担当者C「お化粧は必ずしも悪ではないが、化けの皮がはがれると、業績が目に見えて悪化することも多いから注意したい。1つ言えるのは、売上高の増減や為替変動などの外部環境の変化にもかかわらず、同業と比べて利益率が常に一定の会社や、表面上の利益がトントンの会社は“厚化粧”を疑った方がいい」

財務担当者A「減価償却の方法(定額法、定率法)、のれん償却をどうするのかなどで財務3表は大きく変わってしまう。つまり、財務3表はあくまでも、『この方法で決算を行ったら、こうだった』という結果を表しているのにすぎない。これをもとに細かな指標を計算して株価を予想しても、当たらない、と考えるのが自然なんじゃないかな」

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