東証REIT指数 「長期金利プラス300ベーシスポイント」が一応の評価基準 J-REIT相場の現状と当面の見通し

REIT 概況


当初想定より急な金利上昇で1,400-1,500が取りあえずの目安

みずほ証券 チーフ不動産アナリスト 石澤卓志氏

みずほ証券チーフ不動産アナリスト
石澤卓志氏

みずほ証券 チーフ不動産アナリスト 石澤卓志氏に聞く

J-REIT(不動産投信、以下REIT)への関心が高まっている。キャピタル・ゲイン(値上がり益)狙いもあるが、やはりインカム・ゲイン(配当収入)に着目した安定志向ニーズが強い。上昇傾向を強めていた株式相場がここにきてにわかに不安定さを増しているが、REIT相場はどう推移するのか、みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏にマーケットの現状と今後の見通しなどを聞いた。

■東証REIT指数の見通し

株式相場はこのところ値動きが荒い。REITは、短期的な振れはもちろんあるが、中長期的には思ったほど変わっていない。上がっても下がっても、結果的には長期金利プラス300ベーシスポイント、3%ぐらいのスプレッドが取れるような水準で投資口価格(株価)が形成されている。短期的な値動きはあるが、ある程度期間を区切ってみてみると、意外と変わっていないというのが実態だ。REITは配当利回りの水準で評価している投資家が非常に多く、結果からすると落ち着いた推移となっていると考えている。ただし想定外なのは、長期金利の上昇がこちらの想定より早かった。その点で、REIT価格の下げのスピードがやや早まる可能性がある。

4月前半に不動産専門誌がREITセクターのアナリストに東証REIT指数の見通しについてアンケートを行った。当時相場は上昇傾向がかなり強かったという環境も影響して回答した6人のうちほとんどが先行きに対して強気の見方で、今年年末は2,000ポイント前後を予想、私のみ慎重な見通しで1,400-1,500とお答えした。REIT自体は成長性より安定性を重視する投資家が多く購入し、利回りを中心に評価している。先ほど申し上げた「長期金利プラス300ベーシスポイント」、これが一応評価の基準といえる。短期的な振れを考えると250ベーシスポイントから350ベーシスポイントの間と考えている。その当時、長期金利は徐々に上昇していくと予想していた。当社のマクロ班の見通しでは、長期金利は、今年前半が0.5-0.7%、今年後半が0.7-0.9%、来年春で0.8-0.95%、上がってはいくが、1%までは至らないだろうという見積もりを立てていたが、ここにきて一時1%を超えた。金利が大きく振れたのは、こちらの想定外だった。結果的に、東証REIT指数は当初見込んでいた水準になってきているが、金利の上昇が当初想定よりかなり急だったことで、1,400-1,500が取りあえずの目安になってくると考えている。ただし、金利が上昇するのは、REITにとっては確かにマイナス要因だが、REITの本業である不動産賃貸業には、収益面でそう大きな変化はない。むしろ、今後は不動産の市況も良くなって不動産賃貸事業もおおむね堅調、場合によっては若干の増配が期待できるという状況にある。

■地銀などの需要が下支え

今年は特にREITに投資している投資家の方々のうち地方銀行がREIT投資枠を増やす方針を示している。当社はもともと法人の取引先、特に金融機関が多いが、当社が接している限りでは、ほとんどの金融機関が今年はREITの運用枠を増やす予定だ。地方銀行は、それぞれの地域経済が不振で、貸し出しが伸びず、預貸率がかなり低くなっているところが多い。一方で、REITの運用は業務純益に入るため、金融機関からすると融資に代わる運用先としてREITを非常に有望視している。リート相場が乱高下していた時には投資を敬遠する向きもあったが、特に昨年12月後半以降、自民党に政権交代してから、不動産関連についてかなりポジティブな見通しが強くなってきている。また、日銀のREITマーケットを支える姿勢もあって、多くの国内金融機関が今年はREIT投資を増やすとの方針を示している。

REITの収益自体はおそらく堅調に推移すると予想している。投資家の需要自体も拡大してくる。REITの価格が暴落する可能性は低いのではないか。金利上昇というマイナスの部分はREITの投資家の需要増加という部分でかなりカバーすることができることで、結果的に、REITは、先ほど申し上げた「長期金利プラス300ベーシスポイント」を目安として株価が形成されてくると考えられる。

