どうなる?「消費増税」の行方 増税停止には法改正必要

概況


8月“3点セット”で地ならし進む 財政出動が落としどころに

このところ、消費税率引き上げを巡る話題が市場をにぎわしているが、その行方や、最終決定に至るスケジュール面などについて、ここで整理してみたい。

安倍晋三首相は参院選勝利の翌22日、来年4月に予定される消費税率引き上げ(まず5%→8%、続く来年10月に10%へ)について、「今年4月から6月の経済指標などを踏まえ、経済情勢をしっかり見極めながら秋に判断を行う」との方針を示している。ここで言及された「4月から6月の経済指標」といえば、8月12日発表予定の4-6月のGDP(国内総生産)1次速報値が代表格ということになる。このGDPについては、麻生太郎副総理も、23日の会見で「1つの参考になることは間違いないと思う」と語っている。

なお、安倍首相がかねて「秋口に判断する」としている判断時期について、当初、10月上旬程度とみられていたが、9月5、6日に開催されるG20(主要20カ国)サミット前後に前倒しされるとの見方も強まりつつあるようだ。

最近、話題を呼んでいるのは、安倍首相のブレーンとされる浜田宏一官房参与(米エール大学名誉教授)ら首相周辺で、個人消費などへの影響を考慮して「(税率上げは)慎重に判断すべき」、といった声が勢いを増してきた点だ。増税時期の先送りや、税率を小刻みにする緩衝策など具体的な提案も浮上。これに対抗する形で、税率上げに前向きな麻生副総理周辺からは、5兆円規模の財政支出や日銀の追加緩和策とセットで、といった動きも生じている。

果たして、消費税率引き上げは実施されるのか、されないのか…。

とはいえ、こうした一連の議論について「大きな誤解がある」と語るのが、目下売り出し中の財務省出身エコノミストでSMBC日興証券の宮前耕也エコノミストだ。

そもそも、消費税法改正法の附則第18条第1項で「名目3%・実質2%成長」が掲げられ、第3項は「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と、実質的な景気条項。

首相の判断いかんでは、この条文をもって税率上げの施行停止が発動されると思われがちだが、実はそうではないらしい。消費税増税の凍結法案の可決・成立といった、別途法律上の措置が講じられない限り、10%までの増税が自動的に実施されるという。日本が租税法律主義を採っているためだ。

「名目3%・実質2%」についても、あくまでも中期的な努力目標であって、いわゆる“トリガー条項”ではないとされる。宮前氏によると、条文にある「施行の停止を含め」の「を含め」の部分が、いわゆる“霞が関文学”の1つで、暗に「増税を停止しない代わりに景気対策を行う」といったニュアンスもにじませているのだとか。

それでは、宮前氏はどうみているのか。「3党合意に基づく税率上げは野党の合意を得ており、しかも、向こう3年間は国政選挙が行われない見通し。実施環境がこれだけ整っていて、仮に一部でも先送りすることになれば、日本の担税力に疑念が生じ、長期金利が急騰する可能性が高い。日本国債については、『国内機関投資家が買うから金利が低い』と見なされがちだが、彼らも安心感があるから買っているので、状況が変われば、その限りではない。税率上げを見直すためには9月か10月の法改正が不可欠だが、その前に閣議決定を行っても、それ自体は法的には全く意味がない。下手をしたら、『長期金利急騰を受け、慌てて閣議決定撤回』といった、格好の悪い事態にさえ、なりかねない。とはいえ、8月に入れば、増税への地ならしが急速に進むはず。まず9日に、6月末時点の『国債及び借入金現在高』が発表され、いわば国の借金が1,000兆円を超えることが明らかになる。続く12日が4-6月期GDP。今度は景気回復局面にあることが確認されることになろう。さらに夏場以降、中期財政見通しが策定され、骨太方針の具体策が決まる。これらによって、財政の厳しさと景気の底堅さが印象付けられ、財務省サイドによる環境整備が進むタイミングにある」という。

1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられた際の経済・相場動向なども今後、あらためて解説していきたいが、ともあれ、今秋の税率上げ決定については、当面、(下手な期待感は持たず)所与の条件として受け止めておいた方が無難のようだ。

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