金相場の行方 テクニカルの売り崩しに予想外の大崩落(上)

概況


マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表
金融・貴金属アナリスト 亀井 幸一郎氏

ドル建て金価格が4月の12日(金)と15日(月)の2日間で200ドル以上の暴落状態となった。週末12日のNY市場の午前10時すぎに出されたまとまった売りに過去1年半にわたるレンジ相場の下限1,520ドルを下回るや下げが加速した。

金市場内外で、これといって特定できる何かが起きたわけではなかった。拮抗(きっこう)していた市場センチメントのバランスがレンジ下限を破られたことで崩れ、ファンドの売りプログラムのヒット(発動)の連鎖を生み、パニック売りにつながった。

下げに至る市場環境をチェックすると以下のようになる。

まず、年始からFOMC(連邦公開市場委員会)ごとに繰り返される量的緩和策の規模縮小・停止の論議、その中で続いていたNY株の過去最高値更新の動き、金利を生まない金からより効率のいい対象への資金移動(金ETF(上場投資信託)の継続的な大口解約)、ファンドの買い建て取引(ロング)から売り建て取引(ショート)への転換、の4点となる。

それぞれが下げ要因ではあるが、緩和策停止も当面は考えられず、株も一時の勢いはなく、高値更新の持続性にも疑問が生まれ、新興国中央銀行とアジアの買いが金ETFの売りを吸収、その結果、ファンドのショートも思ったほどの下げを作れず…ということで、相場としては膠着(こうちゃく)した状態にあった。しかし、上昇も限定的で5月に控える連邦債務引き上げ問題など材料待ちとなっていた。

この中で大きいのは、やはりFRB(連邦準備理事会)による緩和策の終了を意味する「出口論議」の高まりである。ばらまき策の中で金は上昇を続けてきた経緯があるため、その条件が変わる可能性を意識せざるを得ない環境は、つねに弱材料を抱えた上での展開といえた。つまりセンチメントに“瑕(きず)”を抱えていたわけだ。12日の動きは率直に言って、その不安心理を逆手にとった売り崩しの動きがあり、それが狙った動きを作ることに成功したということである。この日のNYコメックス通常取引の終値は1,501.4ドル、前日比63.5ドルの大幅安であるが、1,500ドル大台は維持して引ける。ただし、引け後の時間外取引にて1,500ドルを割れ、さらに売りに拍車が掛かり、1,480ドル台のほぼ安値引けという展開だった。売りの流れは続き、週明け15日、16日と下げが下げを呼ぶ状況に至ったのは、ファンドの「HFT(高頻度取引)」と呼ばれる1,000分の1秒単位で注文の発注・変更・取り消しを繰り返す売買システムにもあったとみられる。

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