どう読む「新政権の経済政策」 真贋見極める3視点「TPP」「日中」「エネルギー」

概況


焦点の総選挙を前に、残すは1営業日のみ。ここまでは「解散日から投票日までは高い」のジンクスを地で行くような展開をたどってきたが、とかく、期待の後には失望が付き物だ。市場筋の描く、「自由民主党大勝↓脱デフレ・成長戦略推進↓一段の株高」シナリオに“死角”はないか。大和証券は12日、「来るべき新政権の経済政策と株式市場」と題するメディア向け勉強会を開催。「安倍晋三政権」誕生を視野に、高橋卓也日本株シニアストラテジストと守田誠ストラテジストは以下のように語った。

高橋卓也日本株シニアストラテジスト

高橋卓也氏

高橋卓也氏

総選挙で比較第一党となる可能性が強い自民党の安倍総裁は、金融緩和に関する当初の刺激的発言から次第にトーンを落としており、具体的な政策実現の可能性は不確かながら、自民党中心の政権になれば、日銀にとって“プレッシャー”となることは間違いない。

2000年以降の歴代政権で、就任時から在任中の高値までの上昇率を見ると、第1次安倍政権は△13%と、小泉政権に次いで高く、少なくとも市場にとって「安倍首相」に悪い印象はない。「5年間の集中改革」など(中身はともかく)成長をイメージさせる戦略を前面に打ち出したことが、日本の事情にそれほど詳しくない外国人にも期待をもたらしている。

16日投開票後の出尽くし感を指摘する向きは少なくない。とはいえ、(1)自民・公明で過半数を占め、速やかに連立政権発足(2)脱デフレや構造改革をイメージしやすい組閣(3)19、20日か、来年1月の日銀会合で、従来より緩和姿勢を強めるスタンスが示される――などの条件がそろえば、調整は短期間にとどまろう。

自民党の政策で、「国土強靭化」は、谷垣前総裁時代とは違って、成長戦略に位置付けたことに特徴があるが、これはあくまでもカンフル剤であって、潜在成長率を高めることが“本筋”だ。

5年間の集中改革」についても、規制緩和の中身は、雲をつかむような抽象表現にとどまる。成長戦略も、ICT(情報通信技術)など具体例を挙げてはいるが、総論的なところが多い。

新政権の成長戦略を見極める上で、以下の3点が重要。「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のよってアジアの成長を取り込めるか」「日中関係の改善」「エネルギーコストの抑制」だ。原発再稼働の道が遠いのは事実であり、LNG(液化天然ガス)火力のコスト削減は急務。北米シェールガス革命の恩恵を取り入れることができるかがカギ。なお、「安倍首相」の関心が、国民のニーズが高い経済分野にとどまるかどうかも注視しておきたい。憲法改正など政治的に保守色の強い政策に傾斜すると、経済改革の比重が低下し、日中関係がさらにこじれるリスクも伴う。

守田誠ストラテジスト

守田誠氏

守田誠氏

足元の企業業績動向は厳しい。当社ではこのほど、新政権の政策期待を織り込まない前提で、今来期の収益見通し(主要200社ベース)を、前四半期に続いて引き下げた(今3月期経常利益で△16.9%→△6.9%)。下期については、なお若干の下ブレ余地を残す。自民党が政権公約に掲げた政策が実現した場合の企業業績に及ぼす影響にはアナリストも関心を寄せるが、具体的な試算は非常に難しい。

最もインパクトがあるのは円安(大胆な金融緩和でデフレ・円高からの脱却)だろう。1円の円安は1%程度の経常増益要因となるため(電力・ガスを除く、含めれば0.8%の増益要因)。

個別で、円安によるプラスの影響が大きい企業を試算したところ、商船三井(9104)、シャープ(6753)、森精機(6141)となった。直接的には、国内生産比率や輸出比率の高い機械、精密などのメリットが大きくなるが、円安は日本企業全般の輸出競争力を高め、例えば国内で製造業向けに部材供給する素材企業など恩恵は広範囲に及ぶ。また対ウォンでの円安が進めば、新日鉄住金(5401)などの優位性が高まる。

復興加速と国土強靭化も関連産業に大きなプラス効果をもたらす。特に国内主体で関連事業の比重が高い企業としては、大成建設(1801)、大林組(1802)、鹿島(1812)のゼネコン3社と、太平洋セメント(5233)、住友大阪セメント(5232)のセメント2社が挙げられる。また、デフレ・円高脱却を進めることで、経済成長重視の政策が実を結ぶことになれば、輸出関連のみならず、不動産やREIT(不動産投信)への追い風も強まるはずだ。

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