徹底選別!「円安メリット株」 各社が注目株リスト作成

セクター 概況


日経平均は4日続伸。上昇幅は一時、3日連続で150円超に達した。野田佳彦首相解散表明以降の相場上昇の原動力となっているのが、足元で進む円高修正の動き。19日は朝方、1ドル=81円台半ばと7カ月ぶりの円安・ドル高水準に達し、キヤノン、トヨタ、コマツなど輸出関連が商いを伴って買われた。一方、東証1部唯一の安値更新銘柄が(円安デメリット株の)ニトリHDであるあたり、為替動向を色濃く反映した相場であることをうかがわせる。円安メリット株を買う流れは今後も続くのか。そして、その対象となる銘柄などについて探ってみたい。

急ピッチな円安進行の背景に挙げられるのが、「次期首相」の座が視野に入った自民党・安倍晋三総裁の一連の発言。「2―3%のインフレ目標」「目標達成まで無制限の金融緩和」といった従来の持論に加え、その具体的な方法論として、日銀当座預金のマイナス金利や、国債の日銀直接引き受けなど、“禁じ手”とも言える劇薬的政策まで踏み込んだためだ。

“安倍思惑”だけじゃない!!

大和証券 亀岡裕次チーフ為替ストラテジスト

大和証券 亀岡裕次
チーフ為替ストラテジスト

ここでの円安が、一過性の動きなのか、基調転換のサインなのか、為替関係者の間でも諸説分かれるところ。アナリスト人気ランキング上位の常連で、著名為替ウォッチャーの、大和証券・亀岡裕次チーフ為替ストラテジスト(写真)の見立てでは、「最近の円安は、日銀の政策に対する思惑先行の動きであり、どこかで、いったん反動が出るとみている。安倍総裁発言は細かい部分まで詰めたものではない。発言通りの政策を実行したら日銀の存在意義はゼロになる。反対意見も多く、新政権発足時には、実現が難しいことが見えてくるのではないか。とは言うものの、日銀の政策うんぬんとは別に、米、中の経済指標好転などを背景に、中期的な為替見通しは、やはり円安を見込んでいる。米国が、当面の財政問題を乗り越えれば、来年3月末までに1ドル=85円近い円安水準となっても不思議はなく(メーンシナリオで同83円)、9月末には同86円程度も想定されてくる」ということに。

内需ディフェンシブのようでいて…

仮に、ここ数日の激しい動きが、目先筋主導の一過性のものであるとしても、中期的な方向性を円安との見方が、関係者の間でも増えていることは確かだ。市場に円安機運が強まる中、野村証券は15日付で「円安で恩恵のある銘柄群」と題するストラテジーレポートを発行している。

(1)海外売上高比率30%以上(2)会社想定レートが対ドル・ユーロとも円高水準(3)今来期増益予想(4)第2・四半期までの経常利益進ちょく率50%以上――などの基準で選別された31銘柄の中には、キッコーマン、大塚HDなど一見すると「内需ディフェンシブセクター」と見まがう銘柄も含まれている。

ちなみに、みずほ証券の今週のウィークリーレポートでも「円安ドル高時にアウトパフォームする傾向がある銘柄」を取り上げており、両リストに共通するのは、富士重、スズキ、トヨタ、アイシンの4銘柄。ただし、みずほレポートは、あくまでも過去の値動きに着目したスクリーニングであるため、住友不、第一生命など明らかな内需系銘柄も含まれる。

「為替感応度」に着目

さて、野村の31銘柄のうち、海外売上比率や会社想定レートの基準をより厳しくして絞り込んだのが、表の7銘柄だ。 対ドル・ユーロ双方を勘案して、最も厳しい(円高の)水準を想定しているのが東芝テック(6588)。想定の1ドル=76円に対し、直近で5円強の円安、1ユーロ=95円に対し、同じく8円台の円安となっている。「期初段階の1ドル=80円、1ユーロ=105円から修正したもの。ドル建て取引に関しては、支払い額と受け取り額が拮抗(きっこう)しているため、為替変動による影響は及ばないが、対ユーロで1円の円安は、営業利益ベースで年間2億円のプラスとなる」(東芝テック・広報担当者)とされる。11月1日の増額修正で、今3月期営業利益を150億円から170億円に増額しているが、計算上、さらに10億円近い上乗せも有望視されてきそうだ。

円安の恩恵が期待できる主な銘柄
銘柄 コード 海外売上比率 会社想定レート(対ドル) 会社想定レート(対ユーロ)
日本精工 6471 50.4% 75円 100円
マキタ 6586 82.0% 77円 98円
東芝テック 6588 49.5% 76円 95円
日本電産 6594 74.2% 78円 95円
スズキ 7269 60.7% 77円 99円
ヤマハ 7951 53.1% 77円 100円
日立ハイテク 8036 57.6% 76円 100円

一方、野村リストの中で、対ドルの会社想定レートを、最も円高の水準(75円)に設定しているのは日本精工(6471)。「為替感応度は、1ドルについて1円の円安で、年間6億円の営業増益要因、同じく1ユーロについて1円の円安で2億5000万円の増益要因」(日本精工・IR・CSR室)。

増額修正→高値更新の東芝テックとは対照的に、大幅下方修正発表を受けて、前週14日に3年ぶり安値に売られたのが日精工。自動車向けの不振などが背景にあり、今後、為替面からの増額修正となっても、先の減額分の一部を埋めるにすぎないが、株価水準はなお、大底圏。例えば、(自動車株で)トヨタが7カ月ぶり戻り高値水準に買われていることを踏まえれば、ここから見直し買いが入っても不思議のないところだろう。

ほかに、例えば、先の四半期決算時に増額修正しながら、安値圏に低迷する日立ハイテクノロジーズ(8036)なども要注目。日立グループが“ご三家”の日立金、日立線も対象にした「聖域なき再編」に乗り出すなか、日立国際電気と一部業務が重複する同社なども再編候補との思惑が取りざたされる。

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