■懸念要因

いくつか懸念要因もないわけではない。4月初めの段階では、東証REIT指数は上昇し2,000ポイントを超えるとの見方が多かったが、REITはまだ時価総額が小さいことで、短期筋に狙われやすいといった傾向にある。ただ当社の取引先にはヘッジファンドのお客さまも多いが、REITマーケットのことをよく知っている方は、2006年11月から2007年5月にかけて、REITの価格が暴騰して、その後暴落したことを苦い経験としてとらえており、REITの暴騰・暴落を好まない傾向が、ヘッジファンドの側にある。

ということを考えると、おそらく短期筋などがREITマーケットを狙って何かやってくることはそれほど多くはないのではないかと考えている。結果的に、比較的落ち着いた水準、もちろん日々の値動きには結構荒っぽい場面もあるが、平均して、中期的に見ると意外と変わっていない、そういう状況にあるのではないかとみている。

■外国人投資家の関心強い

外国人投資家はREITへの関心は非常に強いようだ。ちょっと極端な言い方をすると、今、日本という国は、世界で珍しく、まともに稼げる国になった。これはほかの国が落ち込んでいるからだ。ヨーロッパは、欧州債務問題で不安定な状況、ロンドンは欧州債務問題の対象外と考えがちだが、不動産に関しては、ロンドンの商業用不動産のほとんどは保険会社と機関投資家が持っているため、金融市場が悪化するとロンドンの不動産価格に影響してくる可能性がある。アメリカは、現在、住宅のマーケットが回復傾向というのが一般の論調だが、実際のところサブプライムローン問題が深刻化して以降、構造的な問題に手が付けられていない。現在の状況は、一時相当悪くなったのが戻ってきているという循環的な要素が非常に大きく、構造的な問題が改善したから良くなっているという状況ではないだろうと考えている。アメリカの不動産関係の市況もまだまだ予断できないところが多い。一方で、アジアの新興国はどうか。一時、日本の不動産が割高になった際に、アジアの新興国に投資先を求めた方が結構いたが、例えば、インドのムンバイが注目されたが、実際はインフラがほとんど整っていないため、投資できる状況にはないという。タイは数年前に政変があった。中国は不動産バブルで過大評価と言われている。シンガポールは国が優秀で、投資マーケットをきちんと統制している。日本は割と自由なため、大儲けはできなくとも、きちんと稼げる国になっていることで、日本の不動産、REITに対して非常に注目している投資家が多い。海外の短期資金が流入しているのも、こうした背景もある。現在は価格が比較的安定しているが、短期資金がさらに入ると乱高下する可能性もある。ただし、海外の投資家は日本のREITに対しては安定運用を志向しているところが多いだけに、そうかく乱要因にはならないとみている。

昨年来REITの新規上場が増えているが、昨年12月はシンガポールの政府系ファンドをスポンサーとするGLP投資法人、今年2月にはアメリカ最大の物流施設専門ファンドをスポンサーとする日本プロロジスリート投資法人が新規上場した。これらはともに外国投資家の需要が強く、当初の想定よりも海外の募集比率を高めた。外国投資家が日本の不動産に対してかなり期待しているようだ。もっとも、日本選好はあくまで消去法的なものであり、興味はあるが、過度な期待とはなっていないもよう。また、REITのスポンサーに海外のファンドがなっている例はあるが、ほとんどが短期的に売買して儲けようというものではなく、いずれも安定的・中長期的な資産価値の拡大を志向している。

■日銀への期待

最近の日銀金融政策決定会合で、日銀がREIT購入枠の追加措置を決定しなかったことがマーケットの失望感を呼んだ。日銀はREITを購入しているが、今年末までの購入枠1,400億円のほとんどを既に消化している。残りが30億円しかない。日銀の立場からすると状況いかんにかかわらず、REITマーケットを支援する姿勢を示したいと考えているのだろう。来年末まで購入枠は1,700億円となっている。これを前倒しで投資できるようにしてくるのではないかと予想している。またREIT購入には要件がついており、格付けがダブルA格以上、取引の実績が200日以上なければならない。この要件について、格付けはシングルAまで引き下げ、取引の実績が200日以上は撤廃する可能性がある。日銀は「5%ルール」の範囲内でJ-REITを購入しているらしいが、かなりの銘柄が4%台まで投資比率が上がって、購入しにくくなっている。こうした措置が取られれば、中堅どころのREITが買いやすくなる。昨年上場して200日ルールを満たしていない新規上場銘柄も買いの対象になって投資の幅が広がる。このように日銀の姿勢が明らかになると国内の金融機関が追随して、買いやすくなってくるとみている。上位REITから中堅どころ、下位の銘柄へと買いが波及、REIT相場の底上げにつながると予想される。

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